軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02.善人、超高度な魔法を披露する

次の日、私はエリザに呼び出されて、一人で王宮に向かった。

昨日と同じ場所、華やかな庭園に通された。

そこで私を待っていたエリザは、心なしか着飾っているように見えた。

帝服ではなく、年頃の少女に似合う美しいドレス。

綺麗なエリザが纏う綺麗なドレス、私は思わず――。

「綺麗だね、その格好」

「そ、そう? 別にこんなの普段着だし?」

エリザは何故か顔を赤らめ、声も上ずっていた。

そんな振る舞いをしていてもあまりある魅力さ。

思わず見とれそうになる、呼び出されてそれでは失礼だ。

私は気を取り直して、エリザに聞く。

「今日はどうしたの? 僕を呼び出したりして」

エリザはゴホン、と咳払いして、気を取り直して言った。

「魔法学校の名誉校長をやって欲しいの」

「魔法学校?」

「知らない?」

「聞いた事はあるけど、詳しくは」

「そう」

エリザはにっこりと微笑み、説明をしてくれた。

「都の郊外にある魔法士官と魔法兵を養成する学校の事よ。存分に魔法の実習が出来るように都や街から徹底的に遠ざけて、実戦の為に近くにモンスターがいるダンジョンもある」

「かなりスパルタな所に聞こえるね」

「そうね、厳しいわね」

「そこの名誉校長に、ってことだよね。どうして?」

聞くと、エリザは少しトーンを落として、真顔で続けた。

「あそこは万が一クーデターや反乱軍に都を落とされたとき、皇帝かその跡継ぎが逃げ込んで、戦力を整えて再起するための要塞としても作られてるの。いわば皇室の最後の砦ね」

「そっか」

それなら分かる。

最後の命綱だから、副帝である僕を送り込もうって訳だ。

エリザは、僕を「長持ちする右腕」にしたがってるから。

「分かった。でも名誉校長と言っても何をすればいいの?」

「まずは顔見せ、それから季節ごとのイベントに出る。それだけでいいから」

「それでいいの?」

「副帝という立場ならね」

「わかった。そういうことなら引き受けるよ」

「ありがとう」

エリザが嬉しそうに微笑んだ。

やっぱり、ドレスがよく似合っていた。

都の郊外。僕は馬車に乗って、魔法学校にやってきた。

エリザの説明した通りだった。

魔法「学校」と名前はついているけど、遠くから見たら野外にひっそりと佇んでいる砦にしか見えない。

高低差による地の利や、籠城になったときの水源も近くに確保している。

橋など進行ルートを制限する作りにもなってる。

ぱっと見ただけでも、すごく考えて作られてるんだな、と分かる。

馬車が更に進んで行き、学校の正門前に到着した。

大人の一団が待ち構えていた。

男女合わせて百人近くいるその集団は、正門の向こう、学校の敷地内で整然と並んでいる。

私は馬車から飛びおりた。

初老の男が一人、進みでて私の所にやってきた。

男は成人男性の平均的な身長で、肉体がまだ七歳児の私を見下ろす形になったが、腰を屈んで低姿勢をみせている。

「魔法学校校長、イーサン・ハンドレッドと申します」

「アレクサンダー・カーライルといいます。よろしくお願いします。あちらの皆さんは?」

「はい、副帝殿下にお越しいただけると聞いて、集まった本学の教師達でございます。後ほど引き合わせさせていただければ」

「うん、わかった」

「では校内へどうぞ」

イーサンはそう言い、半身になって道を私に譲った。

私は歩き出し、正門をくぐろうとした。

ん?

なんでイーサンは私を見てニヤニヤしているんだ?

その表情はどういう意味――。

「あれ?」

くぐろうとした瞬間、イーサンの表情の事が頭から飛んだ。

思わず声が出てしまった。

正門をくぐろうとしたが、通れなかった。

かるくパチッ、と火花が散って、見えない壁が私を拒んだ。

結界、という言葉が頭の中に浮かんだ。

なるほど、確かに砦だ。

エリザの話じゃ最後の命綱ってだけじゃなく、普段から近くのダンジョンで、生徒達が魔法の実習をしている。

きっとモンスターが襲ってくる事もあるんだろう。

そういう場所なら、安全の為に学校の敷地を覆う結界も必要だ。

しかし、結界が必要なのは分かるけど、このままじゃ入れないし困るので、私は小玉サイズの魔力球をその場で作って、結界を破って中に入った。

パリーン。

ガラスが割れる様な音がした後、すんなりと通れた。

「「「えええ!?」」」

驚きの感情に満ちた声が聞こえてきた。

見ると、集まっていた教師たちが皆信じられないって顔をしている。

なんでだろう……と思ったらすぐに分かった。

モンスターを排除するための結界だ、考え無しに割ったのはよくなかった。

直さないと(、、、、、) 。

私は肌身離さず持っている賢者の石から結界の知識を引き出した。

せっかくだし、もっと強くて、モンスターだけ拒んで教師と生徒はすんなりと通れる結界を張ろう。

賢者の石から知識を引き出し、張り方を頭の中に展開する。

普段の魔法よりも強めにやって、魔法学校全体を覆う結界を張り直した。

ちゃんと張れたのを確認してから、校長に振り向く。

「イーサン校長」

「は、はい。なんでしょうか」

「学校全体を覆う結界を張り直したよ、教師と生徒だけ通れるようにしたけど、教師と生徒を証明する方法はあとで教えるから、みんなに伝えて」

私はそう言って、自分は正門から中に入ったり出たりして、小石を同じように結界に触れさせて、小石を消滅させた。

教師と生徒だけ通れる結界ってのを証明して見せた、が。

「――なっ!」

絶句するイーサン。

信じられない、なんてこと。

って顔をされた。

えっと……私、なにかまずい事をしたのか?

不思議に思ったが、反応がおかしいのはイーサンだけじゃなかった。

「おい誰だよ、コネだけで名誉校長になるお飾りの子供に恥をかかせてやろうって言い出したヤツ」

「それよりもこの一瞬で学校全体を守る結界? そんなの我ら全員でやっても不可能だぞ」

「お前達もっと話をよく聞け、教師と生徒だけ通れる、だぞ。対象を選別出来る結界なんて聞いた事もない」

「はったりじゃないのか?」

ざわざわする教師陣。

なぜかみんな困った顔をしていた。

……そうか、学校に出入りするのは教師と生徒だけじゃないよな。

特にこの砦になる学校だ、兵糧とか兵器の備品とか、物資を搬入出する者もいる。

この結界じゃ、そういう人達を通せない。

私は再び賢者の石に問いかけた。

ようはモンスターを弾けばいいんだ。

人間と動物は通して、敵意のあるモンスターだけ弾く。

そんな結界の張り方を賢者の石から引き出す。

さっきのより大量に魔力がいる。

ざっと全魔力の一割だ。

しかもさっきのを解除しないといけない、そのための魔力もいる。

ある意味「安物買いの銭失い」みたいなことになっちゃった。

でも、やらないと。

私はまず今の結界を解除してから、新たな結界を張った。

モンスターだけを弾く結界、分類としては神聖魔法になるそれは、薄く黄金色に輝く、ドーム状の見える結界になった。

ドーム状の結界ははっきりと視認できる物になって、わかりやすく学校の敷地全部を包み込んだ。

「張り直したよ、これで人間も物質も通れる、モンスターだけを防ぐことができる……よ?」

校長のイーサン、そして集まった教師達。

みんなが愕然と私を見る。

また……なにかまずい事をしたのか?