軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26話 準備完了

ガラガラと音をたて、1日1回の飲食支給以外の時間外に倉庫扉が開く。

大抵、新たに連れてこられた 人種(ヒューマン) が押し込められるが……今回は毛色が違った。

見張り以外の獣人種男性が複数人で入り口を塞ぎつつ、中に居る 人種(ヒューマン) 達を物色する。

「くっせ! ヒューマン(劣等種) は無能なうえ臭いも酷いな!」

「本当だよ全く……さっさと終わらせようぜ」

「だな。とはいえこの倉庫は人質専用で戦える奴は殆ど居ないから、仕事はすぐ終わるだろ」

獣人種の1人が紙束をパラパラとめくり、倉庫の中を確認してくる。

薄暗いが、獣人種ならこの程度の暗さなど障害にもならない。

「こいつとそいつ、あと、奥にいるそいつも冒険者として経験がある。あとは……魔術師が2人居たはずだ。1人を人質として残して、1人は連れてけだと」

「!?」

この台詞にクオーネが『びくん』と震える。

出入口に立つ獣人種達の視線が、クオーネとミヤに集まった。

クオーネは獣人種の視線に怯え、震えるだけで声すらあげられない。

そんな彼女と違ってミヤが立ち上がり、名乗り出る。

「魔術師はわたしです。わたしが外に行きます」

「み、ミヤ……ッ!」

クオーネが名乗り出たミヤの名前を呼ぶが、自身が代わりに名乗り出る勇気は持てず震えることしかできなかった。

一方、ミヤはクオーネに顔を向けて怨みの欠片すらない、笑顔を作る。

『わたしは大丈夫だから』と言いたげな、クオーネを安心させようとする笑顔だった。

獣人種達からすれば戦争で戦える魔術師が必要だ。

震えて碌に動けないクオーネと、未だ相手を気遣う余裕があるミヤなら後者を選ぶのは必然だった。

「こっちへ来い。下手なことは考えるな。人質を死なせたくはないだろ?」

獣人種がミヤへ近づき、脅し文句を告げつつ、手を掴み出入口へと連れて行く。

ミヤは大人しく従うが、その瞳は未だに光を失っていなかった。

他獣人種はミヤの瞳の強さに警戒心を抱きつつも、他に戦えそうな者達を選別して再び倉庫扉を閉める。

鍵を閉め終えた後、見張りだけを残して移動を開始した。

その際、釘を刺すのも忘れない。

「倉庫から出られたからと言って、無駄な足掻きをするなよ? 下手に俺達に逆らえば倉庫に居た人質、別の場所に居る知り合い達を殺す。ただ殺すんじゃない。産まれて来たことを後悔させるほど苦しめて殺してやる。俺達が殺すんじゃない、おまえ達が無駄な抵抗をしたから拷問されて殺されるんだ。そうならないためにも大人しく指示に従えよ、分かったな?」

倉庫から出された者達からの返事はないが、獣人種側も別に求めておらず言いたいことだけ告げると、周囲を囲んで歩き出す。

ミヤ達は大人しく彼らの動きに従い、向かう場所に合わせて歩き出した。

そんな彼らを監視する小動物の姿。

しかし、この小動物に獣人種もミヤ達も、誰1人気付くことは出来なかった。

☆ ☆ ☆

『奈落』最下層、執務室にメイ、アオユキ、エリーが集まる。

僕は執務室に腰を下ろし、彼女達へと向き合う。

「エリー、ついに獣人連合国から我々『巨塔』に宣戦布告の文書が届いたらしいね」

「はいですわ。身の程を知らない獣の分際で、随分と上から目線の文書が届きましたの」

エリー曰く要約すると――『 ヒューマン(劣等種) の分際で調子に乗っている魔女へ。誇り高き獣人種の俺様達がオマエを戦争で潰す。こちらが指定した日時・場所に1人で来い。もしドラゴンの軍勢を連れてきたら、獣人連合国に居る ヒューマン(劣等種) をぶち殺す。 人種(ヒューマン) 絶対独立主義なんて無能な主義を抱えている以上、 ヒューマン(劣等種) を見殺しにするようなマネはしないよな? 魔女さまぁ~!』

宣戦布告というより、上から目線の馬鹿にしきった文章だったらしい。

どうやら彼ら的には自分達の勝利を疑っていないようだ。

僕は執務室の椅子に背中を預け問う。

「戦いの日時と場所が決まった訳だが、アオユキ、人質、 人種(ヒューマン) 奴隷達の位置特定は出来たかい?」

「――是。問題ありません。今回の一件に関わった愚者共も特定済みです」

「メイ、受け入れの準備はどうなっている?」

「受け入れマニュアル作成、妖精メイドの手配、物資の用意や緊急時対処の準備なども全て完璧です」

「エリー、人質、 人種(ヒューマン) 奴隷達の救出手配、獣人種の処理手順はどうなっているの?」

「どちらも問題ありませんわ。人質などの救出に『SSR、転移』カードの在庫が一時大幅に減りますが、ライト 神様(しんさま) の『UR、 2つ目の影(ダブル・シャドー) 』達の排出ペース、確率から考えての補充予想では十分許容範囲ですの。戦場に立つ獣人種の皆殺しは 神話級(ミトロジー・クラス) の使用許可を頂いたことと、アオユキさんとの協力で完璧に1匹残らず確定ですの」

「素晴らしい……素晴らしいよ、3人とも。さすが僕のメイ、アオユキ、エリーだ。3人だけじゃなく、『奈落』の皆が居てくれて本当に僕は幸せ者だよ」

3人の完璧な仕事ぶりに僕は感謝の気持ちが抑えきれず、手放しで褒め称える。

この褒め言葉にメイ、アオユキ、エリーはそれぞれ喜びの声をあげた。

「全ては我がメイド道、ライト様のため。お褒めの言葉など本来必要ありませんが、お声を頂きありがとうございます」

「にゃ~」

「ライト 神様(しんさま) のためならエリーは例え溶岩でさえ飲み干し、地上全ての生命をくびり殺して見せますわ! どうかわたくしの命、体、血の一滴までライト 神様(しんさま) に捧げさせてくださいまし!」

3人とも心底嬉しそうに僕に返答してくる。

僕自身も彼女達の反応が嬉しくて笑顔で頷く。

僕は純粋な笑顔を浮かべたまま、彼女達へと告げる。

「それじゃ獣人連合国に囚われている人質、 人種(ヒューマン) 奴隷達を救出した後、戦場に立つ獣人種を皆殺しにしようか。 人種(ヒューマン) の皆を盾にすれば僕らを殺せると勘違いしている哀れな愚か者達を、1匹も残さず、魂すら殺すつもりで鏖殺しようね」

僕はまるで明日買う物を皆に伝えるように、笑顔で断言した。

戦場における、獣人種の大虐殺がこの瞬間確定した。