軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第89話 凛々しい顔

久々の牢屋ライフをそれなりにマルコ少年とエンジョイした僕は翌朝、

『もしも僕が死んだら…』

みたいな雰囲気で別れた皆がお屋敷に迎えに来てくれており、ちょっぴりだけど何故か微妙に恥ずかしかったのである。

まぁ、しかし、恥ずかしい思いをしただけで全員無事だったので今回は一件落着という事にした。

小太りボーイであるマルコ少年は、ちゃんとララちゃんとターニャちゃんに、

「ごめんなさい…」

と謝ってくれ、二人も、

「いいよ」

と許していたし、勿論ベルも少し嫌そうな雰囲気ではあるが、大人な対応でマルコ少年に、

「蹴ってゴメン…」

と謝り、マルコ少年も快く許してくれたのではある。

だけど、何故か僕を連れて来る様に命令されて宿屋まで来た騎士団長さんだけが、イデアさんから【敵】として認定されているらしく警戒モードのままで殺気の籠った視線を今も受けており、騎士団長さんが、

「あの…ジョン殿…護衛の女性の視線が…」

と僕に相談する程であった。

とまぁ、予定外のバタバタは有ったが、

「用事も済んだし…」

と、帰る予定を組もうとする僕たちにマーチン子爵様は数日後に改めて今回のメンバーでパーティーを開きたいとお願いしてきたのである。

「いや、お構い無く…」

とパーティーをキャンセルして帰りたかったが、マーチン子爵様が、

「頼む、町の有権者や息子とそのグラーナ狩りの師匠達に、私とジョン殿が仲良くしている姿を見て貰わない事には…」

と泣きつくので、パーティーまでの数日、

「では、マルコ少年をお借りしますね」

とマーチン子爵様に交換条件を出して、

「虐めない?」

と心配する子爵様や奥様に、

「勿論、タンカランダンジョンでウチのララちゃんとターニャちゃんと即席パーティーを組んで踏破を目指してもらいますが、踏破経験者の我々も同行しますし、しっかり我が家の一員としてお勉強もさせますので…」

と約束し、軽くタンカランまで行って鍛冶師のゴンザさんに弟子のバラッドさんと娘のキミーさんのカサールの町での暮らしぶりを報告し、ついでに、

「我が家で使う鉄なんかの金属が不足してるので集めるの手伝ってくれませんか? あと、こんな感じの物もバラッドさんと現在作ってまして…」

と、魔力供給魔道具の腕鎧部分を中心としたバラッドさんの描いた設計図を見せて我が家の職人チームとしてゴンザさんをスカウトする合間に、サクッとダンジョンを攻略する予定にしたのだ。

マーチン子爵様はかなり過保護でありマルコ少年のダンジョンチャレンジをずっと拒否していたのであるが、今回は僕たちのサポートと、奥様や長男さんからの、

「昔からの夢でしたし…」

という援護射撃と何より本人からの、

「頑張ってみたいのです!」

という強い希望に折れる形で許可が降りた。

そして晴れてマルコ少年は我が家のタンカランダンジョン未踏破チームに参加する事になったのである。

まぁ、いくらニルバ王国最難関とはいえ、初級ダンジョンではあるし、ララちゃんとターニャちゃんもバラッドさんの作ってくれた武器などをしっかり装備しているので大丈夫だとは思うが、問題はマルコ少年だけである。

実際にタンカランダンジョンへと我が家の幌馬車に乗せたところ、

「凄いや、ボク幌馬車なんて初めて!」

などと感激するし、マーチン子爵家からは護衛の騎士団すら今回はご遠慮してもらっており、

「荷物も自分で持つんだね」

などと、僕は内心、

『今までどんだけ過保護にされていたんだよ…』

と呆れる程に、グラーナで安定した収入が見込め、家の経済的にも安定した町の貴族のお坊ちゃまの感覚に目眩がしそうになったが、

『ある意味、貧乏貴族だった僕より恵まれ過ぎた分の不自由が有ったのかな?』

と、野放し状態だった昔の僕と、過保護でガチガチだったであろうマルコ少年を比べ、

『どっちも…どっちか…』

と、貴族というものを面倒臭く思うのであった。

さて、到着したタンカランダンジョンの方は過保護の箱入りお坊ちゃまと違い今日も全く問題はなく、僕たちが踏破した時よりお客さんが多くつめかけており、各階層の魔物も適度に間引かれている。

勿論、皆さん九階層のロックマンでゴーレムコアガチャに向かわれるので、どの階層も先客の冒険者の方にお願いすれば安全に魔物狩りと鉱石採掘の練習がばっちり出来る。

『初級ダンジョン最難関だったよね…ここ…』

と思える程に楽々進めてしまう。

そして、今回の目的のボスであるが、転移陣すら無く、皆さんの目的が九階層のロックマン君なのもあり、あまり順番待ちもなくチャレンジできた。

『至れり尽くせりだな…』

とまるでマルコ少年のダンジョンチャレンジの為だけに用意されているようなタンカランダンジョンのボス部屋では現在、固そうなトカゲ魔物相手にララちゃんとターニャちゃんとマルコ少年をメインに、タンカランダンジョンに潜った事がないイデアさんとバルディオさんをもしもの時の助っ人につけて、バトルの真っ最中である。

