軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05.善人、守護竜の石化を解く

次の日、私は一人で王宮に向かった。

帝都に来てしばらく経つ、そろそろいったん実家に帰らないとと思った。

私はカーライル男爵家――違った、カーライル副帝家の当主。

出立の際は、皇帝陛下に挨拶しなきゃいけない。そうしないと父上、カーライル公爵家にも迷惑がかかる。

まあ、それ以前に。

普通の人でも帰るときは旅先で世話になった人に挨拶するものだから、エリザに一声掛けないとって話だ。

だから王宮にやってきて、陛下への謁見を申し出たが、エリザじゃなくて、顔を見た事のある大臣がでてきた。

「えっと……」

「ライツと申します。副帝殿下」

「ライツさん。陛下はどこに?」

「陛下は王宮にはいらっしゃいません。今朝、守護竜様のところにお出かけになられました」

「守護竜……たしか帝国の建国の際に、初代皇帝陛下にお力を貸したという……?」

「さようでございます」

大臣・ライツははっきりと頷いた。

帝国には守護竜伝説がある。

建国のエピソードとして歴史にも残っているが、半分伝承となってるものだ。

なぜなら、建国を境にその守護竜は一度も姿をみせていないからだ。

本当は箔つけとはったりだったんじゃないか、という歴史家もいる。

「本日は月に一度の神事、守護竜様に祈りを捧げにお出かけになったのです」

「そうだったんだ……」

「その陛下より言付けが。副帝殿下が希望するのなら、場所を教えてもいい、と」

「えっと……じゃあ教えてください」

ライツに場所を教えてもらい、私は飛行魔法で向かった。

瞬間移動の魔法とは違って、鳥くらいの速さで空を飛ぶ飛行魔法。

それでも馬や馬車よりもずっと早い。

空を飛んで、守護竜とエリザがいる場所に向かった。

時間にして一時間弱、草原の上をまっすぐ飛んでいると、遠くに神殿の様な建物が見えてきた。

神殿の入り口を兵士の一部隊が守っていたので、私はその兵士達の前に着地した。

「副帝殿下!」

兵士の一人――おそらく隊長の男が私を呼び、それとともに全員が一斉にひざまずいた。

「楽にしていいよ。みんなも、陛下を守るのが一番大事だから僕に礼はいらないよ」

「はっ!」

隊長の男が代表して応じると、兵士達はまた一斉に立ち上がった。

すごく訓練された、一糸乱れぬ統率。さすがだ。

「ところで陛下はいらっしゃるの?」

「はっ。殿下がおいでになったとき通せと仰せつかってます」

「神事だよね。入るタイミングとかは?」

「いつでもいい、とおっしゃってました」

「わかった、ありがとう」

隊長の男にそう言って、神殿の中に入る。

「おぉ……」

足を踏み入れた途端、外との空気の違いに身震いした。

今まで一度も感じた事の無い空気。

神秘的で、厳かな。

そんな不思議な空気が充満していた。

私は気を引き締めて、神殿の奥に向かった。

長い道を抜けると、祭壇がある巨大な空間に出た。

エリザが一人祈りを捧げていて、そのエリザの前に巨大な竜の石像があった。

「これが守護竜様……」

「来たのねアレク」

エリザは顔を上げて、振り向いて私に微笑んだ。

「ごめん、邪魔だった?」

「そんな事ないよ」

エリザが大丈夫と言ってくれたので、私は彼女のそばに近づいた。

広大な空間に二人っきり、靴音がやけに響く。

「すごい石像だね、もしかして最初の皇帝陛下が作ったの?」

「違うよ、これ、守護竜様ご本人」

「ご本人?」

「うん。なんでも帝国を作りあげた時に色々あって、それで石化させられたって。以来そのままらしいんだ」

「そうなんだ」

石化か。

目の前にいる巨大な竜の石像を見あげていると、私の懐が光った。

「アレク? 何それ?」

「これは……」

賢者の石だ。

私が肌身離さず持っている賢者の石が勝手に光った。

意志を感じる。

珍しく、賢者の石の方から私に語りかけてきた。

それは、石化解除の魔法の使い方だった。

「ふんふん、なるほど」

「なるほどって、何が?」

「ごめん、ちょっと下がっててエリザ」

「えっ? うん……」

なんだか分からないけどアレクの言うことなら――って感じで、エリザは数歩下がってくれた。

私は改めて竜の石像を見た。

賢者の石から教わった魔法を一度頭の中で再確認してから、手をかざして魔法を使う。

「ちょっと? アレク何をするつもり?」

「石化をとくんだ。守護竜様だし、解いた方が帝国のためだよね」

「えっ? なに言ってるのアレク、そんなの無理――」

訝しむエリザ、その間に魔法が発動した。

かなりの魔力を持って行かれて脱力感が私を襲うが、その魔力は無事魔法を発動して、光になって竜の石像を包み込んだ。

やがて、守護竜の石化が解かれる。

石像だった見た目が、徐々に生物らしい、普通の鱗に戻っていった。

目も、石像だったときと違って、徐々に光がともる。

一分もしないうちに、石像から完全に竜の姿に戻った。

守護竜様はドシン! と地面にうつ伏せで倒れたが、寝息を立てていた。

ここで寝息とはちょっと気が抜けるが、石化が解かれたという証拠でもあるから、私は成功した事にほっとした。

そして、エリザに振り向く。

「……」

「どうしたのエリザ? そんなに驚いた顔をして」

「そりゃ……驚くわよ」

「驚く?」

私、なんか変な事をしたのだろうか。

「だって、竜の石化だよ? ドラゴンほどの生物をずっと石化させたままにするのって、神に匹敵するほどの魔法だってずっと言われてきたもの。だから守護竜伝説は嘘だっていう人もいるくらいなのに」

そういえばその説もあったな。

「でも本当なのよここ。だって、普通の魔法使いが何十人も石化解きに挑戦したけど、魔力が足りないから、根こそぎ魔力を取られる事になっただけで死んでったの。それをアレクがあっさり解いてしまった……」

「えっと……」

「さすがアレクね……」

納得するエリザは、熱い目で私を見ていた。