軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第8話 そして追放へ

早いもので奉仕活動を続けること約2年、僕としては最近ようやく粘土掘りも、レンガ焼きも、レンガ積みにも馴れてきたというのに、少し残念にも感じるが囚人の皆さんの努力の結晶である町の大壁の補修が完了したのである。

ペアの町で入学前に頑張った畑での試行錯誤が役に立ち昨年末のポタタ畑をかなりの豊作に出来た事は、この収容施設に一番長く居る事になった僕が長期計画でじっくりと取り組んだ成果であるので、壁の修復よりも個人的には少し誇らしく感じている。

それと、何が楽しいのか熊耳オジサンのチームは釈放されたというのに定期的にここを訪れ、

「よう、まだ居るのか」

「この町がもうすぐ返還されるらしいな」

「ニルバ王国では既に代官が決まって住人の募集が始まってるぜ」

などと、冒険者として現在は全うに働き、この町に戻って家が持てる様に頑張っているそうで、近隣の情報をもたらしてくれている。

依頼のついでに倒した魔物の肉を世話になった看守さんやらに差し入れするのだが、どうやら彼らの本当の目的は、僕にペアの町の現在の事や国外追放となる未来を見越して周辺の事情を探っては、ワザワザ伝えに来てくれているのである。

僕をタコ殴りした熊耳のガインおじさんは釈放前に、

「なぁ、ジョン。 国外追放ってリント王国の外って事だよな…だったらこの町がニルバ王国に返還されたらよぉ、俺たちとここで暮らさないか?」

と誘ってくれた事が有った。

ガインおじさん達は看守さん達からの情報で、この町が占領されてからは家族の行方も分からない為に帰る場所がなく、クソ親父のハーレムやらエロ貴族の屋敷の地下などで発見されて現在はリント王国で保護されている娘さんが居る事を知り、その中で故郷に帰りたい娘さんを受け入れる為の勤め先兼住居を用意する計画らしく、そこで一緒に暮らす提案をしてくれたのであるが、僕としては、

『どの面を下げてその娘さん達の前に出て行けば…嫌な事を思い出すきっかけにしかならないよ…』

と考え、大変有難い誘いではあるが、

「いや…僕はこの町周辺からも離れようと思います…でも、ガインおじさんの娘さんもリント王国のどこかで保護されていたら良いですね」

と丁重にお断りしたのであった。

すると律儀にこうやって、何年も冒険者として住んでいたペアの町周辺から街道を通りニルバ王国までを行き来する形で冒険者としての仕事を受けて、

「ペアの町の新しい領主様はなかなかのやり手らしいな…」

とか、

「ここから東に向かうとニルバ王国のカサールって町だが、途中放棄された村なんかがいくつもあり、戦場となった場所があるから盗賊やら柄の悪いヤツが多く、戦場から拾ってきた壊れた武器や防具なんかのガラクタを売って生活している連中の溜まり場になっているから安全にニルバ王国に入るなら一回南に迂回した方が良いぜ」

などと、近い将来には何処かに旅立つ僕の為に僕が必要としている情報を届けてくれていたので、

『ドンとこい、追放!』

という気分でいたのであるが、いざ本当に壁が直り追放の時期が来てしまうと、

『わぁ~…ど、どうしよう…毎日の奉仕活動で筋力はついたと思うけど…まだスライムとバッタの親分みたいな虫魔物しか倒したことが無いぞ…』

と焦ってしまう。

そして特に何の解決策も浮かばぬまま運命の日がやってきたのである。

リント王国には国外追放のルールがあり、僕の場合は、お取り潰しの際に家財没収という罰も入っている為に、ここに送られて来た時に着ていた学生服すら没収されており、囚人用の作業着がリント王国よりプレゼントされ僕の追放用の衣装となる。

