軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08.善人、農業改革をする

時が流れて、私は9歳になった。

賢者の石で効率的に勉強が出来るようになって時間が余ったこともあり、また、副帝に任命されてエリザのために何かしたいって思う様になったこともあって。

私は、少しずつ父上の領地統治を手伝うようになった。

この日も屋敷から二日ほどの距離が離れた、サイケ村という所に来た。

収穫の季節、ダブついた作物の買い取りのためだ。

村の畑に積み上げられた、余剰分の作物をまとめて袋に吸い込む。

「な、なんダスかそれ」

この村の村長、ダニーと名乗った男が盛大にびっくりしていた。

アレクシステム(やっぱり恥ずかしい)が出来た後、この村は今回が初めて豊作になったため、これをみるのが初めてだ。

「魔法で収納したんだ、じゃなかったら僕一人で来てないよ」

「な、なるほどダス……」

ダニーは驚きつつも納得した。

私は袋を見た。

魔法の収納袋に吸い込んで、永久備蓄した農作物はかなりの量だった。

1000人くらいの街だったらまる一年分はあるという量。

あれから二年、発案した責任者という意味も込めて私が買い取りを担当した。

二年の間で相当の量にまで。

「すごいダスな、やっぱりお貴族様はワスらと違うダス。魔法でそんなことが出来るなんて考えもしなかったダス」

感動してるダニーに微笑みながら、別の袋――魔法効果の無いただの小袋を彼に渡した。

「はい、これは代金ね」

「ありがとうございますダス」

ダニーは袋の口を開けて、中身を確認して――別の意味で感極まった。

食糧の備蓄を担当して分かるようになったこと、農民はこういう臨時収入が入る機会が本当に少ない。

牛とか鶏とかを飼ってる農家ならちょこちょこ牛乳や卵で収入があるけど、畑だけの農家ならワンシーズンに一回、収穫の時期にしか収入がない、なんてのもあり得る。

それもあって、父上――カーライル公爵家が余剰の食糧を買い取る政策はものすごく歓迎された。

「ところで……あっちのはいいの?」

私は少し離れた所に出来ている小山を指さした。

高く積み上げられたのはどうやらジャガイモのようだ。

「ああ、あれはダメダス。腐ってるものダスよ」

「腐ってるんだ?」

「ダス」

ダニーはそう言って小山に近づいていった、私も後を追った。

小山のそばにやってくると、彼はいもを一つとって、私に渡した。

「本当だ、腐ってる」

「作物はみんなばらばらに育つダス、一番多く収穫できる時期にすると、どうしてもせっかちなのがもう腐った後になるダスよ」

「そうなんだ。じゃあこれは捨てるの?」

「んにゃ、肥料にするダスよ。このまま腐らせて、土の養分にするダス」

「なるほど」

「最近は肥料が足りなくて、これも重要な財産ダス」

「肥料足りてないの?」

「本当に領主様さまさまダス」

ダニーはまたまた私に頭を下げた。

どういう事なんだろう。

「領主様が余った分も買い取ってくれたからダス、もともと余ったのも腐らせて肥料にしてたダス」

「そっか」

「そのせいで肥料が足りなくて嬉しい悲鳴ダス。これも次の種まきまでに肥料にならないから密かに困ってるダス」

「腐るのが間に合わないの?」

「ダス」

頷くダニー。

その顔は本気で困っている顔だ。

「だから次の収穫は多分減るダス」

「……肥料になるのが間に合えば、収穫が上がる?」

「そりゃ上がるダスが……」

なんで? って顔をで私を見た。

私は少し考えて。

「ちょっと待ってて」

とダニーに言った。

魔法を使う、瞬間移動の魔法。

体が空中に引っ張られる、ものすごい勢いで|空に向かって落ちていき《、、、、、、、、、、、、》、放物線を描いて頂点に達した後、今度は地面に向かって普通に落ちた。

一瞬でカーライルの屋敷に戻ってくると、庭にアンジェとカラミティの姿を見つけた。

「あっ、アレク様お帰りなさいです」

「ただいま。またカラミティに練習相手になってもらってるの?」

「はい!」

アンジェは無邪気に頷いた。

「もっともっと治癒魔法を磨いて、守護竜様も治せるようになります」

「そうか、頑張ってね」

「はい! えへへ……」

いつもの様に頭を撫でてあげると、アンジェは嬉しそうに目を細めた。

アンジェは努力家だ、この分ならそのうち、本当にカラミティの耐性も突破するほどの治癒魔法を使えるようになりそう。

そうなったら世界一の治癒術士だ。

しばらく撫でた後、本来の目的を果たすべく、カラミティに話しかけた。

「カラミティ、悪いけど、爪をもう一本くれないかな」

「造作も無いことだ、主よ」

カラミティはまったく躊躇なく、爪を折って私にくれた。

それを受け取って、魔法を使って、前と同じように魔法の収納袋を作る。

「ありがとうカラミティ。アンジェも頑張ってね」

「はい! アレク様もお仕事頑張ってください!」

愛らしいアンジェと忠誠心100%の武人っぽいオーラのカラミティに見送られて、再び瞬間移動魔法を使って、サイケの村の畑に戻ってきた。

「わわ、どこ行ってたダスか」

「ちょっとね。それよりも、この村で一番魔力が低い人って誰かな」

「魔力ダスか? それならワスダス」

「一番?」

「一番ダス」

ダニーははっきりと頷いた。

農業で身を立てているからか、魔力が低いということを特に気にしてはいないようだった。

「分かった、じゃあこれをあげる。ここに十本の指を順番に押していって」

「はあ……こうダスか?」

ダニーは私の指示通り、袋の一点に、十本の指を順に押していった。

「うん、これで登録完了。これでこの袋はあなたの持ち物になったよ」

「はあ……で、なんダスかこれ」

「そこのイモを一ついれてみて、いれたらすぐに取り出していいよ」

「こうダスか……うええええ!? い、一瞬で腐ったダス」

「うん。それで肥料になる?」

「な、なるダスが……おお、腐り始めのもいれるとすぐに腐るダス」

ダニーは次々とイモをいれて、腐らせて取り出して、興奮していた。

その袋は、私が使ってる魔法の収納袋とまったく同じものだ。

魔力が膨大な人間が使えば中の時の流れが止まって備蓄物は腐らないが、逆に魔力がほとんどない者が使ってしまうとものすごい速い速度で腐ってしまう。

それを利用して、肥料生産用としてダニーに渡した。

「これなら肥料も間に合うね」

「はいダス! ありがとうダス! これでもっともっと収穫が増えるダス」

「頑張ってね」

「貴族様はワスらの神ダス!」

ものすごくお礼を言われた。

この一件の後、サイケの村に限らず、ほかの村も余剰分買い取りのおかげで肥料が間に合ってない事を知った私は、袋――肥料生産機を量産して農村に配った。

次の年、カーライル公爵領の収穫高が更にあがって、農村にちょっとしたバブルが到来したのだった。