軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32話 死神達

「少しでもライト 神様(しんさま) の益になるよう、頑張って死んでくださいね?」

エリーの言葉と同時に、アオユキが指揮するモンスター達が雄叫びを上げて、獣人種へと向かい突撃する。

レベル9000から、最低でも5000はあるモンスター達ばかりだ。

獣人種との間合いは一瞬で潰れる。

『グルガァアァァァァァァァァ!』

全長15mはある巨体で全身が新雪のように真っ白な『神獣・始祖フェンリル レベル9000』が、 幻想級(ファンタズマ・クラス) ナイフより鋭い前足爪を一閃し、獣人種数名が一瞬で塵となる。

『神獣・始祖フェンリル』が本気を出して攻撃した場合、レベル500~100程度の獣人種の兵士達など真夏の日を浴びた雪のように一瞬で溶けてしまう。

それではアオユキの指揮の実験にならないため、わざわざ手加減しているのだ。

獣人種からすれば、いくら手加減した攻撃でも反応するどころか認識すら出来ないが。

他のモンスターも獣人種達に襲いかかる。

『グオォオオォオオォオォォォォォォォォッ!』

2階建て建物ほど大きな一つ目の巨人が、筋肉が盛り上がる腕を軽く振るう。

軽くと言っても、『ブオッ!』と怖気を震う風切り音が発生するレベルだ。

獣人ウルフ種、獣人タイガ種は持ち前のスピードを生かし、回避しようとするが――運良く回避できる者も当然居たが、中途半端に回避したせいで即死できず下半身が潰れたり、体の四分の1ほど千切れ、生き残り死ぬ僅かな間の時間を苦悶してしまう者が多く出る。

「た、助け、助けてく――」

「痛い痛い痛いッッゥ! 殺してくれ! 楽にしてくれぇえぇッ!」

あちらこちらで悲鳴と苦悶の声音が響く。

だがまだ一つ目巨人に襲われるのはまだマシな部類だ。

最悪な死に方の一つが、巨大な液体の塊――巨大スライムに襲われる者達である。

「来るな! 来るな来るな来るなぁぁぁあぁぁっ! いやだ! あんな風に死にたくないィィィイィッ!」

ダンジョン、モンスター退治などで修羅場を潜ってきた獣人種のベテラン冒険者の1人が涙ながらに叫ぶ。

彼のショートソードを持つ右腕は、巨大スライムに搦めとられ今にも内部に引き込まれようとしていた。

内部では既に他獣人が取り込まれ、生きたまま溶かされ喰われているのが目の前で視認出来た。

内部に取り込まれた獣人種はまるで酸を浴びたように溶かされていく。

肉や毛皮だけではない。

装備品、衣服関係なく溶かされていく。

しかも窒息もせず、なかなか死ねないらしく、大きな巨大スライムの中で藻掻き続けている。

口、顎、舌を溶かされつつも『助けて』と口を動かし続けているのだ。

襲われているのは獣人種の兵士ばかりではなかった。

戦場の一番後方にいる補給物資を抱えた獣人族補給部隊達の目の前に、グリフォンが赤い肌に複数の角が生えた二足歩行の鬼を背中に乗せて、彼らの前に降り立つ。

赤肌の鬼は2m半はあり、下顎から太い犬歯が天を突くように伸びていた。

見た目は非常に凶悪で、怖気を振るう。

獣人達は地面に膝を突き、懇願し始めた。

「ま、待ってくれ! いや、待ってください! ワタシ共は確かに戦争に参加したが、戦闘能力は低いです! もう逆らう意思はありません! 今ある物資、資金もお譲りします! だからどうか命ばかりはお助け下さい!」

獣人連合国で商業に力を入れている獣人翼人種達が、必死な様子で命乞いをしてくる。

腕が翼で人種の顔をした者、背中に羽根が生えている者、二足歩行の鳥のような者達もいた。

『…………』

赤肌の鬼は彼らをすぐには襲わず、反対側奥に居るアオユキへと振り返る。

どうやらアオユキと念話で、『どうするか』と尋ねているようだ。

その仕草はまるで、子供が親に指示を尋ねるような愛嬌がある。

補給部隊員達も強面な赤肌の鬼と仕草のギャップに親近感を勝手に抱き、『自分達は助かるかも』と希望を抱いた。

だが――赤肌の鬼が念話で指示を受け頷くと、両手を伸ばし翼人種達2人の頭を掴む。

「――いだ!? 痛だだだダッ」

「あぁぁぁぁっ!」

ぐしゃ、リンゴを握り潰すように翼人種2人の頭を握り潰す。

握り潰した際、まるでスイカのような赤い実、汁が手のひらの隙間から飛び散る。

近くに居たまだ無事な翼人種達の顔、衣服に飛び散った実、汁がかかる。

一瞬の間を置いて、

『ひゃぁぁぁぁぁ!』

地面に膝を突き許しを請うていた獣人達がさらに奥へと逃げ出す。

赤肌の鬼の主であるアオユキが『獣人種を殺せ』と伝えたのだ。

相手を殺そうとする者は、殺される覚悟を持たなくてはならない。

相手が弱そうだから殺して何もかもを奪おうとしたが、思ったよりも強かったから泣けば許される――そんな事はありえない。

この世界では奪おうとする者は、奪われても文句は言えない。

逃げる者達はレベルが低めとはいえ獣人種。

走る速度はそれなりに速い。

『ピィイイイィイイィイッ!』

グリフォンが鳴き、上空から逃げる獣人種達を追う。

一方で赤肌の鬼はのんびりと散歩をするように歩き出した。

この世界は、 神話級(ミトロジー・クラス) 、『 乖離世界の世界(ワールド・イズ・ワールド) 』によって世界と隔離された閉じた世界だ。

逃げ道などどこにも無い。

故に恐怖心を煽るためにもゆっくりと追っているのだ。

――この最悪な現状に獣人ウルフ種、獣人タイガ種族長達はというと、

「ふ、巫山戯るなガム! 何がガキが買い物をするより簡単だ! なんだあの化け物共は! どこが『ガキが買い物をするより簡単』だ!?」

「うるせぇ! 自分が知るかよ! 良いから死にたくなかったら、さっさと笛を鳴らして、珠を壊してモンスターを呼び出せ! 化け物には化け物をぶつけるんだよ!」

現状の最悪な状況に獣人タイガ種族長レバドは、非難の声をあげる。

非難を浴びる獣人ウルフ種ガム自身も、アオユキが従えるモンスター達に恐怖心を抱くもまだ竜人帝国――ヒソミ経由で提供された対ドラゴン用のマジックアイテムや 獣魔球(じゅうまきゅう) に縋り、指示を飛ばす。

彼らは生き残るために対ドラゴン用のマジックアイテム、 獣魔球(じゅうまきゅう) を使用するため解放する。