外で待つ僕としては、

『ウチの子…大丈夫かな?』

という保護者目線の気持ちと、

『頼むから怪我だけは…』

と貴族の息子に万が一が有った場合に処される危険にドキドキが止まらないのだ。

『バルディオさん、イデアさん…信じてますよ…』

などと祈る僕であったが、結局三人だけで見事にボスであるロックリザードを倒し、初回ボス討伐宝箱から出た魔鉱鉄のインゴットを、ララちゃんとターニャちゃんが、

「私達は鍛冶屋さんのバラッドおじちゃんが何でも作ってくれるから大丈夫だよ」

とか、

「ここにはバラッドおじちゃんの先生で奥さんのキミーおばちゃんのパパが居るからマルコ君も武器とかこれで作ってもらってよ」

という理由でマルコ少年にプレゼントしたらしく、彼は夢であったダンジョン踏破という経験と、そのダンジョンの宝箱から出たインゴットで作った武器というお守りがあれば、

『学校を卒業していない…』

などという気持ちの壁も乗り越え、立派な大人になってくれる筈である…多分…きっと。

しかし、

『本当に大丈夫かな?』

と僕が彼を信用しきれないのは、彼のご両親との約束である【お勉強】について、僕ではニルバ王国で教える歴史などは教えられなかったが、いくら教えても小太りボーイの計算力は我が家の女の子チームを遥かに下回っていた為に、

『うん…今後の彼の努力に期待しよう…』

と、一旦色々な事を教えるのは諦めてダンジョン攻略期間中は我が家の女の子チームのお勉強タイムに合わせて九九表を渡して筆算のやり方を伝えるだけに集中したのであった。

だが、それでもマルコ少年の物覚えの悪さに、

『本当にお勉強嫌いなんだ…』

と、僕の方が分からされた気分である。

という風に、ダンジョン攻略もサクッと終わり、タンカランの村にて久々に会ったゴンザさんは、キミーさんが居なくなり寂しがっていないか心配していたのであるが、

「アイツが居らんと隠れてオヤツを食べなくて良くなったからな…」

と、好きなタイミングで甘い物が食べられる喜びで前よりイキイキしては居る様子であったし、ベルの装備を見て、

「おっ、しばらく見ない間にかなり成長したな…どれ軽く調整してやろう…」

と言ってベルの装備を受け取りながらチラリとこ僕を見て、

「そっちは必要ないな」

と断言したゴンザさんは、作業をしながら、

「あの二人はどうせカサールでも朝からイチャイチャしておるんだろ?」

と、『やれやれ…』みたいな顔をしながらベルの装備を調整しているので、キミーさん達との別居が苦ではないらしいのだが、ただゴンザさんは、

「店番が居らんので奥で作業に集中が出来ないのだけが不満だが、あまり楽しい依頼も最近は無いからな…ほれ出来たぞ、これでも成長してキツく感じたら早めにバラッドのヤツに打ち直すか作り直してもらうといいからな」

と、ベルに装備を返しながらも、

「こんな装備を依頼する様な冒険者がほとんど来ないのだけがなぁ…ここは…」

少しつまらなそうにしていたので、僕はバラッドさんが描いた魔力供給魔道具の設計図をマジックバックから取り出してゴンザさんに見せると、

「魔法師が使う鎧か? なんか面白そうだな!」

と食いついてくれたので、

「まぁ、これからの話になるんだけど、マーチンの町は他の町にある錬金術師の工房にも顔が利くらしいから、この魔道具専門の錬金術師さんなんかがスカウト出来たらゴンザさんに鎧部分を頼むかもね…」

などと協力を求めるとゴンザさんは、

「すぐに必要な職人を集めてくれや、こっちはもうヤル気になっちまってるんだ!」

と鼻息も荒くなっていたので、とりあえずスカウトは成功である。

そして、ボスからドロップしたインゴットを渡して、マルコ少年のお守りとなる様な武器を依頼する。

ベル達が、

「これも使って下さい」

と、ダンジョンで手に入れたアイアンアントの素材などを渡すと、ゴンザさんはマルコ少年の体をチェックし、

「これ、坊主…少しは運動せんと…素材は有るから防具も作ってやりたいと思ったが、今のお前さんに合わせたら成長するとか以前に体重の変化で度々調整が必要になるわい…」

と呆れていた。

とまぁ、そんな感じで無事にダンジョンを踏破してマーチンに帰ってきたのである。

ゴンザさんに注文した一皮剥けるためのお守りとなる武器がまだ無いとはいえ、小太りボーイはダンジョンを踏破したという自信が芽生えたらしく過保護という殻を脱ぎ捨て、

「父上、母上…今戻りました…それと兄上、ボクに勉強を教えてくれませんか?」

と凛々しい顔で次の目標を見つけた様子に、ご家族は安心したようで、マーチン子爵様は、

「すぐに、一流の家庭教師を…」

などと、過保護スイッチをオンにしたのであるが、マルコ少年は、

「父上、ボクの先生はあまりにもボクが勉強嫌いで、未来にも希望を持てずに不真面目に授業を受けて居たのに呆れて帰られたデルトリア先生だけです…だから先生に認めてもらえる様に努力したいのです」

と自分の意見までハッキリ言えるお子様になった事をマーチン子爵様は顔から様々な液体を垂れ流しながら大変喜んでいたのであった。