軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 新しい仲間

さて、新しく僕の仲間になったのはベルという名前のジル君と同い年となる八歳で、ママはヒト族でパパは獣人族というハーフの垂れてる系の犬耳の女の子なのだが、森を走り抜けて来た為に服がボロボロなのは理解したのだが、彼女はパパのお気に入りだったブカブカのハンチング帽子を脱ぐと男の子のような短髪であり、服装も男の子用のものだった為に、僕は初めは男の子として接してしまい、

「服…出来る限り直して上げるから脱いで」

と、リペアの魔法を破れ毎に集中してかけたくて、脱がせようとするのだが、やたら脱ぎたがらないベルに、

「着たままだったら僕がしゃがんだりしてリペアの魔法をかけるの大変だから…」

と言っても、「恥ずかしい」とかなんとか言い出し、

「男の子だろパンツ履いてるなら大丈夫だから…とりあえず枝か何かでズタズタのズボンだけでも先に…」

と僕が説得していると、

「…です…」

とベルが蚊の鳴くような声で何かを言っているので、

「ん?」

と、無理やり脱がそうとしている僕が手を止めて聞き返すと、

「ボク…女の子…です…」

と改めて答えたのである。

そう、この娘さんの一人称が「ボク」だったことも話がややこしくなった原因の1つであるが、その件については僕は彼女を1ミクロンも責める権利を有していないのであった。

なぜなら彼女のボーイッシュな格好には、

【可愛い獣人族の娘は誘拐されてしまう】

という事が十数年前から続いた為に、この周辺のケモ耳少女は嫁ぐまで短髪にズボン姿が定番で、ケモ耳を隠す帽子やフードまで定番アイテムであり、成人するまでは一人称がボクなんてざらに居るのだそうだ。

『お洒落を我慢して男の子の様に…女の子には辛い日々をベルだけではなくこの地方一帯のケモ耳女性よ、ウチのケモ耳大好きクソ変態親父が本当にスミマセンでした…』

という事があり、益々ベルのお世話だけでもしなければ、親父がしでかした事ではあるが獣人族の女性達のお洒落を楽しむ青春期を奪った件について身内としてお詫びのしようが無いという事実を知ってしまったのである。

女の子と解った以上服を脱がせる訳にも行かずに僕が、しゃがんだり、立ったり、中腰になったりしながらリペアの魔法で可能な限り服を直したのであるが、破けたうえに布が失くなっている箇所はリペアの魔法が効かなかったので、

『僕のリペアの魔法ではこの破れ方はまだ直せないか…追加の素材の布があればもしかして直せるかも知れないけど、お金を貯めて新しいのを買った方が良さそうだ…』

と、いう事があった翌日からホーンラビット狩りを本格的に始めたのであるが、魔物狩りだというのに女の子であるベルも、

「ボクも狩りを手伝う」

と言って聞かないのである。

『女の子を狩りに連れていくのは…』

とも思ったが、かといって野宿エリアに残して行くのも違う気がしたので、壊れた為に新たに作る事にした木のヤリ2号に続き3号もナイフで削り、二人でホーンラビットの巣穴を探しつつ、昨日仕掛けた罠を回収して回る。

残されたロープの長さから引きずり式のくくり罠は5つしか作れず、蟹に切られてなければあと3つか4つぐらいは余裕で運用できたはずなのだが、

『今さら悔やんでも仕方ないか…』

と、諦めるしかない状況で、ロープの残りを全て使い昨日僕が仕掛けた罠は、5つの中で1つしか発動しておらず、しかも今回は首を絞められ絶命状態ではなく足に掛かった為にまだ元気に暴れているのである。

片足はロープにより自由を奪われているが、出来るだけ遠くに逃げようと罠を中心にグルグルぴょんぴょんと暴れるホーンラビットを見て、ジル君との狩りの時もそうだったが、相手がホーンラビットというだけで、昔太ももを突き刺された時の記憶がフラッシュバックして、ダラダラと変な汗を流しながら、

『行けるか?…行けるよな!』

と、自問自答して己を奮い立たせている僕を他所に、ホーンラビットの首筋にストンと鋭い一撃を入れたのはベルであった。

「ん?!」

と驚いて動きを止めた僕に、ベルは倒したホーンラビットを掴みあげて、

「お父さんのお手伝いで良くヤッてたから…」

と恥ずかしそうにホーンラビットを渡してきたのであるが、

「殺ってたんだ…よく…」

と、あまりの手際の良さに驚く僕がいたのである。

そしてベルの能力の高さはそれだけでは無かった。

彼女はホーンラビットの巣穴の入り口をクンカクンカすると、

「たぶん子育てが終わってもうこの穴には居ない…でも近場に巣立った子供がパートナーと巣穴を作ってると思うから」

と、どうやらベルのパパさんも猟師だったらしく犬系の獣人族の優れた嗅覚や聴力等を活用した獲物の見つけ方を身につけているらしく、

「あれ…僕…要ります?」

という状態であった。

でも罠は仕掛けた事がないらしく、僕の手元を真剣に見ながら技術を覚えようとしている勉強熱心なベルちゃんなのだが、

『これで、罠まで使えたら益々僕の存在価値が…』

とは思ってしまう。

『あっ! でも、国は違えど冒険者ギルドのルールは同じなはず…10歳以下は冒険者登録をまだ出来ないし、保護者が居ないと素材を売れない…だからあと二年は僕というお兄ちゃんが…必要…だよね…』

