軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第45話 森での狩り

季節は春、旧スラムは春植えの作物が畑にならび、スクスクと育っている暖かい日に、カサール男爵様達が王都から帰って来た。

今回の新型ゴーレムの件で、魔石からゴーレムコアに魔力がチャージ出来る様になる魔道具だけでも、このニルバ王国で燻っていたゴーレムマスターのギフト持ちには価値のある大発明であり、更にゴーレムマスターで無くともゴーレムに乗って戦える技術というのはニルバ王国としても、

「ゴーレム部隊を作り、我が国の戦力を強化出来るチャンスとなる!」

と、国王陛下に大変お褒めをいただいたらしく、カサール男爵様…いや、今はニルバ王国初のゴーレムマスターではないゴーレム使い【カサール子爵様】へと出世なさり、カサールとマルダートのあるこの一帯を正式に賜ったご領主様となられたのである。

カサール子爵様は長旅の疲れなど全く無いご様子で、

「エルバート殿達を無事に王都までお連れしてきたぞ。 倅との模擬試合も大変喜ばれてな…軍務大臣であるゴレア様にも褒められて…」

などと楽しげに話してくれたのだが、僕としては内心、

『敵国に占領され砦として使われていた町に、盗賊に焼かれて多くの家を失った町と、難民が頑張って広げた村のみの国境の土地を賜っても…』

と、カサール子爵家の財政を心配してしまう程に領地はボロボロなのである。

ただ、多少ボロボロでもカサール子爵様的には正式な領地となった為に、

「もう、ゴレア様の町を預かる代官では無いから領地内の好きな場所に町を作るのもだが、ワシの意思で引退するのも自由だぞ!」

と、プレッシャー無く気楽に頑張れるらしく、旅立つ前よりも、「引退、引退」と言わなくなった事でクリスト様も、ホッとしているご様子である。

エルバ師匠達からの手紙には、王都に居るゴーレムマスターに、ギフト無しの人間が乗る為に必要なコアの調整方法を伝授した事によりクリスト様も爵位を与える案が出たらしいのであるが、クリスト様は、

「私は父の後を継げば良いので、義理の弟に…」

と、マルダートの代官である妹さんの騎士爵の旦那さんも町を復興させたという実績が確認出来たらカサール様が持っていた【男爵】を貰える事に決まったそうで、クリスト様の提案した義理の弟思いなこの件も陛下は満足されたらしく、クリスト様には【新型ゴーレムの調整技術を王家にもたらした】という事で報償金が与えられたのだそうだ。

『それなら当面の町作りはカサール子爵家と次期ご領主様であるクリスト様にお任せすれば良いな…』

と町の皆も安心出来る何ともめでたいニュースばかりだったのであるが、カサール子爵様から、

「陛下はエルバート殿の報告を聞いてジョン殿とも会ってみたかったと申されていたぞ…」

などと言われ、僕は、

「いや…本当にどの面をさげてニルバ王国の国王陛下に謁見できましょう…勘弁してください」

と変な汗を流していたのだが、カサール子爵様は、笑いながら、

「これで新型ゴーレム部隊が正式に完成したら陛下はリント王国との国境あたりで彼方のゴーレム部隊と模擬試合をする計画らしくてな…彼方の国王陛下に、【素晴らしい人材を追放してくれて…】などと言ってやろうと、それは楽しげに…」

と、戦争を経て仲良くなった両王家の話のネタにどうやら僕はされるらしく、

「国王陛下がジョン殿に何か褒美を…ってお金を預かってるんだけど…」

と言ってくれたので、

「ではカサール子爵様、新しく整備するカサールの壁外地区にてウチの家の建設をお願いしても良いですか?」

と僕がおねだりすると、子爵様は、

「そんな事で良いのか? では立派な豪邸を…」

と言ってくれたのであるが、僕は、

「豪華でなくて構いませんから、畑が出来る土地と…あっ、あと厩舎があれば最高です」

と図々しいお願いをしたのであった。

さて、早いものでバタバタと動き回っているうちに僕が国外追放になって丁度一年が経った。

個人的には、

『なんだか追放されたら流れ流れて見知らぬ国に向かうと思っていたが、案外近場をウロウロしてるだけだな…』

と、思う今日この頃であるが、一年前の自分では想像のつかない毎日を送っている。

色々とご迷惑をかけたはずのニルバ王国の国境付近の方々に助けてもらい、まだ建設予定ではあるが我が家を手に入れ、ベルやリーグさんという家族も増え、出来る事も増えて来た。

