軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19.善人、絶対完璧な変装をする

翌日の朝、テントの中。

私は手を止めて、考え込んでいた。

「アレク様、どうしたんですか?」

顔を上げる。

不思議そうな顔のアンジェと、メイド姿のエリザが私を見つめていた。

「おはようアンジェ、エリザ。ちょっと考えごとをね。ほら、昨日の税金の話」

「あれがどうかしたんですか」

メイドの口調ながらも、今度はエリザが聞いてきた。

帝国皇帝でもある彼女は、メイドモードの最中だろうと気になる話みたいだ。

「あれって本当なのかなって」

「……ご主人様に取り入るための虚言かもしれない、と?」

「僕色々やってきたから、どういう人間なのか、周知されてるはずだからね。そういういかにも『僕好み』なのを持ってくる人がいてもおかしくないと思って」

「それはないと思いますが……」

エリザは控えめに否定する。

「あっ、じゃあこうするのはどうですか?」

アンジェはニコニコ顔で手を合わせて、提案してくる。

「いつものお姉様みたいに、お忍びで本当かどうかを見てくるんです」

「なるほど」

それはいい手だ。

と言うより、ここで考えてても結論がでる訳ではない。

実際に民衆の様子を見て判断するしかない話だ。

「よし、行ってみよう」

「私も連れて行ってくださいご主人様!」

「エリザも? そうだね、一緒に行こう」

エリザには思うところがあるみたいだから、連れて行って実際に見せた方がいい。

となると……せっかくだから。

「アンジェも一緒に行く?」

「はい! ご一緒します!」

笑顔で即答するアンジェ。

こうして二人を連れておしのびで視察をする事になったが、問題は変装だ。

私の事を見抜かれないような変装がいる。

となると……。

「これがいいかな」

私は荷物の中から薬瓶を取り出した。

蓋を開けて、中身を自分の手のひらに出す。

赤と青の丸薬、計三つだ。

「これは何ですか?」

「大昔の魔女が作り出したと言われる薬。これを知らなければ、絶対に分からないレベルで変装出来るすごい薬だよ」

「そんなにすごいんですか!?」

「うん。エリザから試してみる?」

「いただきます」

エリザは私の手から薬を一つ、赤いのを取って、躊躇なく呑み込んだ。

直後――ポン、と可愛らしい音がして、エリザの体が縮まった。

布地の多いメイド服の上からでも分かる均整のとれたプロポーションが一変して、幼女のそれにかわった。

「お姉様!?」

いきなりの事に驚くアンジェ。

それに比べて、エリザは落ち着き払ったものだ。

体が縮まったことでずるりと床に落ちたメイド服がぎりぎりで裸体を隠せている中、彼女は実に冷静に。

「体が縮む、確かにこれを知らなければこの上ない変装ですね」

「そういうことだね」

「赤が縮む、と言うことは……?」

私を見あげるエリザ。手のひらには青が二つ残っている。

「うん。アンジェ、これを」

「わかりました――ひゃう」

青い薬を受け取って、こちらも躊躇なく飲み下すアンジェ。

彼女は逆に成長した。

既に第二次成長期を迎えた後のアンジェ。

身長は少しだけ伸びて、代わりに全体の雰囲気がぐっと大人っぽくなった。

可愛らしい美少女がそのまま、可愛らしい年上のお姉さんって感じになった。

ただし服はびっちりで、破けはしなかったがへそなど露出が多くなって、色気を出していた。

「わあぁ……」

「そして僕」

私も薬を飲んだ。

男女の差で、まだ成長前の私。

同じ青い薬でも、私はアンジェ以上に大きくなった。

声変わり前の少年が一気に青年って感じになった。

服はいつも通り。

これは私が戦闘することが多いから、頑丈な素材で作っており、伸びる分にはまったく問題のない代物だったから、服もろとも大きくなった風に見えた。

「これででかければ僕たちだってばれないね。僕とアンジェはそのまま夫婦でいいね」

「はい! アレク様!」

「呼び名は変えてね」

「はい! えっと……どうしましょう……あっ」

アンジェはハッとして、手を合わせたまま笑顔で。

「あなた。で、いいですか」

そう呼んでくるアンジェの姿はすごく可愛かった。

「うん、そうして」

嘘ではないからアンジェは呼びやすいし、バレもしないいい呼び方だ。

次はエリザに目を向ける。

初めて彼女と出会ったときよりも更に幼くなった姿。

はじめて目にする、幼いエリザ。

私とアンジェが成長した分、プラスマイナスで入れ替わっている感じ。

「そういえば、アンジェとエリザって、普段から手をつないだりする?」

「はい、お姉様が お姉様の時(、、、、、) は」

「そっか、それをちょっとやってみて」

「分かりました。お姉様」

「うん」

大人アンジェと子供エリザ、二人は手をつなぐ。

今の二人の姿を絵にして額縁に入れれば、「幸せ」というタイトルがつくだろう。

それくらい、微笑ましい母娘に見えた。

「僕たちの娘くらいだね」

「むすめ……」

「夫婦と、一人娘。この設定でいこう」

「はい!」

「……ん」

笑顔のアンジェ、うつむき加減で頬を染めるエリザ。

うん、これなら絶対に正体がばれないな。