軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6話 『技術を加速させると世界が滅ぶ』としてどのように滅ぶ?

「ようこそドワーフ王ダガン殿、不作法な手順で面会し、遠い所から足を運んで頂き感謝致します。僕はライトと申します」

「遠いも何も長距離転移アイテムで儂の寝室から一瞬で移動したからな! 移動の苦労も何もないわい。それよりさっきの転移マジックアイテムはいったいどこで手に入れたんだ? 遺跡か? ダンジョンか? もしまだ余っているのなら研究用に売ってくれないか? もし売れないのなら見せて、触らせてくれないか? ちょっと、ちょっと触って見て匂いを嗅ぐだけじゃから!」

「…………」

ネムムに連れられてドワーフ王ダガンが、『巨塔4階』応接室へと案内される。

僕はエリー同様、『SSR、認識阻害フードマント』を被り顔を合わせた。

背後にはメイがついており、彼女は顔を隠していない。

他2名の妖精メイドが応接室に待機していた。

彼女達は給仕兼護衛として参加している。

僕と顔を合わせると同時に、激流の如く 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カード『SSR、転移』について質問をしてくる。

(マジックアイテムの開発や研究に血道を上げているとは聞いていたけど、ここまでとは……)

内心で驚愕&ドン引きしつつも、声には出さず席へとうながす。

「――長距離転移アイテムは外部に持ち出す物ではないため、それらはご容赦ください」

「まぁ、そうじゃろうな……これほどの距離を移動できるマジックアイテムじゃからな……無理を言って済まぬ。どうも有用なマジックアイテムを目にすると我を忘れてしまってな」

僕がお断りすると、意外にもあっさりダガンは引き下がる。

王様――というより 人種(ヒューマン) 第一王女リリスから聞いていた通り、職人と話している感触が強かった。ダガンはドワーフ王国国王になどなりたくなかったのに、他の職人に無理矢理押しつけられたとか。国一番の権力を押し付け合い忌避するとは、他の国ではなかなか考えられない構図だ。

ダガンの態度が落ち着いた所で席を勧める。

僕達はテーブルを挟み、妖精メイドに椅子を引いてもらい腰掛けた。

メイが丁度良いタイミングで僕達の前にお茶を置いて下がる。

その下がるタイミングで僕から切り出す。

「……まずは改めて、不作法な手順で面会を要請したのにも関わらず、遠い所から来て下さってありがとうございます。どうしてもドワーフ王ダガン殿にお聞きしたい事がありましたので、どうかご容赦を」

客人として招待しているため、変に威圧せず、上位者の態度ではなく普通に接する

正面に座ったダガンは、メイに軽く手を上げ礼を示してから、カップの縁を手で掴み雑にお茶を飲む。

……国王というより、親戚のオジさんが家に来た時のような態度だ。

「さっきも言ったが長距離転移アイテムで移動は一瞬じゃし、会って質問に答えるだけで一国の国宝に匹敵する 幻想級(ファンタズマ・クラス) を譲ってもらえるんだ。全然気にする必要はないぞ。むしろ、毎回 幻想級(ファンタズマ・クラス) を譲ってくれる会談ならいつでも受けたいぐらいだわい! がははははははは!」

心底本気の声音で愉快気に笑う。

ドワーフ種のイメージは、気難しいナーノで固定されていたが……。あまりに気楽な態度に若干距離感が掴めなくなる。

ダガンは僕の混乱も気にせず話を進めた。

「あの暗殺者曰く、お主達は『ますたー』関係について知りたいらしいが……儂もそう多くのことは知らぬぞ? それでも良いのか?」

「……はい、構いません。ダガン殿の知っている『ますたー』についてまずお教え頂いても?」

「構わぬぞ。まず『ますたー』とは――」

ダガンが語り出すが、その内容は既に知っているモノが多く、新情報は含まれていなかった。

しかし途中で、面白い情報が彼の口から出る。

「『ますたー』ではないと分かった者、元『ますたー』候補を殺害することを決めたのも当時の 竜人種(ドラゴンニュート) 、魔人種の王だったらしいわい。その2人が提案し、反対意見も出なかったからそのまま決まったとか。なぜ奴らがわざわざ『ますたー』候補を殺害するのを決めたのか、理由は知らぬぞ」

もっと詳細に聞き込むと――ドワーフ種王は興味なし、エルフ種は『嫌いな 人種(ヒューマン) なら大賛成』で、獣人種は他種が同意したら逆らえず流されるように同意した。

(つまり、『ますたー』ではないと判明した元『ますたー』候補者をわざわざ殺害しようとした、その理由を知っているのは 竜人種(ドラゴンニュート) 帝国と魔人王国。その2ヶ国に鍵があるということか……)

