軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第155話 ネタバラし

先ほど国王陛下とボトム公爵様からネタバラしをされたのであるが、昨日から僕たちの担当メイドだったリリーさんとやらが今回のお見合い相手だったらしく、

『使用人などと接する時に人としての中身が見えますので…』

という理由から、リリーさんの親御さんの提案でドッキリお見合い作戦が勝手に開催されており、

『まぁ、悪い人ではないのかもしれませんが…』

という前置きはあったが、

「招待された城内にて深酒をしてトイレで戻される殿方は…その…人として如何なものかと」

と、お見合い相手以前の問題だったらしく、僕が陛下と公爵様とのお茶会に行く前に一足早く、

「ノー!」

という結果が伝えられ、僕の今回の人生で初めてのお見合いは知らないうちにスタートし、そして知らない間にコールド負けという結末に心の底から、

『今日こそ飲みたい気分だよ』

と泣きたくなる。

例の姫様の時といい、今回の件といい、

『勝負して玉砕ならまだ我慢は出来るが、しかし参加したくもない勝負とか、参加している事すら知らない勝負で玉砕するのはどうなんだ?』

と思うが、前回は、

【命懸けで戦ったのに憧れの姫を友達に持って行かれた可哀想なヤツ】

という不名誉に、今回は、

【特に祝い事でもないのに無料だからと提供された酒を吐くまで飲んで酔いつぶれるダメ人間】

という評価をされた上でのNGであり、僕はこれらの悲しみや怒りを持って行く場所が無いのである。

国王陛下やボトム公爵様まで僕の負け方を、

「うむ、そんなこともあるのだな」

と、同情している雰囲気だけは醸し出しながらも確実に面白がっており、僕が年甲斐もなく、

「そんなの先に言っておいて下さいよぉ!」

と膨れると、ボトム公爵様も、

「いや、先方から内密にといわれていたから、許して欲しい」

などと必死に慰めてくれ、国王陛下も、

「なら、次の見合い相手を探してやろう! なぁ、それで機嫌を直さぬか?」

などと言っているが、僕としてはもう懲り懲りであり、

「要らないですっ! そんなに僕を虐めたいなら、もう他国に土地を買って出ていく!!」

と騒いでみたのであるが、残念な事に国王陛下達は勿論、部屋の中で控えている護衛騎士団の方々まで僕を哀れむ目で見てくるのだった。

僕の可哀相な姿を見て、

『もう、これは話し合いどころではないな』

と判断した陛下が、

「とりあえず、来週のリント王国訪問団の結成式までは自由に過ごしてくれ。 ゴーレム研究所に居る兄弟子達やラベル殿もそなたに会いたがっておると聞くから気晴らしに丁度良かろう」

と数日のお休みをくれて、その日は解散となったのであった。

そして僕が部屋に帰るとベルが待ち構えており、

「お兄ちゃん遅い! 今度から私もついていくから」

と暇だった事について文句を言われ、

「ごめんよ…」

とだけ答える僕に何か何時もと違う雰囲気を感じたのか、ベルは、

「どうしたのお兄ちゃん、何かあった? 頭痛いの? 風邪?」

と言って、僕のオデコに手を当てながら、

「熱はなさそうだけど? あっ、お昼から担当のメイドさんがデイジーさんってキミーさんみたいなドワーフ族のベテランメイドさんになってね…私、お薬無いか聞いて来ようか?」

