作品タイトル不明
53 DM
戦いの時間はおそらく30秒にも満たない。
ただ、今までよりも濃い。
あっさり倒す事は出来たけどオーガは強い。
今までのモンスターよりも強いと感じる。
ただのモンスターではなく武人に通じるものを感じる。
皮膚がひりつく。
この感じ初めてだけど、どこか懐かしい。
心臓の鼓動がいつもより強く感じられる。
楽しい。
ちょっと自分でも変態的と感じてしまう部分もゼロではない。
だけど、強い相手と戦うことが楽しいと感じてしまう。
まさかガッシュファルトは野菜を食べる戦闘民族だったりしたのか?
世界観はめちゃくちゃだけど、そう感じてしまうくらい高揚感がある。
まだ2戦しかしていないがこのダンジョンいいかもしれない。
俺はオーガの残した魔石を拾う。
今度の魔石はさっきのヘルハウンドのよりも一回り大きい。
おそらく買い取り価格もそれに準じるだろう。
毎回かどうかはわからないけど、複数出てくれるなら実入りも悪くないと思われる。
脳裏に先程の戦いが浮かぶ。
『炎塵』はこのダンジョンのモンスターにも通用する。
そしてオーガとの斬り合い。
このレベルになると目で追うことは難しい。
ただ『ホークアイ』による視覚情報と予測にレベルアップしたステータスが反応してくれた。
確実に戦闘の難度は上がったけど、それでも、さっきのでやれる感覚はある。
まだわからないけど、ソロでもこのダンジョンを進めそうだ。
本当はパーティに興味ありだけど組む相手もいない現状では朗報だ。
それにしてもスケルトンとは違った硬さを感じた。
あの筋肉の鎧は伊達ではない。
密度の高い筋肉が刃を通りにくくしている。
斬れなくはないけど切断するにはかなりの力が必要だった。
新しいロングソードで威力は増しているはずなのにだ。
力を込める必要があるということは、それだけ消耗もするし、斬った際に動きも鈍る。
今回のように複数を相手取るには注意が必要だ。
一息ついて冷静になるとまた俺は無言の時間が続いていることに気が付いてしまう。
「あ~皆さんいかがだったでしょうか。初めてにしては上手く倒せたんじゃないかと思います」
“お、おう”
“オーガ3体瞬殺乙”
“速すぎてよくわからんかった。全体の映像が欲しい”
“ソロだからそれはショーがない”
“極寒。パーティ配信とソロの差はあるよな”
確認すると既に視聴数は1000を超えている。
コメントは概ね好意的に思えるが、全体を見たいと言われるとツライ。
ソロではどうしても俺視点のカメラだけ。
マルチカメラ配信は複数人数のパーティの特権だ。
視やすさはマルチカメラの優位性は揺るがない。
それはそうとダンジョンに潜り始めてから既に2カ月は経過しているけど、正直出会いがない。
もちろん女性との出会いは皆無だけど、パーティを組めそうな相手とも全くで会わない。
出会うのは既にパーティを組んでいる人達。
しかも、ダンジョンという場所で知らない相手に声をかけるのは難易度が高い。
あ、そういえば唯一の例外はある。
この前助けたパーティの女性三谷美香さんというらしいが、俺の配信を探し当てたらしく時々DMが届くようになってしまった。
内容は普通にお誘いで有難くはあるけど、あの変わり身を見ているだけに怖くて一度も返事は出来ていない。