軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6 職質

キツイ。

キツイけどここで食べたらリバウンドする。

またあのぶよぶよに戻ってしまう。

空腹を水でごまかし、筋トレに励む。

「彼女を作るぞおおお~」

そんな生活を続け俺はこの日一つの成果と節目を迎えた。

ジョギングは1時間を超え、身体が少しだが軽くなった気がする。

そしていつものように寝る前に体重計に乗る。

「おおおおおおおおお~」

この日体重計の示した数値は99.9キログラム。

ついに俺は100キログラムの壁を突破した。

まだ引き締まったとは言い難い.

標準体重からも遠い。

だけど目に見える形での成果はモチベーションが上がる。

そしてこの日から俺は剣術の訓練も開始した。

太ってた時にも試みてはみたけど上腕と脇の肉が邪魔でまともに木刀が振れず早々に断念した。

それがいまなら振ることが出来る。

家の中では危ないのでジョギング先にある河原で素振りを行う。

木刀を背負ってのジョギングは歩行者の目を引くが気にしたら負けだ。

そして毎日ジョギングしていたおかげで何人か挨拶する人が出来た。

すれ違うだけだけど、自然とそんな風になっていた。

「ふっ、はっ、ほっ」

今更だけど、俺は結構力はある方なのか木刀を振っても重いとは感じない。

そりゃそうか。

これだけの巨体を支えるだけでも普通の人の何倍も筋力が必要だろう。

ただの素振りだけど、記憶の中のイメージとは程遠い。

イメージをなぞるように腕を振るが、全く重ならない。

まあ、イメージだけで出来るようになるなら苦労はない。

とにかく今は回数振るしかない。

「やあっ、はっ、ふっ」

河原で木刀を振るデブ。

完全に危ない人に見えるだろうけど、俺は大丈夫だ。

「あ~ちょっといいかな」

「はい?」

一心不乱に素振りをしていると背後から声をかけられたので振り返る。

「ちょっと通報があってね」

「はい?」

「河原で毎日木刀振ってる不審者がいるとね」

「……」

声をかけてきたのは警察官。

振り返った瞬間に悟ってしまった。

俺は本当に不審者と思われていたらしい。

「ちょっと話を聞いてもいいかな」

「はい、大丈夫です」

それから人生初の所謂職務質問を体験することとなったが、俺がダンジョンシーカーを目指してトレーニング中だとしっかり説明させてもらった。

ただ、ジョギングに出るにあたって身分証明書どころか財布も持っていなかったので、母親へ確認の連絡まで入れられてしまった。

善良な一般市民の言葉はもう少し信じた方がいいんじゃないかと思う。

「余計なアドバイスかもしれないが、髪は切った方がいいぞ。ちょっと今の感じだとまたあるかもしれないからな」

「はい、ありがとうございます」

たしかに俺の髪はぼさぼさではある。

2年以上切ってないんだからそれはそうだろう。

ひげをそって清潔になった気でいたけどそうではなかったようだ。

警察官の口ぶりからこのことが不審人物感に輪をかけたようだ。

やはり身だしなみは大事だ。

ましてや彼女を作ろうと思えば当然だろう。

俺はその日のうちに2年ぶりに1000円カットに向かった。

この2年で大きな変化があった。

2年前は1000円ちょうどだったのに、今日行ったら1300円に値上げされていた。

それでも、伸びきっていた髪をきれいに切ってもらうのにはそれなりの時間を要し、申し訳なくなってしまった。

髪を切った俺。

まだデブではある。

それは間違いない。

ただ、かなりすっきりした。

そして前髪がすっきりしたおかげで前が見やすい。

「おきゃくさん、いい感じですよ」

「そうですか?」

「はい。どこのイケメンさんかと思いましたよ」

「またまた~」

お世辞だとわかっていてもそう言われた悪い気はしない。

おばちゃんだったとしても女性から褒められて嬉しくないわけはない。

イケメンとはいいがたい。

ただこれで不審者と間違われることが無くなることを願うだけだ。