軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04.善人、ミノタウロスを一刀で斬り捨てる

アンジェを連れて、追跡の魔法を頼りに追いかけて、山の中に入った。

もともとゼアホースは山間にある温泉地、切り拓かれて温泉街に開拓された場所を少し離れれば後はもう普通の野山だ。

山の中を追いかけて行った結果、目立たない山道に入ったところに洞窟を見つけた。

「見て下さいアレク様、洞窟です」

「うん、そうみたいだね。大人も入れるくらいの大きさで……結構深そうだね」

「この中なのでしょうか」

「うん」

頷き、追跡魔法で表示したレーダーをアンジェに見せる。

「なくなった浴衣は間違いなくこの奥にあるよ」

「では入りましょう!」

「そうだね………………ううん」

「え?」

「僕が先に入るよ、アンジェは後ろからついてきて」

「分かりました」

アンジェは素直に私の言葉に従った。

私は背中の賢者の剣に手をかけつつ中に入る。

数秒遅れて同じように洞窟に入ってきたアンジェは。

「あれ?」

「どうしたのアンジェ」

「今、何か変な感じがしました」

「うん。それは僕が結界を張ったからなんだよ」

「結界を? どうしてなんですかアレク様」

「何があるか分からないからね。中にいるものを逃さないため……なのと、温泉街の人が偶然迷い込まないようにするためだよ。この件が解決するまでね」

「なるほど! さすがですアレク様」

納得したアンジェを連れて、奥に進んだ。

洞窟の中は明かりとかなくてものすごく暗かったから、光の魔力球を作って道を照らした。

「むっ、止まってアンジェ」

「どうしたんですか」

「あれ、見える?」

「えっと……あのどろどろしたものですか」

「うん、あれは毒だね」

「えええ!? ど、どうしましょうアレク様」

「あの髪飾り持ってる?」

「もちろんです! アレク様から頂いたものですから」

「それを軽く口にあてて」

「どうしてですか?」

「それの物理的な作りは一部賢者の石を参考にしてるんだ、口に含んでいる間はあらゆる毒を無効化出来るんだ」

「そうだったんですね! 分かりました! あっ、でもアレク様は?」

「賢者の石って言ったでしょ」

私は賢者の剣――オリジナルの賢者の石に触れながらにこりと笑った。

それを見たアンジェはハッとして、「てへっ」って感じで苦笑い。

「そうでした!」

「じゃあ進むよ」

「はい!」

洞窟の空気中に充満している毒を無効化しつつ、更に奥に進む。

髪飾りで感じる(、、、、、、、) アンジェの体調に常に気を配りつつ、洞窟を進む。

「アンジェ目を閉じて!」

「――はい!」

私の横で、アンジェがきつく目を閉じたのが分かった。

改めて前を見る。

暗がりから現われたのは二足歩行の、まがまがしい姿のモンスターだ。

「ど、どうしたんですかアレク様」

「鶏の体に蛇の尻尾……バジリスクだね」

「バジリスクって……あのものすごい毒をもっているモンスターですか? あっ、そっか、目を見たら石になっちゃう……」

「よく知ってるねアンジェ、その通りだ。洞窟内に漂ってる毒はこいつの仕業なんだろうね」

「ど、どうしましょう。バジリスクって確か魔獣級っていわれるものすごいモンスターだって」

「大丈夫」

賢者の剣を抜き放ち、中腰に構えて、突進!

一瞬で距離を詰めて、剣でバジリスクを貫通した。

魔獣級なだけあって、剣で貫通させたくらいじゃ死ななかった。

むしろ逆上して、いきり立って襲ってこようとする。

「賢者の石」

(応)

剣になってから意志が強まった賢者の石。

単純な意志ならはっきりと示せるようになった。

その返事の直後バジリスクが内側から膨らみ上がって、一瞬で風船のように膨らんで――破裂した。

その余波で、生臭いものが辺り一帯に広まる。

「え、え、え? ど、どうしたんですか?」

「もう大丈夫、目を開けても平気だよ」

「はい……わっ、モンスターが弾けてます」

「賢者の石の力を内部で解放したんだ。命の力に弱いからねバジリスク」

「なるほど! さすがアレク様です!」

「ぐふっ、待っていた、待っていたぞこの時を」

「だ、誰ですか!?」

急に聞こえてきた謎の笑い声。

アンジェが反応して、慌てて周りをくるりと見回す。

笑い声がしばらくこだまして、暗がりから何者かが姿を現わした。

「牛の頭に人の体……み、ミノタウロス!?」

「そうみたいだね」

現われたのはアンジェが話したような、牛の頭に筋肉質な人間の肉体、全身が赤銅色のモンスター。

ミノタウロス、そのものだった。

これまたかなり強い、魔獣級のモンスターだ。

そいつの足元にずたずたにされた浴衣が転がっている。

「ぐふっ、やっぱり子供だったか。あれに食いつくのは間違った正義感のバカか、それとも怖い物知らずの子供のどっちかと思ってたが、大当たりだな」

「じゃあ、ゼアホースで色々起きたのあなたの仕業」

「ぐふっ、そうさあ。俺様ほどの男がなんでこんな所にいるか分かるか? それはな、ここの結界に封印されてるからなんだよ。中からは破けねえ、強い力にしか反応しねえって言う、冗談みてえな結界のせいでな」

「イタズラは使い魔とかにでもやらせたの?」

「ああ、人間がここに入れば結界がとける。そのために色々やって誘ったのよ」

「なるほどね」

「後はてめえらをぶっ殺して、ここを出るだけだ」

「……あっ」

私の後ろでアンジェが声を上げた。

何かを急に思い出したって声だ。

「も、もしかしてアレク様……」

「ピーンポーン、大当たりだよアンジェ」

「わああ……すごい、すごいですアレク様。そっかそうだったんですね」

「だってさ、入った瞬間に結界が破れるのを感じたんだ。結界があるって事は、破けたままにしたらまずいでしょ」

「はい! そっか、だからあの時一瞬アレク様が何かを考えて先に入ったんですね」

「そういうこと」

予想以上に私の行動をよく見ていたアンジェ。

そこに彼女の気持ちを感じて、ちょっとだけ嬉しくなった。

「何をくちゃべってるかガキども!」

「たいした事じゃないよ、ただ単に」

ミノタウロスの目をまっすぐみて、宣告するように言った。

「もっと強い結界を新しく張っただけだよ、入って来たときに」

「……なっ」

絶句するミノタウロス。

まさかそんな事になるとは思っても見なかった顔だ。

が、すぐに我に返る。

「ぐふっ、だったらてめえを痛めつけて解除してもらうまでよ。中に入ってきたのが運の尽きだな」

「ううん」

私は首を振った。

「ここに入ってきたのはね」

「はあ――――――えっ」

次の瞬間、ミノタウロスの首が宙を舞った。

そいつの反応速度よりも速いスピードで踏み込んだ私が、賢者の剣を振り抜いて、切りおとした。

「この程度のモンスターなら勝てる、って思ったからだよ」

アンジェの体調が分かるのと同じように。

浴衣に触れていたミノタウロスの戦闘力も、ある程度把握していたのだ。