軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第151話 おめでたいパーティー

夏のはじめ、カサール子爵家はクリスト様とゼルエルガさんの結婚披露パーティーで賑わっている。

新型ゴーレムや魔力供給魔道具の注文の為にカサールの町に来る貴族も増えており最近では貴族用の宿屋なども営業していたのであるが、流石に息子の魔法の師匠であるゼルエルガさん側の参列者として来る予定のボトム公爵家のご当主様を宿屋に泊める訳にも行かない。

なので急遽家具等を揃えた貴賓室をカサール様のお屋敷に用意し、僕も日頃のお礼代わりに調度品などに修復の魔法をかけてまわり、何とか不要な出費を押さえてクリスト様達がパーティーに資金を回せる様にと頑張った。

しかし、あれだけ資金難でクリスト様達の結婚披露宴が先延ばしになっていたとは思えない程に、現在カサール子爵家…いや、ボトム公爵様が王家からの使者と共に陛下からの書簡を渡して手続きがなされた時点でカサール様は伯爵となられ報償金や、ニルバ王国からの建設ゴーレムの製造や作業員の育成事業としての資金などを受け取り、カサール伯爵家としては順風満帆で最高のスタートとなったと思われる。

そんなおめでたいパーティーの最中に、僕は初めましてとなるロイド君達のパパと直接対面し、凄く面倒臭いお願いをされているのである。

あくまで僕は平民であり貴族のアレコレには極力関わらずに暮らして来たのであるが、流石にチョコチョコと目立つ動きをしていたし、今回のロイド君の件でニルバ王国の公爵家と、小国とはいえコーチャー王国の王家との二国間の縁談において図らずもキューピッド的なポジションになってしまった為に、

【長引いた戦争で戦死した下級貴族の爵位が余ってるので…】

という嬉しくない理由から、

「ニルバ王国貴族になってコーチャーに婿入りするロイドの為に派閥のメンバーとして働いてはくれまいか?」

と、ニルバ王国の傘下に入ったコーチャー王国単体ではバックにボトム公爵家がついたとしても財政など不安だろうから商会などの実績もある僕をロイド君の正式な派閥に入れたいそうで、良くは知らないが家系図のアミダくじで、あっという間にニルバ王家にたどり着く偉い貴族のご当主が僕に、

『我輩と契約してニルバ王国貴族になってよ…』

みたいに、普通の平民ならホイホイ契約して魔法少女にでもなる勢いの甘い誘いをしてくるのである。

しかし、昔少々貴族を噛った者としては、

『どう考えても面倒臭いお願いだ』

と理解出来たので、その場で頭をフル回転させロイド君については、

「まだ帰って皆と相談しないといけませんが、近々コーチャーに商会の支店を作りますので…」

と、【お友達】として近場に商会の支店を構えて資金面や様々な協力をする事を伝えて、なんとかやんわり爵位を断ったのである。

それなのに次は王家の使者さんまで参加して、

「爵位の手続きをするようにと言われておりましたが、陛下からは、もしも爵位を嫌がった場合はせめて特使としてリント王国へ向かう件を…」

などと、面倒な爵位を拒否した場合の交換条件が出されていたらしく、なんやかんや有って追放した僕がニルバ王国で少し有名になり、人の行き来が再開したリント王国へも色々な噂が流れる様になると、ウチのあのクソ親父の件も何やら裏がある上に無実の息子を追放してしまった事に対して今さらながらに、

「どうなんだろう?」

みたいな風潮があるらしく、リント国王陛下からの、

「追放を正式に取り消させて欲しい。 あと国民に仲が良い所も見せたい…だって王家の事を悪く言う国民がいるんだモン!」

という誘いを僕が、

「そんな事より…」

と以前にサラリと断った事も噂が広がり、追放した神童がリント王国の土を未だに踏んでいない事について、リント王国の国民からリント王家に対してあの頃より更に、

「ギフトが無くても扱えるゴーレムなど新しい技術を産み出すのに関われる程の知恵者を幼いうちに良く調べもせずに、まるで腹いせの様に追放してしまった上に、その者は悪事には全く関係なかったと解った後も謝罪すら受け入れてもらえていないらしい…」

