軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.善人、皇帝と信頼関係を築く

「じゃあシャオメイ、これをお願い」

「はいっ……えい!」

テントの中、私が渡したリファクトの箱に、シャオメイが魔法を掛けた。

黒くて長い、艶やかな髪がふわりとなびき、高まった魔力が形を変えてリファクトに定着していく。

瞬く間に、リファクト製の箱が凍結されていった。

「出来ました、アレクサンダー様」

「どれどれ……うん、永久凍結は成功してるけど、ほらここ」

箱をシャオメイに見せて、その一角を指さして指摘する。

「あっ、氷の塊が……」

「うん、出っ張りが出来ちゃってるよね。出来ればこんな感じで――」

私は別の箱を手に取って、その箱に同じように永久凍結の魔法を掛けた。

一部凸凹が出来てしまったシャオメイのものに比べて、私のはまんべんなく、箱の表面に均等な氷の膜を張った、という形になった。

「つるつるにして欲しいんだ。これは実用品になる予定だから。ほら、お茶碗だって磨き損ねて一部突起が出来たら使いにくいでしょ」

「は、はい! そうですよね」

「ちなみに完成形がこれ」

そう言って、あらかじめ用意しておいたコップをシャオメイに差し出した。

「これは……?」

首をかしげるシャオメイ。

それもそのはず、私が差し出したのは、見た目だけで言えばなんの変哲もない、氷水がはいったただのコップだ。

「ちなみにこれ、そそいだのは昨夜だよ」

「ええっ!? でも氷が残ってます」

「うん、だから完成形。この箱と同じように、リファクト製のコップそのものに、永久凍結の魔法を掛けた。見えないくらい、薄皮一枚でね」

「アレクサンダー様……すごい……」

目を丸くして、驚嘆するシャオメイ。

「これと同じように、見た目じゃ分からないくらいの永久凍結を張るのが目標。こういう箱とか、場合によってはもっと大きい箱にね」

「……夏、ですか?」

箱を手に取って、少し考えたあと、シャオメイが聞いてきた。

「すごいねシャオメイ、さすがだ」

私がちょっと動いたが、やめた。

出会ったときはまだ幼げな少女だったシャオメイも、今やすっかり成長した、大人びた空気を纏う美女予備軍まで成長している。

ほめるために頭を撫でる、ような年頃ではない。

だから、代わりにもっとほめた。

「魔法だけじゃなくて、頭の回転もピカイチだ」

「あ、ありがとうございます」

照れるシャオメイ、私は箱の一つを取って、話を続けた。

「そう、夏。夏って食べ物にあたる人がおおいんだ。それは食べ物が腐るから。でも、永久凍結をリファクトの材質に覆って、それで箱を作れば――」

「――絶対に温かくならない、でも凍って使えなくなることもない保存庫になる」

「そう。冷凍までは行かない冷蔵――冷蔵庫が出来るって訳だね。これが出来れば食中毒の類が格段と減ると思うんだ」

そう言って、今度はシャオメイを見つめる。

信頼と、期待。

その二つを眼差しに載せて。

「リファクト素材に薄く、しかも簡単に貼れる魔法と技術の開発をシャオメイにお願いしたい」

「な、なるほど」

更に、とどめに一言。

これを微笑みながら言う。

「アヴァロンの夏は、シャオメイに掛かっているよ」

「――っ! がんばります!」

シャオメイが出て行った後のテントの中。

入れ替わりに、お忍び姿のエリザが入ってきた。

「アレク」

「うん?」

「あれが完成したら、帝国にも売って」

「売って? いや提供するよ? 最初からそのつもりだし」

「ううん、売って」

エリザはきっぱりと言い放った。

この顔は知ってる。

アヴァロンに行けと言ったときと同じ顔。

『歴史にそなたの名を刻みこめ、余はそれが見たい』

その一言を放ったときとほとんど同じ顔だ。

それで彼女の狙いが分かった。

副帝アレクサンダー発のすごいアイテムだと喧伝したいのだな。

「ありがとう」

「なんでお礼をいうの?」

「鑑定眼、というべきなのかな。あるいは本質を見抜く能力。エリザのそれは信頼出来る。エリザにそう言われると、これが成功しそうだって思えてくる」

私がそう言うと、エリザは目を見開いて驚き、それから頬を赤らめて顔を背けてしまった。

「わ、私だって見当違いの時があるわよ」

「ううん、僕は信頼してる。エリザの事を」

「私、を?」

「そうだね、エリザが僕を信頼しているのと同じくらい」

スルッと出てきた言葉だが、言った後「ああそうだ」と思った。

そうだ、間違いない。

私はエリザを信頼してる、それは、エリザが私を信頼しているのとほとんど同じくらい。

それは、自信を持って言える。

だからそれを伝えるために、エリザを真っ直ぐ見つめた。

すると、彼女はますます顔を赤くして、そっぽ向いたままで。

「……頑張るわよ」

と、つぶやくように言った。

普段とは違う恥じらうエリザを可愛いと、不意に思ってしまったのだった。