軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03.善人、瞬時に全てを見抜く

「きゃっ!」

シャオメイが小さな悲鳴を上げて、手で顔を覆って体ごと真横を向いた。

それもそのはず、光が完全になくなった後、現われた――気を失った状態で現われた男は素っ裸だった。

シャオメイくらいの年頃の女の子には刺激的すぎる光景だ。

「ど、どうして裸なのですか?」

「モンスターの時は何も着てなかったからね、多分そのせいだと思う」

「そ、そうなのですか?」

いきなり現われた素っ裸の男に、シャオメイは耳の付け根まで真っ赤に染まった。

「そういえばさっきの教室に服がありました。とってきます」

「ちょっと待――」

シャオメイはそう言って、私の制止も間に合わないほど速さで、逃げるようにこの場から立ち去ってしまった。

うら若き乙女には衝撃的な光景なのは分かるけど。

「服くらい作れるのに……」

私は微苦笑してしまう。

賢者の剣に軽く聞いただけでも100通りの方法がある、聞かなくても土でも被せて材質変化の魔法をかけてとりあえず布に出来る。

いくらでもやれるが、それよりもシャオメイの羞恥心が勝って、先に逃げ出してしまった。

私は倒れている男を眺めた。

シャオメイが持ってくるであろう服を無駄足にさせるのも何だし、戻ってきた時にまた 見せてしまう(、、、、、、) のもあれだ。

少し考えた後、手をかざして魔法をかけた。

少し前にゼアホースの街で覚えたばかりの魔法。

男の股間に魔法の湯気がむくむくと立ちこめた。

「……これじゃ余計にイヤらしいな」

その光景に苦笑した私は更に魔法をかける。

今度は全身に魔法の湯気をかけて、顔だけを残して全身を湯気で覆った。

これなら大丈夫、と改めて状況を分析。

さっきまでは賢者の剣に聞いても可能性が多すぎて絞れなかったんだが、新しい状況が加わった事で話が変わった。

魂が入れ替わった状況。

人間に化けたモンスターを倒せば元に戻る。

この二点を追加で、賢者の剣に聞く。

すると可能性が二つまで絞られた。

二つまで絞れば後はリアルタイムの判断でどうとでもなる。

私は両方の特性と解決方法をしっかり頭に叩き込んで、覚えた。

ふと、気づく。

「シャオメイ、遅いな……」

さっき通った校舎の教室に服を取りに行くと言ったシャオメイが、中々戻ってこなかった。

探しに行こうか、と思ったその時。

シャオメイが向かって行った方角から、二体のモンスターとシャオメイが一緒になって現われた。

☆(sideシャオメイ)

私は逃げていた。

後ろから追いかけてくる 自分(、、) から逃げていた。

何が起こったのか分からない。

分かっているのは教室に入った途端目の前が真っ暗になって、次に気がついたらもう一人の自分が目の前にいたと言うことだけ。

そして、自分がモンスターの姿になっている事。

訳が分からない、私は混乱した。

そんな混乱する暇も与えてくれないとばかりに、私の姿をした、多分モンスターが襲いかかってきた。

手をかざして詠唱し、無数の氷の矢を放ってくる。

とっさに避けて教室から逃げ出して、きた道を引き返した。

アレクサンダー様だわ、アレクサンダー様に会わなきゃ。

アレクサンダー様ならきっとなんとかしてくれる。

そう思って、必死にきた道を走った。

(あっ)

途中で、別のモンスターが現われた。

このモンスターも人間? と思ったらそんな事はなかった。

モンスターは明らかな殺意で私を攻撃してきた。

とっさに屈んで、攻撃を避けた。

挟み撃ちにされる――と思ったらそうはならなかった。

後ろから追いついてくる「私」と、今私を攻撃したモンスターが何故かケンカしだした。

その隙に私は逃げ出すけど、隙はほんの一瞬しかなかった。

逃げる私を、モンスターと私の見た目をしたモンスターが一緒に追いかけてきた。

とっさの共同戦線なんでしょうか、ピンチは更に増しただけだった。

必死に逃げて逃げて、逃げ切れなくて、二体のモンスターに追いつかれて、もみくちゃになってしまった。

どうにかして抜けだそうとすると、少し離れた所にアレクサンダー様の姿が見えました。

いつの間にかアレクサンダー様のところに戻ってきました。

こっちを見たアレクサンダー様が剣を構える。

(いけない!)

悪い予感がしました。

この状況、他の人には 私(、) が二体のモンスターに襲われているようにみえてしまう。

実際も「私が二体のモンスターに襲われている」んですが、「私」が違う。

アレクサンダー様が剣を振り上げた。

「――」

私です! こっちが私です!!

と叫ぼうとしましたが、モンスターの体だからか、声が上手く出ませんでした。

今になってようやく分かりました、学校に入った直後にあった モンスター(人間) が、私たちからすぐに逃げ出した理由が。

私も逃げなきゃ――足が動かなかった。

アレクサンダー様の剣の方が遙かに速かった。

振り下ろされたアレクサンダー様の剣、スローモーション――死ぬ間際になってしまうあの状態で見える、飛んでくる二筋の斬撃。

アレクサンダー様はまったく躊躇する事なく、二体のモンスターを攻撃した。

私は目をきつく閉じた。

本能がそうさせた。

「大丈夫かシャオメイ」

「ごめんなさいアレクサンダー様、シャオメイはここまでですーー」

「うん、大丈夫みたいだね。ああ、服も戻る前に直しておいたから何も見てないよ」

「……え?」

私はおそるおそる目を開けた。

目の前にはアレクサンダー様がいた。

自分を見ると、アレクサンダー様の言葉通り、ちゃんと服を着た自分の姿が見えた。

振り向くと、モンスターが二体、地面に倒れていた。

二筋の斬撃、それは正しくモンスターと、私の姿をしたモンスターを正確に倒していた。

あの状況で、何故?

「ど、どうして」

「シャオメイの事は見間違えないよ」

アレクサンダー様ははっきりと言い放った。

キュン!

私はアレクサンダー様の言葉に、胸が強く締め付けられたのでした。