軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第123話 継承される意思と残された少女

「うぉぉぉぉっ……ぉぉ……こんな、ことで……俺の集めた、力は……っ」

ルガードの展開した血の盾が、蒸発するように削られていく。聖なる力を込めた光弾が、盾そのものを浄化しているのだ。

(戦ってるうちにわかった……この人が力の源にしているのは、他の生き物の命……『死』そのものなんだって)

スフィアは光剣を絶え間なく弾丸に変化させ、ルガードに撃ち込む――光剣は剣精の力で作られた固有精霊の具現化であり、『光』という属性は持つが、邪悪な存在を祓う力などは持っていない。

だが、ユマから受け継いだ浄化の力を光弾に乗せることで、死霊に対抗する力と高い威力を併せ持つ唯一無二の武器に変わる。

「がぁぁぁぁっ……あぁぁっ……!」

光弾を防ぎきれず、ルガードの身体を覆った装甲も光弾によって削られていく。ルガードは喉元をかばい、苦しみながらたたらを踏む――しかし、足元から立ち上げた血の壁で弾幕を辛うじて寸断し、弾幕から逃れた。

「……貴様……一体、何を……」

もしルガードが魔族の力を手に入れていなければ、前に見せた『 反転する闇(リバース・ダーク) 』という魔法で『 聖弾幕(ホーリーシュラウド) 』を返すか、防御できたかもしれない。

シャロンと戦った時に分かっていたことだった。『 夜を這う者(ノスフェラス) 』は致命的なまでに、ユマの持つ神聖な力に対して脆い種族なのだ。

ユマ本人が『鎮魂』を試みれば、今のルガードが体内に取り入れた他者の血液――多くの犠牲によって得られた力は、根こそぎ浄化されて失われるだろう。

(だが……なぜ、そこまで『変わった』? 北部渓谷で戦ったルガードは、魔族の力を手に入れたとはいえ、まだ人間と言える存在だったはずだ。それが、今はまるで違う)

(……何か、理由があるのかもしれない。お父さん、私、こんなことじゃ甘いって言われちゃうかもしれないけど……)

スフィアは光剣をルガードに向けたままでいる。もはや勝敗は決している――それでも本来なら、止めを刺さなくてはならない。しかし娘の意思に反してまでそれを強要すれば、それこそ父親の資格がない。

黒い血の鎧が剥がれ、光弾によって浄化された場所に火傷を負ったルガードは、荒く息をつきながら、それでも傷を再生していく――その身体を流れる黒い血は、まだ力を失ってはいないのだ。

「私一人じゃ、まだあなたには勝てなかったかもしれないです。お父さんがついていてくれなかったら、怖いっていう気持ちを乗り越えられなかったから」

「……そうか……俺のことを恐れたか。一度敗れた記憶を消すために、ディック・シルバーはお前を敢えて戦わせた」

「それも、あると思います。でももう一つは、お父さん……ディック・シルバーが守りたいものを全部守るため。『目立ちたくない』っていう考えを、貫くためです」

(お、おい……スフィア……?)

スフィアが微笑んでいる。俺は、彼女の考えが分からない――こうして宿っていても、全てを共有しているわけでは、いつの間にか無くなっていた。

(……参ったな。俺が思うより、お前は……)

(ううん、私はお父さんの力になりたいだけ。お父さんがずっと私を見ていなくても、私は立派に冒険者の仕事をできるようになるから。そうしたら……)

――全てを伝え終わる前に。今まで動かなかったルガードが、顔に手を当て、天を仰いで笑い始めた。

「はははは……はははははっ……ディックの娘……娘だと? そんな年端もいかない子供に、俺は……俺はっ……はははっ、ははははははっ……!」

その笑い声に込められたものは――怒り。

『一度は勝利した相手』、それも『年端もいかない子供』と見なした相手に負けたことで自尊心を傷つけられ、自分を含めた全てに対しての怒りが、その魂を狂気の色に染めあげている。