エルフ女王国リーフ7世などの記憶には無かった貴重な情報だ。

次に僕は本題へと水を向ける。

裏で条約を結ぶ、取り込むために不満があるか聞き出そうとした。

「『ますたー』に関する情報ありがとうございます。ちなみに現状世界の技術が抑圧されていることについて……ダガン殿はどうお考えですか?」

「この際だからハッキリ言うが……気に喰わん! 全くもって気に喰わん! 何が『技術を加速させると世界が滅ぶ』じゃ! 特に過去文明の技術復元・研究は禁忌項目の第一に入っており、それが最も問題となっておる! 最も大事なものが一番目に禁止されているなどおかしすぎるじゃろうが……何度禁を破って研究してやろうかと思ったか!」

こちらの想像以上に不満が溜まっていたらしく、火山が爆発するように語り出す。

ちなみに『禁忌項目』とは?

人種(ヒューマン) 王国を除く5ヶ国が裏で『禁忌項目』と呼ばれる裏の国際条約を結んでいるらしい。

早い話が『皆でやってはいけないことを決めましょう』というモノである。

過去文明が滅んだ原因、歴史調査などは別だが――当時の技術の復元、研究は厳重に禁止されている。

理由は『技術を加速させると世界が滅ぶ』と考えられているからだ。

日用品などは別にして、特に軍事兵器関係は原則禁止だ。破った場合、懲罰部隊が送られて殺害されるとの噂があるほどだとか。

「実際、儂の知り合いが数名、裏でこそこそ研究していたらしくてな。死体で発見されたり、行方不明になっていたりするぞ」

「どうして禁止されていることを研究するんですか……」

「決まっておるじゃろ! そこに興味深い研究題材があるからじゃ!」

ダガンの瞳は以前、まだ地上に出られない『奈落時代』、エリーに『どうして役に立たない危険な魔術を研究するのか?』と質問した時、彼女が爛々と輝く瞳で答えた時の表情に似ていた。

職人が自身の腕を磨いたり、興味深い研究テーマを前に我慢できず禁忌すら犯すようなものなのだろう。

ダガンは止まらず興奮気味に語り続ける。

「知っておるか? 過去文明では一説には 幻想級(ファンタズマ・クラス) の兵器を人工的に作り出すことが出来たらしいぞ。さらに 神話級(ミトロジー・クラス) すらだ! 儂らが現在どれだけ資金、労力、年月を注いでも 遺物級(レリック・クラス) をようやく作れるかどうかにも関わらずにだ! 過去文明はどれだけの技術力があったのか! 想像するだけで興奮するわい! ライト殿もそう思わんか?」

「興味深いお話ですね。――ちなみに、『技術を加速させると世界が滅ぶ』と考えられているから禁止されているのですよね? 実際過去の文明がどのように滅んだのか、ダガン殿は把握しているのですか?」

「ふむ……」

ダガンがお茶に手を伸ばし口をつける。

先程と違って勿体ぶった態度で、間を取った。

鋭い視線が向けられる。

「――答えを言ってしまえば『儂も分からん』。もちろん一般教養として歴史学者の先生方が謳う説のいくつかは知ってるがな。そういう答えを求めておるわけではないだろ?」

「はい」

「儂もライト殿のように気になって考えたことがあったのだが……」

再び妙な間を取ってダガンが視線を向けてくる。

「ライト殿――仮に『技術を加速させると世界が滅ぶ』としてどのように滅ぶとお考えかな?」

「……正直、想像が付きません。強いて言えば世界が滅ぶほどの戦争が起きたとかでしょうか」

「なるほど……儂の場合、技術者だからか『大規模な魔術が暴走して爆発する』なんてモノを想像するのじゃ。マジックアイテムを製作する際、新米が誤って爆発させて指を吹き飛ばすこともあるからな。それが文明を滅ぼすほど大きくなるのを想像したんじゃ。だが途中で気付いたんだが……そんな大爆発が起きたとして、文明が丸ごと消滅するものか?」

「…………」

「 神話級(ミトロジー・クラス) すら作り出したかもしれない文明だ。それぐらい破壊力の高い兵器を作り出すことが出来るかもしれん。じゃが、それが原因として、どうして誰1人過去文明が滅んだことを体験として伝えておらぬのだ? 1000年も生きる種がいるにもかかわらず、言い伝え一つ残っておらん。例えばその大規模な爆発で全種がまるごと消滅したから、言い伝え一つ残っていないとしたら……儂らはどうしてこの世に生きている? 滅んでいないとおかしいではないか」

「……ッ!?」

ダガンの問いに背筋がゾワッと震える。

僕達自身、この可能性は検討していたが、ダガン――第三者から口にされるとより確信が深まる。

彼も僕達が到達している予想に気付きニヤリと笑う。

「儂ら6種、過去に栄えた文明を持つ古代人など歯牙にも掛けない『神』のような存在が居るぞ。でなければ辻褄があわぬ」