などと反感を持つ者も居るらしく、ニルバ国王陛下から、

「念話での通話でリント王が泣きついて来たのだ、だから頼むジョン殿」

と、名指しで両国の国王陛下にお願いされてしまったのだ。

どうやら僕に、

『仲直りしたからリント王国にも普通に遊びにくるよぉ~、リント王国大好き!』

みたいな顔でリント王国の王都までニルバ王国側の特使メンバーとして旅に出て欲しいという内容らしい。

しかし、正直な話『面倒臭い』という一言につきるが、すでに爵位の件を断っている手前、僕に残された選択肢は【イエス】か【国外脱出】の二択しかなく、だからと言って【ソレ以外の選択肢】として爵位を貰った所で、

「ニルバ王国貴族なら行ってこい!」

と言われて渋々リント王国に行った後に、ニルバ王国にて貴族のしがらみ生活が待っているだけである。

国外脱出して一からスタートするには色々と手放したくないモノも増え、

『一般通過追放者のままなら…もっと気楽だったのかな…』

などと己の行動を見つめ直してみたのであるが、今更捨てるには惜しい居場所が有る事が有り難く感じただけであり、

「仕方ない…」

と決断し、

『あくまでも一般通過平民として両国の王様の顔を立てる為に旅に同行する。 でも、その後にズルズルと注文してくるならば引っ越します!』

という条件でそのリント王国への旅に参加する事を了承したのであった。

さて、旅の予定であるが秋前に王都から出発する王国騎士団の方々に混じり西へ西へと移動を開始しリント王国の王都を目指すという距離も期間もかなりあるという、なかなかハードな旅なのである。

あくまでも僕自身が使者の方々や騎士団のオマケとしてついて行くのであり、護衛もゴロゴロと居るチームの為に、僕の旅のお供は一名のみと言われてしまったのである。

まぁ、丁度夏の終わりから王都の学校に編入するララちゃんとターニャちゃんを王都に送り届けるついでがあるので王都まで行くのは問題ないのだが、一番の問題は、

『さて…行って帰るだけで半年以上の旅に誰を連れて行くか?』

である。

リント王国の地理に詳しいのはリーグさんであるが、抜けた組織の問題やらリント王国では今も濡れ衣により手配の真っ最中かも知れないので連れて行くのは得策ではない。

他のリント王国組もダグさんは半年もトリシャさんと引き離す訳にもいかず、かといってメリーさんを長旅に連れ出すのは気が引ける。

『これは困った。 護衛は騎士団の方々が居るから別に良いのかも知れないが、はて、どうしたものか?』

などと僕は悩んでいたのであるが、どうやら僕の知らない所で家族会議が開かれたらしく、メリーさんから、

「では、リント王国式のレディーの挨拶の練習を始めますよ」

と、行った先で恥をかかない様に挨拶の練習から初めているベルが居た。

『えっ、ベルがついて来るの?』

と驚きながらも僕はテイカーさんに、

「ベルが来る事になったんだね」

と聞くと、彼は、

「旦那様が故郷であるリント王国から帰って来なくならないか心配でベルちゃんがどうしてもと…あんなに必死に言われたら応援しない訳には…」

と、どうやら家族会議の時にベルが旅のお供の枠を勝ち取るために皆に必死にお願いしたらしく、テイカーさんは、

「まぁ、商会の事などはお任せ下さい。 ただ、出発前に山積みの魔鉱鉄の装備の修復だけは…あの量は旦那様にしか直せませんので、可能ならば半年分ほどお願いします」

と、僕にもベルの礼儀作法の猛特訓に負けないぐらいに出発前の一仕事を振って来たのだった。

それから連日僕は、留守の間にギャンさんの店にて販売する魔鉱鉄の装備を修復したり、留守の間の商会の事等をテイカーさんと打ち合わせしたりと忙しく過ごしたのである。

そして、結局のところベルの新装備を先に作った事により出発前までに僕専用の新型ゴーレムの完成は間に合わず、バラッドさんから、

「王都からリント王国に向かう時迄には…なんとか…」

と、地竜狩りなどで成長しているジェロニモ号に使っていた愛用のコアも新型に乗せ変える為に調整をクリスト様に依頼し、代わりにジェロニモ号には新しいコアを乗せて持って行く事となり、新装備で強くなったベルに比べて僕のみ戦力が微妙にダウンしたような旅立ちになりそうな事に不安を覚えてしまう。

なので、

『せめて作業小屋の地下にある魔法の杖などのマジックアイテムを修復して持って行ければ!』

と考えた僕は、ライト兄さんとイデアさんの愛の巣へと向かったのであった。