軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 メイ

『SUR、探求者メイドのメイ レベル9999』は、ライトの『無限ガチャ』によって初めて顕現されたSURだ。

故に『奈落』最下層で、最もライトとの付き合いが長い人物でもある。

そんな彼女の仕事は……『奈落』の内政管理だ。

では、『奈落』内政管理とは一体どんな仕事なのか?

ライト執務室の机、その側にメイが使用する机が置かれている。

その机の上に大量の書類が積み上げられ、彼女が高速でめくりチェックしていく。

あまりに速いため流し読みに見えるかもしれないが、メイはしっかり内容を認識していた。

一通り書類チェックを終えると、側に立つ妖精メイド達に書類の一部を戻す。

「『奈落』の消耗品書類に『巨塔』関係のが一部混ざっていました。『巨塔』関係はエリーの管轄で 私(わたくし) が手を出すのを彼女は嫌がります。以後、注意をするように」

「申し訳ございません。担当者には必ず注意します」

エリーはメイをライバル視しているのと、自身の管轄に手を出されるのを嫌う。

妖精メイドが深々と頭を下げて、書類束を受け取った。

他にも控えている妖精メイドに『奈落』の消耗品等のチェック、掃除、休憩のローテーション、『奈落』浅・中層の罠、モンスター、宝箱アイテムなどのチェックやライトが戻った際の側付きリストも作製。

『奈落』最下層に敵が侵入することはありえないが、いざと言う時の警備態勢、脱出手段、籠城の際に必要になる備蓄等の確認など、やることは多い。

他にも多々仕事がある。

例えば――

執務室にやや乱暴なノック音が響く。

扉側に控えている妖精メイドが先に出て確認後、『緊急の用件』とメイに報告し、メイが許可した後に扉を開く。

1人の妖精メイドが慌てた様子で報告する。

「メイ様! アオユキ様とナズナ様が喧嘩しています! どうかお止めください!」

「…………」

メイが『またか』と眉根を僅かに揺らす。

前回もナズナがアオユキを構い過ぎて、手のひらを引っ掻かれ、それに対してナズナが怒り喧嘩をした。

今回もどうせ似たような内容だろう。

だが、内容は低レベルでもレベル9999同士の喧嘩だ。

レベル500程度の妖精メイド達に止められる道理はない。

そこで同じくレベル9999のメイに喧嘩仲裁を依頼するのだ。

他にもこうした直訴が多々ある。

その内容如何によってメイが選別し、ライトの耳に入れる場合もある。

今回はそんな必要はないが。

「またどうせナズナがアオユキを構い過ぎて、彼女を爆発させたのでしょう。いくらアオユキが可愛くても、構い過ぎは良くないと何度も言っているのに……」

メイは軽く溜息を突き、喧嘩中のアオユキとナズナを止めるため席を立つ。

このように『奈落』最下層に存在する組織を維持するため、メイは日夜奮戦しているのだ。

とはいえ、ライトを支えるため好きでやっていることだからまったく辛くない。むしろ大きなやりがいを感じていた。

他にも幸福を感じることが多い。

例えば――。

「久しぶりにメイの淹れてくれた紅茶を飲めて嬉しいよ」

「ありがとうございます。 私(わたくし) もライト様に飲んで頂けて本当に嬉しいです」

ライト私室、リビング。

ソファーにライトが座り、メイが淹れた紅茶の香りを楽しみ、宝物のように飲む。

彼は時折こうして、メイの淹れたお茶を飲むことがあった。

またメイも世辞で『ライト様に飲んで頂けて本当に嬉しい』と口にした訳ではない。

『奈落』の内政、ライトのために戦闘をしたり、支援するのも楽しいが――やはり一番強く幸せを感じるのはメイドとしてライトに給仕をすることだ。

(昔……ライト様と 私(わたくし) 、2人の時は飲み物だけではなく、食事、睡眠、護衛、洗濯、お風呂など全てお支えすることが出来たのですが……)

やはりメイドとして、ライトと2人っきりの時の方が充実感を感じてしまう。

いくらメイがレベル9999のメイドといえど、組織として大きくなった現在はどうしても分業しなければならない。

そこに一抹の寂しさを感じてしまうのは彼女の性だ。

「こうしてメイと2人っきりでお茶を飲んでいると、昔、2人っきりで『奈落』最下層で生活していた頃を思い出すね」

「……はい、懐かしいですね」

ライトがメイの考えを読んだように話題を振ってきたため、若干返答にタイムラグが生じる。

彼は気にせず、笑顔で話を続けた。

「2人でレベル上げをしたり、生活環境を整えたり、『奈落』最下層の守護モンスターに挑んだり……色々大変だったけど、振り返れば楽しい毎日だったな。その後、アオユキが来て、エリーとナズナが来て、『奈落』のダンジョンコアをコントロールすることが出来るようになって皆を顕現させて、こうして『奈落』最下層に組織――メイのアドバイス通り『国』を作り出すことが出来た。僕を裏切りゴミのように捨てた『種族の集い』メンバー共は絶対に許さないけど、メイ達に出会える切っ掛けを作ってくれたことに感謝してもいいかな」

ライトは『種族の集い』部分で一瞬だけ殺気を漏らしたが、笑顔でメイに言葉を告げる。

「…………」

メイも黙って胸中で考え込む。

(確かにライト様と2人っきりで過ごし、朝から夜までお世話できる環境は非常に素晴らしいものです。ですが……)

「メイ?」

彼女が黙ってしまったことに疑問を抱いたライトが首を傾げた。

メイは微かに笑って本音を口にする。

「―― 私(わたくし) もライト様との2人だけの生活は懐かしく、幸福でした。ですが、現在の皆が居る生活も素晴らしいものだと思います」

「だよね。復讐が終わった後もこうして皆で楽しく過ごせるといいな」

「ご安心ください。例えどのようなことがあっても 私(わたくし) を含め、アオユキ、エリー、ナズナ、他の皆、ライト様のお側に居続けます」

メイが素直な気持ちを吐露する。

ライトも彼女の台詞に笑顔を返した。

そして暫く、リビングではライトとメイの間に穏やかで温かい空気が流れ続けるのだった。