軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23話 終着点

ナズナの頭を撫で、彼女を落ち着かせる。

幸い、ドワーフ種達は衝撃音で耳を痛め、メラが目の前に立って視界を塞いでいたため彼らにナズナが泣きだす姿を見られることはなかった。

気を取り直して、他敵や罠が無いか注意しつつ、ナズナの倒した『蛇擬き』――人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器に皆が集まる。

人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器は右腕が肩から切断され、胸部甲冑を裂いて中に入っているコアらしき物が真っ二つになっていた。尻尾も切られて、先程まで動いていた時のような圧迫感は完全に消失している。

バターを熱したスプーンでくりぬいたようなクレーターではなく、力任せに砕き窪ませたようになっている。

そのせいで活動を停止した人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器も半ば瓦礫に埋もれた状態になっていた。

ドワーフ王ダガンは興奮気味に鼻息荒く尋ねる。

「ライト殿、あの人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器に近付いて、触って、解析して、舐めて、食べても良いだろうか!」

「……活動を停止しているようなので危険は無いと思いますが、近づく際は気をつけて。ただお腹を壊すのとナズナがマネをしては困るので、食べたり口に含むようなマネはしないでくださいね」

釘を刺したが、許可が下りたのを皮切りにドワーフ種達が一斉に壊れた人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器に群がる。

この世界、普通にやればどれだけ労力や年月を注いでも 遺物級(レリック・クラス) を作れるかどうかのレベルだ。

にも関わらず過去文明では人工的に 神話級(ミトロジー・クラス) を作り出していたのだ。それを証明する物があるなら、ドワーフ種達が興奮しないわけがない。

「うひょぉおおぉ! 見たこともない金属で作られているぞ!」

「コアも見てみろ! 中身に複雑な術式が積層構造で積み上げられておる。これのお陰であれだけ複雑な状況判断が出来たのだろうな」

「ぐああっ! 両腕の蛇頭部がどちらも砕かれておる! 残っていれば良い研究材料になったのに!」

「もっとわしにも見せろ! どうやって 神話級(ミトロジー・クラス) が、世界に干渉するかのような隔絶した能力を発揮しているのか解明するんじゃ!」

まるで暴動が起きたかのような騒がしさで、ドワーフ種達が声をあげ、動く。

この後、ナズナが手にする 神話級(ミトロジー・クラス) 、大剣プロメテウスにまで手を伸ばして騒ぎそうだな……。

怒ったナズナが彼らに手を出さないように注意しないと。

正直、今から頭が痛くなる。

(前向きに考えると……僕の手にする 創世級(ジェネシス・クラス) 、『 神葬(しんそう) グングニール』が彼らに知られなかっただけ良しとしよう)

ナズナが止めを刺した際の衝撃音、メイがドワーフ種を庇って正面に立ったお陰で、彼らに僕が 神葬(しんそう) グングニールを使って、最後に左の蛇腕に止めを刺したことは見られていないし、聞かれていない。

神話級(ミトロジー・クラス) だけではなく、 創世級(ジェネシス・クラス) まであると知られたどんな目にあうか分からない。

秘密にしておくのが良策だろう。

「ケケケケケケ! ご主人さま、よろしいでしょうか?」

窪地の埋もれる人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器へ集まるドワーフ種達を眺めていると、メラが声を掛けてくる。

彼女は長い裾越しに綺麗に切断された刃先、つまり『過去ここに潜った冒険者の剣の欠片』を手に立っていた。

「ケケケケケケ! 周囲の調査に出していた分体の一体が無事、次に下りる穴を発見しました。穴は誰も通った形跡はなく、そしてその近くで一緒にコレを見つけたようです」

「これは……」

「残っている匂いからも、ほぼドワーフ種達が送り出した冒険者の物かと」

「彼らはこんな所にまで到達したのか……」

無限ストーンゴーレム階層、人工海階層を越えて、この場所まで到達したらしい。

だが、おそらくさすがに人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器には敵わず、ここで命を落としたのだろう。

「他に遺品とかはなかったのかい?」

「ケケケケケケ! 申し訳ありません、これだけのようです」

極秘任務のため表沙汰に出来ないし、数百年前の出来事だろうが、遺品があるなら家族、知人などの元に戻してあげたいと考えたが、見つけたのは刃先だけらしい。

むしろ、あの人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器の『世界からの希薄』攻撃を受けて、刃先だけでも残っていたのはむしろ幸運と考えるべきなのだろうか。

ダガン達に伝えた後、遺品である刃先は地上へと持ち帰ろうと僕は胸中で決める。

「そうか、ありがとう、メラ」

「勿体ないお言葉です。それで次の穴へとご案内しますか?」

「あー……それは……」

ドワーフ種達に視線を向ける。

彼らの興奮は止まらず、遊びに連れてこられた幼い子供のようにはしゃいでいた。

「……彼らが落ち着くまでもう少し待とうか。他の分体が戻るまでまだ時間もかかるだろうしね」

「ケケケケケケ! 了解致しました」

メラは返事をすると、メイ達のように他敵の襲撃、罠がないか等について警戒を始める。

☆ ☆ ☆

ドワーフ種達が落ち着くまで、あれから丸1日かかった。

彼らは徹夜で人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器にまとわりつき調べ続けた。途中で僕達の手を借りて瓦礫を撤去。

元の位置にあたるようにパーツを置いていく作業も手伝わされた。

結果、分かったことは……。

「儂らの現代の技術ではまったく分からん! というのが分かったわい」

ドワーフ王ダガンが力強く断言する。

さすがに過去文明の最先端技術を1日程度でどうこう理解、再現できるとは考えていないが……。

こうもいい笑顔で『分からないことが分かった、それこそが前進だ。危険な場所で時間をかけてやることかって? そんなの関係ねぇ!』的な表情をされると、ドワーフ種は本当に研究が好き過ぎるんだな、と呆れてしまう。

僕だけではなくメイ、ナズナ、メラ、スズも似たような反応だった。

まさかドワーフ種に八つ当たりするわけにもいかず、コテージで体を休めてから先へと進むことになった。

メラの分体、一匹の狼が次に進む穴を見つけてくれていた。

下りる穴へと移動すると、いつも通りメイの糸箱に乗って下りていく。

他と変わらないほど長い穴を通り抜けると、そこには――。

「これって……住居?」

糸箱の窓から広がる世界は、規則正しく並ぶ建物、人を癒すために植えられたのか規則正しく木々が並ぶ、一部上の階層が崩壊し黒い粒の混じった灰色地面が落下し埋もれているが、一目で『人が住む安全な場所だ』と認識することが出来た。

皆がこの場こそ僕達の目指した終着地点だと、直感で理解するのだった。