「俺が何のために人間を捨てたと思っている……貴様のような 天賦(てんぷ) を与えられた者に、生まれながら決まった絶対の序列など無いと思い知らせるためだ。それも成し得ぬまま、こんな所で終われるわけがない……終わっていいはずがない……!」

レオンとルガードが、どのような関係性だったのかは分からない。だが、一つ言えることは――彼らを結びつけていたのは、形は違えど、劣等感に他ならなかった。

俺が一番良く知っている。生まれながらに、他者と相容れない存在――身に余るほどの力を持っていた俺ならば。

『自分は目の前にいる存在より弱い』と感じたとき、自分に対する失望を覚えた後に訪れるのは、理不尽なまでの怒り。排斥しなければならないという、理屈を超えた感情。

――あいつは化け物だ。村の戦士たちがパーティを組んで倒す魔獣を、たった一人で倒してけろりとしていやがった。

――デアドリックをうちの子供に近づけるな、あいつは普通じゃないんだ!

――放置すれば、俺たちの村はあの子供に乗っ取られるかもしれん。あれの力はあまりに異質すぎる。

自分の強さに対して他人から向けられる感情の意味を、村人が怯えていることを、物心づく前の俺は知らなかった。

排斥を受ける前に自分から孤立したのは、幸運だったとも言える。俺が家に寄りつかなくなったことで、村人たちは俺の存在を忘れていき、家族にも迷惑をかけずに済んだ。

今、ルガードがこちらに向けているような憎悪の眼差し――村人たちも同じだったろうそんな目を見ていたなら、俺は魔王討伐隊に志願したか分からない。

なぜ自分を憎む人々のために戦わなければならないのかと、無為なことを考えただろうから。

「……お父さん、ありがとう。お父さんが、今のお父さんでいてくれて良かった」

娘にそう言わせてしまうような弱さは、本当なら見せるべきじゃない。しかしふとした瞬間に表出する記憶を、スフィアは敏感に読み取ってしまう。

――だが、スフィアが見せた優しい表情が、今のルガードには耐え難く映ったようだった。

「聞こえなかったのか……俺は言ったぞ。これで終われるわけがない」

誰もが追い詰められたとき、そんな目をする。だから最後の最後まで気を抜くことはできない――気を抜いたつもりもない。

「貴様らは強い……だが、この場にはまだ『糧』となりうる者がいる」

ルガードが見ていたのは、俺たちではなく、その遥か後方――宮殿の二階から出ることのできるバルコニーだった。

「俺はここに囚われた王族全員を、処刑してもいいと言われている……その意味が分かるか?」

ルガードはすでに、『準備』を済ませていた――俺たちと交戦する前に、すでに自らの血を流し、王族のもとに向かわせていたのだ。

兵士たちが居なくなったことで、脱出を決意したのだろう、壮年の男性――おそらくはラシウス王と、そして女性が数人一緒にいて、バルコニーからこちらを見ている。

「俺を一息に殺さなかったことを悔やみ続けろ、『忘却のディック』……ッ!」

ルガードの腕を切り離した時と同じ、黒い液体の塊が、空中に浮かび上がる――そして、バルコニーの王族たちに向けて槍を突き出そうとした瞬間だった。

「……追いつけて、しまうんです。貴方がどんなことをしても」

―― 光剣(ライトブレード) ・ 浄滅光弾(イレイサーレイ) ――

「なっ……!!」

剣精が弾丸に変化し、黒弾に打ち込まれるその過程を、ルガードは認識することもできていなかった。

黒い血によって作られた球は、射抜かれる同時に内側から白く変化し、砂の塊のように爆砕する。そして欠片も残さず、離宮に吹き抜ける風の中に消えた。

「――貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ!」

感情を剥き出しにした叫びを上げながら、ルガードはもはやなりふり構わず、黒い血を変化させた魔獣のような腕を二つ同時に作り出すと、スフィアに切りつけ、掴み、握りつぶそうとする――だが。

