軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第34話 物々交換

リサイクルショップのおやじさんから物々交換をお願いされ、僕としてはここから、

【出来るだけ現金を回収したい僕 VS 商品にて相殺したいおやじさん】

という暑い戦いが繰り広げられる予想であった。

しかし、おやじさんが一枚目に切ってきたカードだけで、僕としてはむしろ儲かった感じだった。

どうやら魔石ランプが特に需要が高いらしく、何がなんでも無傷で手に入れたいおやじさんは、

「奮発して買い付けた、まだ使えるが傷だらけのマジックバックだ…どいつもこいつも、もう少し金を貯めりゃ新品が買えるからって何年も売れ残ってる品だが…」

と、小金貨四枚の品を修復した魔石ランプ4つとの交換を提示してきたのだ。

こちらとしても修復して新品同様とはいえ中古の魔石ランプ4つの買い取り額で、ボロボロとはいえ新品の魔石ランプ4つ分の値段でも買えないかもしれない品を手にいれるチャンスなのであるが、しかし、そこは僕だって前世分の知恵がある為に、

「やったぁー」

などと喜ぶ…なんていうヘマはしない。

『う~ん…まぁ…仕方ないか…』

みたいな顔をした僕が渋々っぽい声色で、

「おやじさんとは仲良くしたいから…うん…それでお願いします」

と承諾するとリサイクルショップのおやじさんは、

「悪いな兄さん…へへっ…」

と申し訳なさそうにしているが、おやじさんも多分腹の中では、

『上手く、売れ残りをさばいてやったぜ…』

ぐらいに思っているのだろうが、こちらには修復ギフトがある為に中身の機能が無事ならば革製の表面など、

『崖でも転がり落ちました?』

みたいな細かい傷だらけでも特に問題なく綺麗に出来る自信があるし、多少傷が残っても使えるのなら問題はない為に、僕も腹の中では、

『上手くやってやったぜ…』

という気分である。

その後は、夏場に需要がピークとなる魔石式水生成水筒や、キャンプだけでなく屋台やご家庭のキッチンや暖炉でも重宝される魔石式着火棒の物々交換も行ったのであるが、タヌキとキツネの化かし合いのような心理戦の結果、おやじさんも店の不良在庫を一掃出来てホクホク、僕も修復ギフトの訓練に使った生活魔道具を少額ではあるが現金と面白そうな物などと交換出来てホクホクという両者に得な取引が成立したのであった。

僕の戦利品としては、

「せめて残った魔道具だけは…」

とゴネて回収した少額の現金の他は、

【擦り傷だらけのマジックバック】

【マーチンの町に住んでいた錬金術師さんの残した本が三冊】

【その錬金術師さんの持っていたゴーレムコアと何か分からない品々】

という心踊る商品である。

後半の二点は僕が錬金術師の見習いと知ったお店のおやじさんが、

「亡くなった錬金術師の爺さんの家の大家の婆さんが、最後の家賃がわりにウチ売った商品なんだが、買い手がなかなか…でも錬金術師見習いの兄さんなら…」

と、僕の興味を引くために出してはみたが、押し付けた罪悪感から本音を言ってしまうほどの不良在庫だったらしい。

しかし、僕にとったら、

『一人の錬金術師が人生の最後まで研究していた資料と実験器具』

というワクワクしかない商品が元手ゼロのゴミから修復した物と物々交換できたので、

『マジックバッグも手に入ったから邪魔にはならないし、これなら暇潰しにもなりそうだ』

と、大満足の結果である。

まぁ、勿論表情だけは、

『…今後のお付き合いもありますしね…』

みたいな顔で、

「ではまた…」

と店を出ようとするとリサイクルショップのおやじさんは、

「おっ、ちょっと待ってな!」

と言って店の奥から、小箱を持って出てきて、

「マジックバック持ちになったんだからこれはサービスだ」

と、かなり古びた見た目の箱を僕に差し出す。

おやじさんが言うには、

「これもその錬金術師の爺さんが持っていた商品だ…これもダンジョンから出てきたマジックアイテムでポーションなんかを長期保存出来る便利アイテムだ…」

と物々交換には、わざと出さなかった亡くなった錬金術師のお爺さんの遺品の中で一番値打ちだったであろう商品までオマケでくれたのであった。

僕はおもわず、

「ありがとうございます」

と満面の笑みで頭を下げると、おやじさんは、

「やっと笑顔が見れた…流石にオレも若者相手に少し無茶な取引をしちまったからな…詫びだ…」

と微笑み、

「錬金術師の兄さん、また来てくれよ」

と僕を送り出してくれたのであった。

『僕が修復ギフトで直した生活魔道具は駆け出し錬金術師が練習がてら修理した物と判断して、それで錬金術師さんの遺品をオススメしてきたんだろうが、最後のオマケまで…何か悪い事したきがするな…』