『あとは、この領地の皆さんが少しでも幸せになれば…』

と考えつつ、僕たちはその第一歩としてライトお兄さんの新型魔道具である【バーストショット】なる風魔法の回路から生み出されるバーストという敵を吹き飛ばしたり、体勢を崩すという魔道具として再現出来る最高峰の中級風魔法の力により、弾を射ち出す空気銃の試し射ちに来ている。

この魔道具が兵器として完成すればカサール騎士団や兵士団の戦力アップにつながり魔物の心配なく町の方々が暮らせるはずである。

という事で、僕の知識とライト兄さんの技術により完成した試作品の試し射ちに合わせて、盗賊討伐作戦の時にどうやら倒してしまったリーグさんの新しい相棒の狼魔物の代わりとなるテイマーギフト持ちのリーグさん感性にビビっと来る魔物を探しにカサール近くの森にやって来ている。

ペアの屋敷の庭にて良く見かけたリーグさんの昔からの相棒である鳥魔物は、リーグさんが身に覚えの無い罪により指名手配されたリント王国から脱出する際に、追っ手の注意を引く為に囮となり殺され、国境を越える為に道なき深い森を進んでいた時に怪我をしていたフォレストウルフを新たに相棒としたのであるが、それも僕の肩キャノンと騎士団さんの弓攻撃により虹の橋を渡る結果となり、

「あのデカいトカゲの足を噛んで暴れるのを抑えたりした賢いヤツでしたが…」

と語るリーグさんの悲しげな笑顔が胸に刺さり捲っていた事もあり、

「リーグさん、ライト兄さんが痺れ毒の弾とそれを射ち出す魔道具を作ってくれたから新しい相棒を探しに行かない?」

と誘ったのである。

ベルも、

「面白そう、ボクも行く!」

という事で、三人で初めての狩にやって来たという流れである。

今回ライトお兄さんの作った試作魔道具は三種類で、僕と一緒に考えたバーストショットをベースとして、長距離射撃を想定し内部の回路にて威力を圧縮し打ち出すバーストショット改、そして、ライトお兄さんイチオシである。

「遠くの仲間にポーションを届け~る」

なる変な名前のバーストショットの派生魔道具なのだが、僕は三種類の新型魔道具を取り出して、

「バーストショットは多分大丈夫だと思うからベルが使ってみて、改造したヤツは強化したっぽいから反動が怖いしリーグさんが使おうか…残りは僕が使ってみるけど…狩に使えるかな?」

などと不安に思いながらも配った後に三人で森を進み、リーグさんが、

「あっちから声が聞こえます」

と言って森の奥に目をこらす。

ちなみに、この「声」とは鳴き声もあるが、テイマーギフトにより意思の疎通が出来そうな魔物が出す思念的なモノも含んでおり、木々の隙間を凝視するリーグさんが、

「居ました。 フォレストウルフですね…自分が射ってみます」

と言いながら麻痺弾が装填されたバーストショット改を構えて、引き金を引くと、

「ズドン」

という重く乾いた音を発てて射ち出された弾丸は真っ直ぐにフォレストウルフに向かい、音にビックりしたベルが、

「きゃっ」

と、可愛い悲鳴を上げたのを僕は、

『お料理とかも覚えて女子力も上がったし、少し前まで野糞とか言ってたのが嘘みたいに最近では年下の子に文字も教える良いお姉さんしてるもんな…』

と、町の奥様方や他の女の子とのふれあいにより、ベルが成長を遂げた事を嬉しく思って眺めていたのだが、そんな僕の隣ではリーグさんが何とも微妙な表情で固まっており、僕は、

「どうしたの? 麻痺の効果が出てるうちにフォレストウルフを説得に行かないと…」

と彼を急かすと、リーグさんは何かを見つめたまま、

「しかし…その…アレが…」

と指をさしている。

『ん?』

と思いつつ僕もその指の先を見ると、フォレストウルフが見事に撃ち抜かれて虫の息で倒れていたのである。

「威力が強すぎだよ!」

と焦った僕は、

『そうだ!!』

と手に持っていた【遠くの仲間にポーションを届け~る】に回復ポーションを装填しフォレストウルフをめがけて発射したのである。

『ライト兄さんの説明ではポーション瓶が着弾の衝撃で割れて応急処置が出来るらしいからな…間に合え!』

と祈ったのであるが、硬いポーション瓶が命中した瞬間にフォレストウルフは虹の橋を渡ってしまったのであった。

「全然使えねぇじゃねぇ~か…」

と崩れ落ちる僕と、固まったままのリーグさんにベルは、

「とりあえず血抜きしとくね…」

と、ご自慢の魔鉱鉄のナイフを手にフォレストウルフに向かって歩き出したのであった。