届きさえすればスフィアに打撃を与えられるだろうその腕は、決して最後の距離を埋めることができなかった。

―― 幻影の双蛇(ファントム・ヒュドラ) ――

スフィアがルガードに攻撃する際に、同時に付与した浄化の力が具現化する――蛇のように絡みつき、魔獣の腕を二本とも縛り付けて止めていた。

ユマの浄化の力は、彼女の意思に応じて『透明無色』――存在しないように見せかけることもできる。スフィアの無音詠唱に反応させることで、完全にルガードの不意を突いた。彼ほどの猛者と言えど、初見の策を見破って対応することはできなかった。

「降参してください……っ、これが、最後です!」

「――黙れぇぇぇぇっ!」

ルガードが繰り出してきたのは――闇に潜み、ジュリアスを狙う時に使用した暗殺用の投刃だった。

ルガードが元来使用していた武器。SSランクに至るまで最も得意としたはずの武器は、これまで繰り出してきたどの攻撃よりも鋭く、 疾(はや) かった。

それでも、スフィアには届かない。ミラルカが、魔法使いでありながら、弓などの攻撃を恐れずに戦える理由がある――防御にも転用できる陣魔法だ。

――『限定殲滅型九十一式・絶対領域陣』――

黒い血によって作り出された腕も含めて、無数に放たれる投刃は、スフィアが一瞥するだけで一本も残さず、視認できないほど小さな粒子にまで分解されて消滅する。

(これでも、まだ、諦めてくれないの……?)

(――スフィア! 今、奴が狙っているのは俺たちじゃない!)

最後の武器は一つ――腰に帯びた曲剣だけ。だがそれに手を掛けたあと、ルガードは最も愚かな選択をした。

「これが今回の、俺の『仕事』だ……首は貰うぞ、弱者の王」

国王の処刑。それだけは果たそうと、ルガードは曲剣を投げ放とうとする――弧を描く軌道で、バルコニーにいるラシウス王の首を狩るために。

「どうしてっ……!」

なぜ諦めないのか。なぜそこまで、人を殺すことを躊躇わないのか――スフィアの悲痛な叫びが響く。

あと一歩のところまで来ていた。最後まで見守りたかったが、これ以上はスフィアの心に傷を残すことになる。

(よくやったな、スフィア。もう、十分だ)

(お父さん……)

後は俺がやる。そう言う前に、スフィアの意識が沈む――代わりに、俺の意識が表出する。同時に、ルガードの足元の地面が陥没し、流砂が出現する。

「ぐっ……うぁ……!」

――限定殲滅型四十六式・縛流砂陣――

地面を分解して砂に変える陣魔法――その『分解』を、地面深くまで連鎖させることで、砂の崩落を起こし、敵の動きを封じる。『零式・絶滅自壊陣』に至るまでの過程の一つであり、俺が模倣できる陣魔法の一つだ。

ルガードは標的をこちらに変えて、渾身の力で曲剣を投じてくる。俺はそれを、魔力剣の一閃で返す――不利な態勢から繰り出されたにも関わらず、今までのルガードの攻撃で最も鋭いと感じた。

「あんたの剣を、もっと違う形で見てみたかった」

「――がぁぁぁぁぁぁっ!」

ルガードは残る力を全て注ぎ、今まで見せなかった形状に黒い血を変化させる――それは見たことのない、猫を大きくしたような魔獣の姿だった。

主を守るために、黒い魔獣が牙を剥く。しかしその時には、俺は魔力剣を抜き、決まった形を持たないルガードが常にかばい続けた一点に狙いを定めていた。

――修羅残影穿・転移瞬烈――

分身を転移させ、突きを繰り出す。ルガードに反応を許さず、魔力剣はルガードの弱点――取り込んだ血の力を制御するために、喉元に埋め込まれた『核』を 穿(うが) ち、貫いていた。

