軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 ダンジョンへ

ベルと二人でダンジョンへと来たのは良いのだが、僕は学校の授業にて少し習っただけで、実際に友達とパーティーを組んで行く前に牢屋送りとなり行けなかったので、

「ダンジョンって変な所だね」

と楽しそうにしているベルに

「そうだね。 スライムに注意しながら進もうか」

などと注意を促したり、お兄ちゃんとして冷静を装おってはいるが、内心では、

『うっひょ~、本当にダンジョンに入ってるんだ…』

と、前世の記憶ではゲームなどで潜っただけの本物のダンジョンにベル以上にワクワクしながら目だけでキョロキョロと遊園地に来た子供みたいにダンジョンの隅々まで観察しながら興奮している。

それもその筈で、実際に来て見るとダンジョンは、学校の資料で習って想像していた数倍不思議な場所であった。

そもそも学校や図書館の書物などでは、ダンジョンとはそれ自体が国の宝であり、危険と引き換えに富を与える神からの贈り物だと教えてもらった。

しかし、このダンジョンのあるウエスの村は百年程前に畑の真ん中に急に現れたダンジョンにより栄えるかと思いきや、現れたダンジョンが初級者向きのダンジョンであり、ダンジョンの壁にいくつかの取りつくしても数時間で復活する鉄鉱石の採取ポイントが有る以外は特に恩恵もなく、このダンジョンで力をつけた若者が都会に冒険者として出て行くきっかけを作っただけという世にも希である残念なダンジョン村である。

まぁ、この残念ダンジョンを管理する為に冒険者ギルドの出張所や宿屋に酒場など村に似つかわしくない施設も有る為に残った村人はそれなりに便利に暮らしている様ではある。

探索者は勿論、地域の者の生活に恩恵を与えるという中級や上級のダンジョンには入るために必要な冒険者ランクなどの決まりがあるが、このウエスのような初級者ダンジョンは冒険者証があればランクに関係なくサインのみで無料で入れ、ベルのような冒険者登録がまだ出来ない者でも、誰か冒険者と一緒ならば入場する時にギルドのカウンターで大銅貨2枚の書類手続き料を払えば、何があっても自己責任ではあるが入場できる。

これはどこの国でも階層が浅かったり、出てくる魔物が弱くトラップなども無い初級者向けのダンジョンならばこのルールであるそうで、なんでも金持ち貴族の子供達が入学前に冒険者を雇って【ダンジョンに潜った】という実績にて他者にマウントをとる為だけに親である貴族達が代々冒険者ギルドにやらせているという噂のルールなのだそうだ。

まぁ、おかげでベルもギフトを授かる前だが普通に僕の付き添いが有れば入れるので、

『貴族の見栄っ張り気質もたまには役に立つんだな…』

とは思える。

入り口の冒険者ギルドの出張所のカウンターにて手続きが終わると職員のお兄さんに、

「このダンジョンは初めてだね」

と聞かれ、

「はい、ダンジョン自体が初めてです」

と答えると、お兄さんは、

「では、説明を聞いていくかい?」

とこのダンジョンについての説明をしてくれたのであるが、なぜ親切にこのような説明をしてくれるかというと、

「でね、一階層の鉄鉱石の採掘ポイントは毎日村の鍛冶屋が回って採掘するんだけどワザワザ四階層の採掘ポイントに行く村人は勿論、冒険者も少ないからね…」

という事で、この冒険者ギルドでは現在、特別に四階層の鉄鉱石の回収クエストもやっているらしく、

「ね…採掘ポイントも分かる四階層地図もあげちゃうから…」

などと言ってクエストを薦めてくるのである。

「まぁ、お金になるのなら…」

と答える僕にお兄さんは、

「そう、助かるよ。でね、四階層まで行くにはね」

とカウンターに出したダンジョンの地図を指差しながら、

「一階層は洞窟風のエリアで、二階層は草原で毒消し草なんかが採取できるエリアだけど、まぁワザワザ潜らなくても毒消しなら村の外でも採取できるんだけどね…でね、三階層のポイズンスライムと装備を駄目にするアシッドスライムが厄介で…下手をするとボスのビックスライムより三階層の方が面倒だから四階層にまで鍛冶屋の野郎が採掘に行かないんだよ…」

などとこのダンジョンのネタバレ情報を早口で次から次へと無料で渡してくるのである。

これは、各ダンジョンでのドロップ品や採掘された鉱石、それに採取品もダンジョンから戻れば買い取るとか買い取らないとかは別にして、後の冒険者にドロップ品の情報を残す為やダンジョン自体の変化などを調べる目的で冒険者ギルドに報告する義務があり、

「うちのダンジョンの鉄鉱石の採掘量が少ないって上から言われてるんだよ…五階層はボス部屋だけで入り口前には敵は出ないし、一回倒して再びボスのビックスライムが出てくるまでに六時間必要で、採掘した鉄鉱石もそれぐらいで再び採掘できるから四階層に戻って掘って、五階層で休めば…ねっ、ツルハシなんか持って、実は最初から掘る気満々なんでしょ? だから頼んだよ」