などと、必死に心配してくれているのである。

その優しさに涙がチョチョギレそうになった僕は、思わずベルにお見合いの件などを愚痴りたくなったのであるが、

『飲酒の件をどうやって彼女に伝える? いや下手に話すとお兄ちゃんとして守ってきた威厳が危うくなるのでは…』

などと考えた末に、

「ありがとう」

とだけ伝えて、心配そうに僕の顔を覗き込むベルの頭を優しく撫でて、

「大丈夫だよ。 でも、今日はもう休みたいんだ」

と言ってから、ゆっくりベッドへ向かい、

「本当に大丈夫?」

と聞くベルに、

「あぁ、明日は一緒に出かけよう」

とだけ告げてその日は夕食も取らずに眠りについたのであった。

そして変な時間に寝たために、変な時間に目が覚めた僕は薄暗い部屋の中でテーブルに目をやると、夜食らしき物と手紙が置いてあり、その手紙には、

『ベル様より、お兄様が夕食も食べていないので何か食べる物をとご依頼があり有り合わせですが焼き菓子などを置いておきます』

と書いてあり、

「そうか、起こさないようにソッと置いておいてくれたのか」

と呟く僕は、どうやら今回はお見合い相手ではないらしい本職のメイドさんの心遣いに感心しながら、有り難く焼き菓子に噛りつき、

『まぁ、食べ物は時間停止機能付きのマジックバッグに色々と入っているが、たまにはお菓子で小腹を満たすのも良いかな』

と、サクサクと焼き菓子を頬張りつつ部屋の窓から見える夜明け前の薄暗い空を静かに見上げて、

『我が家のクッキーの方が旨いな。 お返しにマジックバッグにダグさんの焼いたクッキーやケーキが有るからデイジーさんとやらにプレゼントして驚かせてみるかな?』

などと、僕を虐めた貴族達への仕返しとばかりに、

「お世話になっているので…」

などと言って僕が居る間にメイドさん達を我が家のお菓子で買収して、

『陛下がまたドッキリでお見合いを仕掛けて来たらわかるようにしてやるか?』

なんて悪い顔で考えていると、辺りはすっかり夜が明けていたのであった。

さて、ふて寝をして、陛下達への仕返しにメイドさん達にだけ僕の前世の知識を使った我が家の美味しいお菓子を振る舞い、メイドさん経由で噂が広がっても貴族達には焦らしに焦らして食べさせてあげないという意地悪なプランを妄想する事によりかなり気分も回復した僕は、この日ベルと一緒に王都の知り合いを訪ねて回る事にした。

まずは兄弟子達のリーダーであるオルフェン兄さん率いるゴーレム研究所チームにライト兄さんからの、

『すっごく美人なイデアさんとこの度結婚いたしました』

という嫌がらせに似た報告から始まるカサール側のゴーレムなどの改良についての報告書を渡すと、兄さん達は、

「こんなのはどうでも良いんだ。 それよりお師匠様は?」

と、報告書をテーブルの隅にポイして師匠の事を聞いてくるので、ベルと二人して新しい弟子が沢山来て忙しくしている事などを伝えると、オルフェン兄さん達は、

「良かった…隠居すると言っていたがそれなら当面は大丈夫だな」

と、戦争の時はガムシャラにポーションを作って、戦後は戦争孤児が冒険者などで独り立ち出来るようにと駆け出し冒険者でも買える価格で彼らにだけコッソリとポーションを作っていたが、戦争が終わりその子供達も冒険者として何とか食べて行けるようになって来た為に兄弟子の皆さんは、

『このままでは師匠が燃え尽きたようになるのでは?』

と心配していたらしく、僕から、

「新しい弟子達の前でエクストラポーションなんかを作成してますよ」

と教えてあげると、兄弟子さん達は大変喜んでいたのだった。

それからベルと僕は護衛の騎士団の方の案内で修復技術を研究する為に新しく作られたラベル先生の研究所へと向かったのである。

ラベル先生の研究所にはマジックアイテム研究者から修復師にカムバックしたヨゼフさんも所属しており、僕もベルも久し振りの再会となるラベル先生から、

「おぉ、ベルちゃんか、大きくなって、見違えたぞ! それとジョン殿は…あまり変わっておらんな」

と少し悲しい事も言われのだが、そんなラベル先生は、

「古い友を見つけてくれて感謝する」

とヨゼフさんの件について僕に頭を下げてくれ、あの時以来となるヨゼフさんは、少し照れたように小綺麗な研究者の制服を身につけ、

「久し振りじゃな」

と僕に数本抜けている歯を見せながら笑いかけている。

ちなみに、現在ヨゼフさんは、拡声魔道具から派生した補聴器のような魔道具のおかげで指輪をソッとはめようとしてくる奇行は行っていない。

『たぶん王都でもアレをやったからこその、厳重注意後の補聴魔道具なのかも知れない』

と、少し思っている僕である。

そしてヨゼフさんは初めて見るベルについて、

「こっちの可愛いお嬢ちゃんは?」

と、僕に聞いてくるので、

「あぁ、妹の…」

と説明しようとする僕の隣では、リント王国式の淑女の挨拶にてベルが、

「ジョンの妻です」

と、ドッキリお見合い相手のリリーさんにもした冗談をかましていたのであった。

『なんか気に入ってるみたいだな…』

と感じる僕であるが、何も知らないヨゼフさんは仕方ないが、ラベル先生までも、

「そうか! おめでとう」

と鵜呑みにしてしまい、呆れた僕は、

「それより見て下さい」

とマジックバッグからミスリル製のマジックアイテムを取り出して、

「これ、僕が修復したって言ったらどうします?」

と聞くと、二人は僕にすがり付くように、

「詳しく!」

と詰め寄るのであった。