軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07.善人、再生エネルギーで天使を作る

変身を完了した私は、元の肉体をシャオメイに差し出した。

「シャオメイ、僕の肉体を預かっててもらえる?」

「はい、任せてください」

「ありがとう、僕が戻ってくるまで永久冷凍で凍らせて保存しといて。僕の肉体は今死んでるような状態だからね」

「――っ! 分かりました! 任せて下さい!」

返事をする間にも既に肉体の冷凍保存を終わらせたシャオメイ。

行動も早いけど、やっぱり氷の魔法の扱いには長けてるな。

「……」

「どうしたのシャオメイ、僕の顔をじっと見つめたりして」

「あっ、いえ……その、いつものアレクサンダー様と違うから」

「うん、戦いやすいように大人にしてるからね。手足長い方が何かと便利だから」

「そうですか……」

納得しつつも、シャオメイはやっぱりぼんやりと私をじっと見つめたままだ。

心なしか顔が赤い、どうしたんだろう――

「むっ!」

シャオメイの赤らめ顔に深く考える暇もなく、空から何か降ってくることに気づいた。

賢者の剣を握り直し、それを打ち払う。

純粋な力の塊だ――重い!

打ち払ったそれは離れた場所の地面に打ち込まれた。

直後、地響きが起きる。

谷の中に立っている陸の孤島の様な、このビーレ魔法学校。

弾き飛ばした力の威力で一部崩れて、谷の底に崩落していった。

更に――ピリングス=マルコシアスが空から襲ってきた。

こん棒を賢者の剣で受け止める。

まったく手もしびれなかったが、地面が受け止めきれずにひび割れた。

「――――!」

「影響が出ない所で戦おう」

魔力で足場の地面を一度固めて、から、賢者の剣を思いっきり振り抜いて、ピリングス=マルコシアスを再び空に打ち上げた。

そのまま私も飛行魔法を使って、飛び上がって追撃する。

ちらっと見えた地上、やはり一部がかけて谷底に崩落している。

長い年月を経てなだらかになった島の縁が、そこだけ割れてまるで満月が欠けていくかのようになった。

これ以上島に影響が出ないくらいの高さに飛び上がってから、ピリングス=マルコシアスに斬りかかる。

賢者の剣とこん棒が打ち合う、余波が拡散するが、空中だから大丈夫だった。

ピリングス=マルコシアスはその小さな体に似合わず、打ち合ってる方じゃない、もう片方の手を振って魔法を唱えた。

空が黒めく、極太の稲妻が落ちてくる。

「なんの!」

全身を貫いていく電撃を、気合で弾き飛ばす。

マルコシアスは更に複数の玉、表面が帯電している玉を飛ばしてきた。

それを一つ残らず切り払ってから、爆発を背負ってピリングス=マルコシアスに突進。

賢者の剣でこん棒のガードごと斬りつけ、更なる衝撃波をまき散らしつつ、吹き飛ばす。

力のぶつかり合い、その残滓があたりに濃く残った。

徐々に水の中で戦うような、そんな抵抗になっていくのを感じながら、私は、ピリングス=マルコシアスと互角に、激しい戦いを繰り広げた。

☆(sideシャオメイ)

空を見上げる、さっきまで晴れ渡った空に、少しずつ少しずつ雲ができあがってきた。

アレクサンダー様と天使の戦いで放出したエネルギーが結晶化して、雲になっているんだわ。

恐ろしい。

本で読んだことがある、かつて神と悪魔が戦って、その力をまき散らしたあと、戦った場所が何も生まれない死の大地に変わったという。

その時の悪魔はシュラといい、凄惨で悪影響しか残らないその戦いの地を修羅場という。

それが修羅場の語源だと。

「だから……アレクサンダー様が空で戦ったんだ」

アレクサンダー様はすごく博識。

世の中の全ての事を知っているんじゃないかっていつも思うくらい、博識なお方。

私でも知っている様な修羅場の故事を、アレクサンダー様が知らないはずがない。

このビーレ魔法学校を不毛の地にしないために空で戦ったんだわ。

でも……それが怖い。

そんなアレクサンダー様でも、変身までして戦いに臨んだアレクサンダー様でも。

未だに、天使と互角に戦っているという現状を、私はすごく怖いと思ってしまった。

気がつけば、ぎゅっと握った手の平が汗でびっしょりになった。

戦いだしてから20分以上がたった。

最初は一つ一つが激しかったピリングス=マルコシアスの攻撃も、次第に少しずつ弱まってきた。

それと反比例するかのように、私達の足元に魔力の雲ができて、もう地上が見えないくらい分厚くなった。

雨雲のように分厚く固まっていて、触れるとビリビリする様な高濃度な力だ。

何もない空でよかった。

私はそう思い、殴ってくるピリングス=マルコシアスのこん棒を弾き飛ばす。

パワーがはっきりと落ちてきた、そろそろ終わらせよう。

ホムンクルスの肉体で上がった分の魔力を全て賢者の剣に注ぎ込む。

SSSランク――それよりも更に高い魔力を注ぎ込んでも、ヒヒイロカネの賢者の剣はびくともしなかった。

「行くよ」

(応)

返事してくる賢者の剣を両手で構えて、ピリングス=マルコシアスに向かって突進。

向こうもこん棒を構えてむしろ向かってきた。

互いに突進、一瞬の交錯。

「――――!?!?」

ピリングス=マルコシアスは奇妙な悲鳴を上げて、毛玉の様な体から血しぶきを上げた。

それまで飛んでいたのが、力を失って落下。

とっさに戻ってキャッチする、飛行魔法のまま一緒になってゆっくり落下。

力が固まった雨雲のような所に入る。

力が私に 来ない(、、、) 様に体の周りに薄く魔法障壁を張りつつ、ゆっくりと降下。

途中でピリングスの肉体が消えたので手を離した。

やがて、すとん、と一人で地上に着陸する。

「アレクサンダー様!」

シャオメイが離れた所から私の名を呼んだ。

今にも駆け寄ってきたいのが表情に出ていたが、私の肉体を守っているためそれが出来なかった。

私の方から彼女に近づいた。

「ありがとう、シャオメイ」

「終わったのですか?」

「うん、無事にね」

「さすがアレクサンダー様です、天使を、それも強くなった天使を倒してしまうなんて」

「倒してはないよ」

「え? 倒してないんですか?」

どういうことだ? って顔をするシャオメイ。

私は振り向き、空を見上げた。

雨雲のような、力の塊。

それが少しずつ薄まって、青空が晴れていく。

その中から姿を現わしたのは――

「て、天使?」

「うん、マルコシアスだよ」

地上のシャオメイ、そして空中のマルコシアス。

両方とも、状況がよく分からないとばかりに、不思議な顔をしていた。

「マルコシアスと戦った力を利用したんだ」

「力を……あれは修羅場回避じゃなかったのですか?」

「それもあるけどね。それよりも、それだけの力を地上の汚染に使ってしまうよりは、天使の肉体を再生する事に使った方がいいかなって。それにマルコシアスも被害者だし、本来の肉体はもうない可能性もあるしね」

「……」

「だからあそこにいるのは、天使の肉体に天使の魂。天使づくしの普通の天使だよ」

だから大丈夫、って締めくくると、シャオメイは更に唖然とした。

「天使の肉体って……作れるものなのですか?」

と、更に信じられないって顔をした。