などと複雑な気分の僕であったのだが、最後に渡されたオマケの小箱が入っているマジックバックに手をあてながら、

『流石にダンジョン産のマジックアイテムなんて…高いだろうに…』

と、かえって凄く申し訳ない気分になってしまった。

しかし、貰ったものは返す訳もなく僕は早足気味に宿屋へ戻り、手に入れたマジックバッグにリペアの魔法をブチかまして見た目だけでも新品同様に修復した後に、錬金術の本を破れたページがないか確かめながら読み始めたのであった。

それから夏の間は涼しい午前中はベルとケント君にコツを教わる形でグラーナ用の竿を振り、

『う~ん…なんかルアーフィッシングみたいだけど、こんな木の枝では僕の実力は発揮出来ないな…』

と、なかなか上手く行かないカエル釣りに心の中で文句を言っては、昼にはマーチンの町に帰り、獲物を冒険者ギルドで解体してもらい、魔道具に使うようになった魔石の一部は売らずに手元に残して、それ以外はお金に変える。

勿論ケント君は自分の倒したグラーナの足肉を屋台用に持って帰るし、ベルも自分のマジックバック用の魔石を確保しているが、そもそも日中に竿を使ったグラーナ狩りで倒している獲物の数が僕の比ではないので、各自の手元に入るお金に格差ができる。

『明日こそは…』

と自分に言い聞かせ、ケント君と別れた後にベルとお昼を済ませ、その後はベルとも別行動となり僕はゴミ置場で素材を拾い、午後は足りない素材を購入したりしながらゴミ置場近くの広場にテントに使うシートを広げてマジックバックからマーチンの町で買い集めた工具などを使い、

『フッフッフ…魔石ランプなんかの直せなかった魔道具のパーツを予備に置いていたが、もう自分達用の水筒も着火棒もあるから次は魔道具より便利なアイテムを自作する!』

と、一人で意気込みながら前世の知識をベースに本格的なグラーナ釣り竿の製作に取りかかったのだった。

といっても僕の身長ほどのカエルを針に引っかけてファイトするのは強度の面からも現実的ではなく、一番の問題としては、そもそも湖の中心部までグラーナが居るのに、必死に岸辺のグラーナにしかアピール出来ない従来の竿が僕の足を引っ張っている…と信じたい。

なので、細くて丈夫な革細工用の糸に見習い登録証を使い錬金術ギルドで購入した撥水コーティング材を塗り、いくら手先が器用でも釣り用スピニングリールの中身のを作るのは難しいので、直らなかった魔石式水生成水筒等の筒部分を解体し利用する。

それから、これまた錬金術ギルドで購入した魔道具の回路を固定する時等に使われる粘土のように柔らかいが、魔力を流すと硬化する金属である錬金鉄粘土という少しお高い素材を使いフライフィッシング用の内部のギアも何も使わない筒に糸が巻けるだけの簡単なリールをこの世界に産み出している。

『これならば…フッフッフ…』

と、出来上がる程に勝手に笑みがこぼれる僕を心配してか、たまたま通りかかったグラーナ狩りで顔を合わせるベテランさんが散歩の足を止めて、

「兄ちゃん…そんな思いつめなくても…少しづつ上手になるからさ…」

と声までかけてくれる始末なのだが、ベテランの気遣いに僕は、

「明日もがんばります」

と軽い笑顔で返そうとするが、どうしても溢れ出す手製の釣具の期待を抑えきれずに意味ありげな満面の笑顔で返していたらしく、ベテランさんは夕方に屋台で会った時に、

「大丈夫だ…グラーナ狩りだけが人生じゃないから…」

と、ご飯まで奢ってくれた。

『いや、思い詰めていたわけでは…』

とは思うがそこは、

「ありがとうございます。 ゴチになります」

と元気に奢っていただき、ニコニコしておいた。

とまぁ、そんな事がありながらも、次の日の午後には良くしなる木を削った竿に錬金鉄粘土で作った糸を通すガイドをつけて、あとは糸や錬金鉄粘土でパーツを固定し仕上げに撥水コーティング材を塗ったら、カエル魔物専用アピールロッドの出来上がりである。

疑似餌部分も廃材などの革をベースにしフライフィッシングの要領でキャストすれば湖の奥のグラーナにもアピール出来るはず…

『皆がバシャバシャして釣り竿のアクションに馴れたスレてしまったグラーナではなくてまだ初な反応のグラーナ達を岸辺まで引き寄せてやるぜ…』

と、ベッドの中で明日のグラーナ狩りが既に楽しみな僕であった。