軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8話 ライトvsアオユキ

『奈落』訓練所で僕はアオユキと対峙する。

「にゃ~」

猫パーカーを被った青い神秘的な髪の彼女が、警戒心を露わに両腕から鎖を垂らし低い声音を漏らす。

鎖の尖端には首輪のような太い棘が周囲に生えた輪っかに繋がっていた。

対する僕は、杖状態の 神葬(しんそう) グングニールを構えて向き合う。

レベル9999同士の視線が絡み合い、威圧感がぶつかり合って広い訓練場の空気がギシギシと物理的に音をたてそうになる。

一般人がこの空気に触れたならば、耐えられずに意識を失うだろう。

「にゃ!」

先にアオユキが動く。

左右の手が消失――と、勘違いする速度で動き、連動して鎖がまるで生物のように襲いかかってくる。

僕もすぐさま反応して地面を蹴って高速で移動するが、アオユキの鎖、 幻想級(ファンタズマ・クラス) 『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』が直角に曲がって追いかけてくる。

「相変わらず出鱈目な動きをするね!」

さすがにアオユキの投擲技術だけで、直角に曲がって僕を追いかけてくる訳ではない。

幻想級(ファンタズマ・クラス) 『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』は、尖端の首輪が首等に繋がろうとする効果を持つ。

早い話が自動追尾機能を持つのだ。

当然、手元で操作可能で、一度首輪が嵌ったら力尽くで破壊は不可能。

所有者が解除するか、相手を倒すか、素直に服従するしかない。

もちろん例外的な方法で脱出する術もあるが。

とはいえ 幻想級(ファンタズマ・クラス) にしては能力が強い訳ではない。モンスターテイマーなら使い勝手は非常に良いだろうが。

僕は左右、時間差で襲いかかってくる尖端首輪に手、足などが嵌められないよう気を付けつつ杖で払う。

力任せに払った――というより殆どはじき飛ばしたお陰で、使用者であるアオユキに隙が出来る。

僕はこの機を逃さず、一息にアオユキとの距離を縮めて勝利しようとする……が、

「うにゃ!」

彼女は力任せに両腕を交差!

尖端の首輪ではなく、鎖本体で僕を殴打し、絡め取り身動きを止めようとする。

「……っ!」

僕はこの攻撃に反射的に地面を蹴って上空へと逃げる。

だが、上空ではすぐに身動きができず、はじき飛ばした尖端が背後から追いかけてきていた。

「にゃっ!」

アオユキの狙いは本体鎖で絡め取るのではなく、上空に逃がして尖端首輪で手、足、できれば首に輪を嵌めて僕の自由を奪おうとしているのだ。

『もらった!』とアオユキは大きな瞳をさらに広げて勝利を確信していた……が、そうは問屋が卸さない。

「甘いよ、アオユキ!」

「!?」

『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』が手足や首に嵌ったら非常に厄介だが、弱点がゼロというわけではない。

自身の手足、首に嵌るより先に、触れた対象に食いつく場合がある。

つまり、自分の手足や首に嵌るより先に、別の何かをぶつけてそちらに首輪を嵌めれば良いのだ。

その都合が良い『別の何か』は僕の手の中にある。

神葬(しんそう) グングニールだ。

「ふっ!」

レベル9999で強化された視力、反射神経で『 神葬(しんそう) グングニール』の杖を両首輪の穴を通すように突き出す。

『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』は杖を締め付ける。

アオユキがすぐさま解除して、僕を狙おうとするが遅い。

「くらえっ!」

首輪が付いた状態でアオユキに狙いを定めて杖を全力で投擲!

「うにゃ!?」

音速を突破し襲ってくる杖に、彼女は首輪部分を解除している暇もなく回避行動をとる。

杖はアオユキを越えて、訓練場奥まで飛翔。

衝撃波や腕に巻き付く鎖が杖に引っ張られ、押さえ込むのにアオユキはバランスを崩し、意識と力を持っていかれる。

今度は僕自身が、その隙を逃さない。

地面に着地後、すぐさま距離を縮める。

手には杖、『 神葬(しんそう) グングニール』が戻る。

アオユキが首輪を解除した訳ではない。

『 神葬(しんそう) グングニール』は僕から一定の距離から離れると自動的に戻ってくるのだ。

これは例外的な外し方になるだろう。

そのまま杖尖端をアオユキに突きつければ、

「勝負ありだね」

「――是、敗北です」

アオユキは真面目な声音で敗北を宣言。

こうして無事に訓練を終える。

「ありがとう、アオユキ、訓練に付き合ってもらって」

「うにゃうにゃ」

アオユキは猫語を漏らしつつ、首を横に振る。

訓練に付き合うのは問題無いと言いたいのだろう。

今回の訓練で僕が勝利したが、だからと言ってアオユキが弱い訳ではない。

彼女単独の強さはそれほどでもない。

しかしアオユキの強さは複数のモンスターを使役してリアルタイムで指示を飛ばし、組織的に動き敵を追いつめ滅ぼすことが出来る点だ。

モンスターを指揮して戦った場合、『禁忌の魔女』エリーですら侮れない殲滅力、強さを誇る。

アオユキ単独ではそこまで強くない――とは言ったがレベル9999で、 幻想級(ファンタズマ・クラス) マジックウエポン所持者だ。

並の相手より当然強く、訓練相手にも丁度良い。

ドワーフ種ナーノへの復讐後、『奈落』最下層に戻り溜まった書類仕事、今回発覚した『ますたー』的存在や『C』に関する情報整理、組織確認・運営、妹・部下達とのコミュニケーション、休養などで数日引きこもっていた。

腕が鈍るのも不味いのでこうして時間を作ってアオユキなどに訓練を手伝ってもらっていたのだ。

僕は軽く伸びをしてから、アオユキに声をかける。

「訓練はこのぐらいにして、汗を掻いたからお風呂にでも入ろうか。上がったら、ユメも誘って一緒にご飯を食べない?」

「にゃ!」

アオユキは喜色満面の声をあげると、まるで本物の猫のように体を擦りつけてくる。

僕は微笑ましく笑みを零しつつ、彼女の頭や顎下を撫でてた。

そんなコミュニケーションを取る僕達に声をかけてくる人物が居た。

「ライト様、少々よろしいでしょうか」

訓練所出入口から足早にメイが姿を現す。

彼女の態度から何か緊急事態が起きたのを何となく悟る。

だが現在、それほど急を要する案件はあっただろうか?

(……まさかにーちゃんが見つかったのか!?)

行方不明だった実妹ユメは発見された。

もう1人、行方不明の実兄が見つかったのかと思ったが……。

僕の予想とは違う内容がメイから告げられる。

「先程、緊急の念話があり、ミヤ嬢が獣人種に誘拐されたとのことです。如何致しましょうか?」

「ミヤちゃんが誘拐?」

冒険者を止めて、兄と共に地元へと戻った服装こそ地味だが、美少女と断言して良い『SSR、祈りのミサンガ』を贈ったミヤの顔を思い出し、僕は疑問の声音を上げたのだった。