作品タイトル不明
転機
「ただいま」
「今日はおそかったわね」
「うん、ダンジョンに潜って来たからね」
「えっ? ダンジョン?」
「うん、俺今日からダンジョンシーカーになったから」
「えっ? ダンジョンシーカー?」
「そう、明日からも通うつもりだから」
「えっ? えっ? どういう……」
「心配しなくても大丈夫だよ。問題なさそうだしもうレベル上がったし」
「えっ? レベル? えっ?」
母親に今日ダンジョンシーカーになることは伏せていた。
単純にうまくいかなかったときに説明し辛いと思ったからだ。
母親が驚くのも無理はない。
デブなヒキニートだった息子が急にダンジョンシーカーになって急にダンジョンに潜り始めたらそれは驚くだろう。
その夜帰ってきた父親にも伝えると母親と同じようなリアクションだった。
今はこんなものだ。
だけど、ここからだ。
ダンジョンシーカーとしてこの先どんなことがあるのか想像もつかないけど、とにかく俺は踏み出した。
「ふ~~っ、腫れてるな」
汗をかいたので風呂に入るとわき腹が結構腫れている。
腫れて、黒に近い紫色になっている。
折れてないといいけど。
今更だけど、こんなんで風呂に入ってもよかったんだろうか。
とりあえず明日は朝から病院だな。
ちょっと心配になって風呂を早めに上がることにする。
風呂から上がり、自分の部屋へと戻る。
わき腹が気にはなるけど、筋トレをさぼることはできない。
一日さぼってしまうと、以前の自分に逆戻りしてしまうような気がして、脇腹に気を遣いながら日課の筋トレに励む。
冗談抜きで、今日で人生が変わった気がする。
こういうのを転機というのかもしれない。
これから非日常のダンジョンが俺の日常になる。
最後こそ危なかったが、ゴブリンとの戦いには今日一日でかなり慣れた。
しかも、今日でステータスが生えたので明日はもっと楽に戦えるようになっているはずだ。
楽に倒せて1匹あたり1000円と考えると悪くない。
今が最底辺。
それでも一日で10000円以上稼げた。
明日は、病院があるから厳しいかもしれないけど、午前中から潜ればもっと稼げるかもしれない。
今の状態を毎日続けていれば、実家住まいの俺ならそれだけでも十分やっていけそうだ。
「ダンジョンシーカーいいな」
まだ一日だけど、ダンジョンシーカーをやってみて悪くない。
悪くないどころかかなりいい。
まだ、自分の身体がそこまで動くわけではないし、敵も最弱に近いゴブリンなので俺の戦闘欲を完全に満たす事は出来ていないが、それでもいい感じに思える。
今日の最後のゴブリンは危なかったけど、今思い出してみれば、あれすらもよい経験になったと思うことが出来る。
たった一日だけど、潜る前の昨日とは違う。
これがダンジョンシーカーとして活動するという事。
今は記憶の中のガッシュファルトには遠く及ばない。だけどこのまま進んで行けば、確実に強くなれる確信がある。
先に進めば、きっとモンスターとヒリヒリする戦いを経験することが出来る。
そして、それこそが俺の戦闘欲を満たしてくれるものだと思える。
筋トレを終えベッドで横になるが身体は疲れているはずなのに、昂ってしまい中々眠ることが出来ない。
ここ数年でこれほど昂った事はなかった。
ベッドの中で今日一日の事を思い出しながら、明日に備えイメージトレーニングも重ねておく。
明日が待ち遠しい。