などと考えていたのだが、翌日の朝、ベルが「居る!」と太鼓判を押した巣穴5つ全てに獲物が掛かり、解体だけでもかなり大変な量の獲物を手に入れる事が出来て、

『本当にベルは一人でも生きていけるかも…』

と、新しい仲間の実力と、自分の実力の差を感じてしまうのだが、だからと言ってまだ彼女は幼い…狩り以外で僕がサポート出来る事が有るはずである…きっと…多分…

『お願い!何か有って下さい…もう、迷惑をかけていた方の家族としては、これ以上は…』

と己のハートが軋む音を聴きながらも、ベルにホーンラビットの解体の手順を教えようとすると、

「家でも毛皮を干すのはボクの担当だったから…」

とこれまた手際良くホーンラビット毛皮に周辺に生えている木の細い枝を僕のナイフを借りてスパッといくつか切ると、

「本当は板とか有るとしっかり伸ばせて丸まらないけど、これでも何とかなるから」

と、フレッシュな毛皮に枝を凧の骨組みの様に引っかけてピンと伸ばして、売り物の毛皮として高値で売る為の方法まで知っており、新しい仲間は本当に頼りになる。

『国を追放されても【あれはクソ親父のせい】という事で心のダメージは少なかったが…ベルに【お前使えないな…】とか言われて見放された場合、かなり落ち込む自信があるぞ…これは気合いを入れて頑張らねば…』

などと考えながら肉等の解体を黙々とこなしている僕である。

そしてこの狩り生活に追加で新しい仲間が居る…それは一昨日は一匹、昨日も一匹分のホーンラビットの内臓や骨を食べてくれたフォレストクラブが、

『えっ、今日はこんなに?…いいんですかぁ~』

と、驚きながらもソワソワと近くの岩影から此方を伺いながら待機し、僕たちが帰るのを見送ってからモシャモシャと五匹分の解体ゴミを片付け始めてくれたのであった。

そう、現地勤務の解体ゴミ処理担当の蟹ママである。

襲わない限り攻撃して来ないので、ベルも、

「何か居る!」

と木のヤリを握りしめ警戒した後に蟹ママを見て、

「なんだフォレストクラブのメスか…」

と森育ちのベルが木のヤリを構えるのをやめる程には安全な部類の魔物なのだろう。

そんな訳で、僕とベルと蟹ママという不思議なチームにより手持ちの岩塩が無くなるぐらいまでこの道端の休憩所にてホーンラビット狩りを続けたのであった。

ちなみにではあるが、ベルちゃんは育ち盛りなのか普通に大食いなのか、毎食僕の倍程のホーンラビットのお肉をペロリと食べて幸せそうに自分のお腹を擦っている。

そんな食べるの大好きな彼女が、ほとんど水だけで何日も走って逃げてきたのだからどれ程過酷な状況だったかは想像も出来ないが…

『ベルのご両親に代わり、ベルが立派に生きて行ける様にサポートするのが僕の役目なんだろう』

と、感じた僕は、

『運良くリント王国文字だけでなく、ニルバ王国文字の表も手元にあるし、計算だって教えてあげられるな…』

とベルの将来の為に出来る事を考えてみるのたが、

『いや、その前に住む場所が問題になるか…カサールの町で冒険者登録をしてすぐに家が買えるほど稼げる事もなさそうだし…ベルを追い返したカサールとやらは難民も多いから物件は足りて無さそうだもんな…』

などと、問題山積みの現状を少しでも改善するべく、夕暮れに染まる空を見ながら、

「塩も品切れだし、鍋を買ってスープも食べたい…塩味だけでなく流石に香草なんかも摘んで来て、香草焼きとかレパートリーを増やしたが毎食ホーンラビットの焼き肉というのも飽きちゃったし…ベルぅ明日あたり、カサールの町に入ろうか?」

と満腹少女に声をかけると、

「うん賛成! ボクはホーンラビットでも大丈夫だけどお野菜も食べないと強く成れないってお父さんがいつも言ってたし、お母さんはお肉ばかりだと便秘になるって言ってたから」

と、元気に答えてくれたのであるが…

『うん、この子にはレディーとして人前で元気良くお便秘のお話をしないようにもユックリと伝えていかなければ…あと、強くなるのが目標で良いのですか…ベルのパパさん…』

などと、マナー講師として新たな僕の存在意義を見つけたのであった。