「がっ……ぁ……」

俺は剣を鞘に収める。スフィアが護身用にずっと帯びている、『妖精剣』に次ぐ切れ味を持つ名剣だ。

「他者の血を取り込んだ、黒い血の力は確かに強力だ……だが、際限なく強くなれるわけじゃない。あんたは自分が元から持ってた技術を伸ばすことを怠った。だから見切れなかったんだ」

「……そう、か……忘却のディック……俺が、敗れたのは……」

「そうだ。あんたは、俺に負けた。そして、スフィアにも負けたんだ」

スフィアの姿には似つかわしくない言葉遣いに、ルガードは完全には理解できずとも、『俺』が最後の一撃を担ったことを悟っていた。

そして俺も、今さらに気がついた――『小さき魂』を使って、戦闘評価の半分を分離させ、スフィアに宿らせた。その状態で力を発揮したことで、身体に変化が生じていたのだ。

手足が元のスフィアよりすらりと伸びて、視界も少し高くなっている。俺の人格が表出したことで、数歳ほど成長した姿に変化していた。

「……どこまでも、気に入らない男だ……一人で全てを変えられる力を持ちながら、回りくどいことをする……」

「それは意見として受け取っておく。最後に、一つだけ聞かせてもらえるか」

全ての力を使い果たしたルガードの身体は乾ききって白く変化し、破片となって崩れ始めている。崩壊は、止めようがない――それをルガードも受け入れているようだった。

「ただ魔族の血を吸っただけで、そうはならないはずだ。その喉にある『核』を埋め込んだのは、グラスゴール将軍なのか」

ルガードは口を 噤(つぐ) む。最後の義理立てとして、何も言わずに終わってもおかしくはないと思った――しかし。

「……勘違いをするな。俺はさらなる力を望んだ……グラスゴールはその代わりに、協力を要請した。奴自身は、実験のつもりだったのだろうがな。俺はこの結果自体には、納得はしている」

「人を魔物に変える技術か。そんなものを、これ以上使わせるわけにはいかない」

「それは貴様のエゴだ、ディック・シルバー。どんな手段を使ってでも願望を叶えたいと思う者はいる……お前も、今の自分ですら満足していないのだろう」

王都アルヴィナスの遺跡迷宮で、クライブは魔物に変わり、人である時よりも力を増した。俺も同じことをすれば、強くなれるのか――どうしても必要ならば、魔物になってでも力が欲しいと思うのか。

答えは、否だ。

「俺はこれからも、人間であり続ける。どうしても皆が俺を恐れるなら、どこかの山奥で仙人みたいに暮らすかもしれないが。今は、これまで通りに生きていく」

俺は今の自分に満足している。それを、ルガードは欺瞞だと切り捨てるだろうか。

ルガードは、しばらく黙ったままでいた。風が吹き、その身体がさらに崩れ去っても、苦痛を顔に出すことはなかった。

「……グラスゴールと敵対することになれば、奴の思想の一端を知ることになるだろう。それでも、奴を裁くことができるのか」

「そんなことは、あんたに言われるまでもないさ。善悪がどうあれ、俺はグラスゴールを倒さなきゃならないだろう」

「……そうか。お前は……覚悟がないのではない。こうして、俺を……」

それがルガードの最期の言葉だった。その身体が砂となって風に流されたあと、後に残ったのは、おそらくは黒い血を制御するための『核』だった。流砂の動きを止め、砂地に落ちた『核』を、俺は慎重に拾い上げる。

霊装竜のものとは違う――『力を集める』のではなく、『奪う』方に寄っている。何かの魔物の核なのか、それとも人工的な魔道具なのかは分からない。一つ間違いないのは、これを用意したのがグラスゴールだということだ。

そして『核』の機能はほとんど失われたはずだが、先ほどルガードが分離させた黒い猫型の魔獣は、ルガードが消滅した後も存在したままでいた。

(お父さん……この子、もしかして……)

「ルガードと一緒に消えなかったということは、別個の存在ということになるが……」

ルガードはこの魔獣について、何の言葉も残さなかった。この魔獣を、あえて最後に切り離したのだとしたら――そこに、何かの意図が込められている。

攻撃してくる気配もなく、機能を停止した『核』を持つ俺を、魔獣は静かに一瞥する。そして何をするのかと思うと、目の前に歩いてきて行儀よく座った。

「戦うつもりがないのなら、野に帰って暮らせ……というわけにもいかないか。山野の生物に影響を与えるかもしれないしな……」

(っ……お父さん、見て! この子、姿が……!)