などと勝手に僕がノリノリで鉄鉱石調査にダンジョンに来たみたいに言い出し、鉄鉱石調査の依頼書に受注済みの判子を押していたのだった。

乗り合い馬車でここまで来た冒険者も僕たち以外居ないし、このやり取りの前に何人かダンジョンへと入った人は、一階層で採掘している鍛冶屋さんと、息子を鍛える為に二階層辺りでスライムを狩るらしい地元の親子連れだけだったので、職員のお兄さんが言うには武器や防具を身につけた冒険者自体が2ヶ月ぶりぐらいなのだとか…

『こんなに不人気って…』

と、学校で聞いた初級ダンジョンとのギャップに僕は入る前から少し不安になってしまったのだが、ベルはお構い無しの様で、

「お兄ちゃん、早く入ろうよ」

とウキウキである。

僕は、

「ちょっと待ってよベル」

と呼び止め、ギルド職員のお兄さんに、

「三階層のポイズンスライムとかが、強敵なんですよね…」

と質問すると、お兄さん、

「倒すリスクの割に粒魔石ぐらいしかドロップしないからね…毒消しポーションも2本サービスするから、三階層はサクッと走り抜けて四階層で毒が回りきる前にゴクッと飲んでよ…四階層も洞窟エリアで出てくるのはストーンスライムだけだから…アイツは近づかない限り動かないから休憩だってし放題だから…」

などと、サラッと「毒が回りきる前…」と、毒を食らう前提の怖い事を言ってくる。

『お金に余裕があればあと何本か毒消しポーションを買いたいが…二階層に毒消し草が生えているらしいからそれを摘んでいくか…』

と決めてようやくダンジョンへと向かったのであった。

とまぁ、こんなやり取りが有った為にダンジョンに入るまでは僕のテンションが微妙に低かった事もあり、ウキウキのベルに対して、

「足元に注意してね…」

などとクールに注意を促しつつダンジョンに実際に入ってみると一階層の入り口は薄暗い洞窟で、

『なんだ…普通の洞窟か…』

と、ガッカリして更にテンションが下がりそうになる僕であったが、そのまま奥に進むと、同じ洞窟が続いているはずなのに何故かぼんやりと天井が明るく、鍛冶屋のおじさんが黙々と鉄鉱石を採掘している音が聞こえ、鍛冶屋のおじさんと先に入った親子のおかげで一本道の洞窟で敵に合う事は無かった為に、

『うわぁ~、日も差し込まない地下なのに本当に明るいよ!』

と、ベルよりもワクワクしてしまっている自分をさらけ出すタイミングを逃した僕とだけ戦う事になってしまったという流れである。

そして階段を下った二階層は地下だというのに高い天井は光が差し込んでいるほどに明るく、

「本の挿し絵では知っていたけどこんなに明るいのか…」

と、クールを装おうことも忘れて、素直に驚いている僕にベルは、

「お兄ちゃん、こんなに明るいのなら家とか立てて住めそうだね」

というのだが、それは出来ない事が昔の人の実験で証明されているのである。

その問いに僕は、

「ベル、それは無理なんだよ。昔に天気に左右されずに野菜を作れると考えた人が土を耕したんだけど、いくら耕しても時間が経てば元の草むらに戻るんだって…」

と、学校での知識を教えてあげるとベルは、

「そっか! ギャンさんが、落とし穴を掘っても獲物が落ちる前に消えちゃうっからスコップは邪魔になるって言ってたもんね…」

と、このダンジョンをオススメしてくれたギャンさんとした話を思いだして納得していたのだった。

ダンジョンでは採掘ポイントが採掘した鉱石ごと復活する様に地面を掘り返しても数時間で元の状態に戻り、マジックバックで運びこんだ材料で建てた小屋も数時間でダンジョンに取り込まれ消え去るという事が判明している。

そして、その後の学者の実験により生命の無い物をダンジョン内で完全に動かさずに数時放置するとダンジョンに奪われてしまうという事が広く知られたのである。

つまり、ダンジョンで数時間熟睡すると息をしている場合【動いた】と判断されて身につけた装備類は無くならないが、鞄などを地面に置いて数時間すると中身ごとダンジョンに奪われてしまう為に、

『ダンジョンでは鞄を身につけたまま寝る』

というのが学校でも習うこちらの常識である。

なのでダンジョンの産み出した魔物は死んだ瞬間に消えてドロップ品に変わるが、ダンジョン外から入ってきた人間などは死んだ場合には数時間後にダンジョンに取り込まれるらしく、その学者の論文には、

【ダンジョンには知性があり回収した装備品を解析し外から人を呼び込む為のアイテムを作り出し希にドロップ品としている】

というものがあったが、

『知性か…確かに、意地悪な性格のダンジョンは迷路だのトラップだの多いらしいし、ドロップ品が食料ばかりのダンジョンがあるらしいからな…好みとか有りそうだ…』

と、図書館で一人で納得した事を思い出しながら、先客である親子の邪魔にならない様に、

「ベルぅ、あちらの親子と狩り場が被らない様に、僕たちはあっちでスライム狩りするよぉ~」

と既に元気に走り回り何匹かスライムをシバきあげているベルを呼び戻し、次の階層の毒持ちのポイズンスライム対策の為に毒消し草を探しつつ移動する事にしたのだった。