あと追放の時に手ぶらでは流石に可哀想だからなのか、

【収監中に支給された固い手触りの毛皮の毛布】

【皮袋】

【パン1個】

【小石サイズの岩塩】

【質素なナイフ】

という追放セットが支給され、追放の日時すら本人は勿論、誰にも明かされず、追放者に協力する者にお金等を届けさせないという徹底ぶりである。

『まぁ、財産を没収されて国から叩き出される奴が他国で不自由なく暮らすなんて気にくわないのは分かるが…これでは他国の村か町に到着出来るかも怪しいぞ…』

と思える追放セットを渡された僕に、

「3032番、只今をもって刑期を終了する」

という看守長さんの声と同時に、最後まで僕を気にかけてくれていた看守のお兄さんが駆け寄り、

「長い間お疲れ様…ジョン…」

と、初めて僕の名前を呼んでくれたのであった。

そして看守のお兄さんは少し笑いながら、

「さぁ、王国法によりここから暫くは目隠しをして貰うから…」

と言って僕の顔に袋を被せてから、

「さてジョン、1~4の数字の中から1個選んでくれ」

というので、この場所で過ごした年数である【2】を選んだのであるが、僕としては、

『えっ?なに…怖い…何が起こってるの!?』

と不安しかなく、更に被った袋により視覚情報が遮断され、その不安が膨れあがる一方である。

すると、

「カン、カラカン」

という乾いた音が聞こえたかと思うと、少し離れた場所から、

「4番だな」

との声が聞こえると、僕の隣の看守のお兄さんは、

「え~っと、選んだ2番が北だから3が東で4は…南か」

と呟いたかと思うと、

「では、これから南の国境まで我々が護送する…それまでは目隠しをしたままとなる」

というのでどうやら追放する時のルールとして棒等を倒して追放する方角を決めたらしく、僕はその後、目隠しをされたまま荷馬車に乗せられ運ばれたのである。

しかし、不思議な事に荷馬車に揺られる事数分…

「よし、一番近い南の国境だ」

と言う声と共に僕の頭の袋が外されると、そこは町の南門であり、

「ん?」

と僕が変な声を出しながら首を傾げていると、看守のお兄さんは、

「プッ…何だその顔…」

と吹き出した後に、少し真面目な顔に戻り、

「リント王国側の西の街道の方の出口だったならば道がカーブしている所まで移動したが、それ以外はこの町の外は現在ニルバ王国に返還手続き待ちの空白地扱いだからな…法律通り国境となる…」

と説明してくれながらも他の看守さん達もニヤニヤしながら、

「では、長旅…ぷっ…ご苦労様でした」

とお作法通りのセリフなのか、ここからなら目をこらさずとも余裕で出発地点が見える距離を「長旅」と言い、

「これより自由の身になりますが、再度の入国は出来ません…もしも国内に居る所を発見した場合は王国法により…」

と流れる様に台本通りのセリフを一通り述べ終えると、

「はい、護送任務おわり」

という合図と共に僕を護送?…した四人の看守さんは脱力し、

「後で仲間に自慢してやろう、国で一番短い追放者護送を担当したって…」

などと笑い、

「いやいや、普通なら国境の町でお疲れ様の一杯がリーダから振る舞われて1日の休暇が貰えるけど、これじゃあ、歩いて帰っても今日の業務に間に合うよ」

などと愚痴り、リーダの看守さんは、

「壁も直って囚人も半数以上釈放や別の施設に送ったからやることも特に無いだろう…酒ならオレの秘蔵の奴を今晩振る舞ってやるから我慢して働け…」

などと呆れたりする中で、看守のお兄さんは僕に、

「ジョン…これからが大変だと思うが、頑張れよ…またいつか会いたいが、看守の俺がそれを望むとジョンが捕まらなきゃ駄目だからな…」

と声を少し詰まらせながらも努めて笑顔で僕を送り出してくれ、お世話になった皆さんに僕は深々と頭を下げた後に綺麗に直された町の南門から人生の新しい一歩を踏み出したのであった。

…まぁ、防犯の為に僕が出たすぐに門番担当者さんが直ぐにバンと通用口を閉めたのには、

『あっ、振り向いて手を振る予定だったのに…』

と少し残念な気持ちにはなったのであるが、正直な話、ここから【命懸けのサバイバル】が既に始まっているのである。

『何とか次の町か村まで行かなきゃ野垂れ死にか…そうでなくても魔物だっているんだし…』

と一歩一歩進む毎に現実を把握して足がすくみそうになるが、立ち止まったところで状況は変わらないので、とりあえず僕は熊耳のガインおじさんが教えてくれた南に迂回したルートでニルバ王国の何処かの町を目指す事にしたのであった。