「なにっ……?」

猫の魔獣の姿が、眼前で思わぬ変化を遂げる――この変化は、どこかで見たことがある。

獣の姿になった獣人が、人の姿に戻るときと同じ。ルガードは『猫型の魔獣』ではなく、『 猫獣人(フェリシアム) 』を取り込んでいたのだ。

取り込まれてもなお、自分の意思を保つことができている――そんなことがあるのだろうかと思うが、現実に猫獣人の少女が目の前にいて、俺を漆黒の瞳で見つめている。

「……どうやら、戦う意思はないみたいだが。なぜ、 跪(ひざまず) いたりするんだ。俺たちは、仇みたいなものじゃないのか」

「……彼は……自分が敗れることがあれば、私は、勝った者に従えと……」

ルガードと、この猫獣人の少女がどんな関係性だったのか。それは分からないが、おそらくこの少女の『本来の身体』は、すでに失われている。

「君は、ルガードに血を吸われて……それでも、意識が残っていたっていうのか」

「……軍の、大きな獣……はぐれた獣に、襲われて……この人が……」

断片的な言葉から想像すれば、ルガードがこの少女の命を奪ったのではない。死に瀕していた彼女の血を、何らかの意図で取り込んだと考えられる。

『寂寞たる埋葬者』と呼ばれた無情な殺し屋であるルガードが、他者に情を示したという話を聞いたことはなかった。

(……ルガードさんは、最後にこの子を逃がしたかったのかな?)

彼の考えていたことを、今となっては知ることはできない。それを後悔することも、やるせないと思うこともない。

一つ言えることは、ここにいる数奇な経緯を経た猫獣人の少女は、俺たちに害意を為すつもりはなく、行き先も決まっていないということだ。

「スフィア……すまないが、ここに残って、彼女と王家の人たちに付いててもらえるか」

(っ……うん! 私は大丈夫だから、お母さんたちやメルメアお姉さんを守ってあげて)

振り返ると、離宮のバルコニーに、無事を喜んで抱き合う女性たちの姿がある。あれがおそらくメルメアの母親と、妹だろう。

そして父親――ラシウス王にも話は聞きたいが、そうもいかない事情がある。

「さて……君には、名前はあるのか?」

「……名前……『黒猫』と呼ばれていただけ……元の名前は、忘れた……」

(私の名前、お父さんとお母さんと、みんなで考えてくれたから……今度は、私も考えてあげたいな)

「ああ。俺はいつでも戻ってこられるから、何かあったら呼ぶんだぞ」

ずっと試していたことが、ようやく今完成した――『思考の多重化』によって増やした『一列ずつの思考』を、『小さき魂』で作り出した分体にも同時に走らせる。

ゆくゆくは『本体と複数の分体』を同時に動かすこともできるようになるだろうが、まずは『スフィアを見守る思考』と、『本体を動かす思考』を同時に走らせる。

スフィアに身体の主導権を渡すと、元の年齢の姿に戻る――本体に向かって精神が引き寄せられる感覚の中で、俺はスフィアが手を振っている姿を見た。

「お父さん、頑張って! 私、いい子にして待ってるから!」

ルガードが離宮に現れたならば、レオンはおそらく――彼の言動や、俺が知りうる性格からすれば、必ず国軍の動きを利用して、個々の戦いを挑んでくる。

レオンが狙うのはコーディか、それともラトクリス解放戦力の象徴となっているメルメアか。レオンがグラスゴールによってさらなる力を得ているとしても、今度は逃がさない――兄のことで長く葛藤を抱え続けた、親友のためにも。