軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第147話 勝ち取った

日が差し込む沼地にて、

「はぁ~、疲れた…」

と僕はボロボロになったジェロニモ号をマジックバッグに押し込みながら、

『修復用の魔石はシスターさんの治癒魔法に回したからな…最後まで動いただけ上出来だったよ』

と自分なりに納得している。

さて、これまでに何が有ったかというと、地竜達に夜襲をかけられた仕返しとばかりに夜明けと共にアル君が見つけた奴らの溜まり場である沼地エリアを取り囲んでやったのである。

沼地の見下ろす四方の高台でマジックバッグからゴーレムを取り出して、カサール建設の建設用ゴーレムは弓隊の砦代わりとなり、ゼルエルガさんとカイン様の土魔法による遠距離攻撃を合図に作戦を開始した。

普段地竜達が居る温泉地帯ほどではないが、沼地の底からも温泉が沸いているようで、どうやら微かに暖かいと思われる沼のほとりに固まっている地竜の群れのなかで一際大きなボスのみを目掛けて、クリスト様の細かい指示が再現可能なノーマルゴーレムがボスにしがみつき足止めをし、僕のジェロニモ号が反対側の足をロックオンしてひたすら殴り機動力を削ぎ、武器を持つ王都で作られた最新型が部位破壊を目指して斬りつけて弱らせて仕留める作戦である。

騎士団や森の民の方々には、

「ゴーレムに当たってもかまわないからボスをメインに弓で攻撃をして下さい。 周りのザコ地竜は後回しで構いません」

という作戦が伝えられており、この群れを統率しているボスを最初に倒してしまえばジェロニモ号だけでも普通の地竜ならば二体撃破した実績もあり、最新型のゴーレムであれば武器も扱えて更に楽に凪払え、あたふたした地竜など怒りに燃える森の民の猛者達の前には只の獲物となるはずである。

そして実はこの作戦には裏テーマが有ったのである。

それは本来ならば魔法師とゴーレム乗りの二人一組で乗る想定の複座式の最新型ゴーレムには、ニルバ王国サイドの指示により森を焼き払いそうな火魔法の使い手に代わりロイド君が乗り込んでおりコックピットの拡声魔道具にて細かい指示を出すという大役を果たし、見事にボトム公爵家の子供としての初陣を飾るというものだ。

そして、これが無事に終われば『一緒に戦った』という実績からコーチャー王国という飛び地の傘下の小国に援助をするにしても自国の貴族達から反対なく色々と行える様になるらしい。

僕としては、

『まぁ、ロイド君が姫様と結婚なんて事になったら甥っ子の為に国王陛下も色々とやってあげたいわな…』

という事で面倒臭い貴族社会のしがらみまで含んだこの討伐作戦であるが結果として、

『ゴーレムをこれだけ投入したら…そりゃあ…ねぇ』

という程にボスが部下達に指示を出す暇さえも与えずに取り囲み、タコ殴りが始まり、尻尾や牙による攻撃をジェロニモ号とクリスト様の操るノーマルゴーレムが至近距離で受けている隙にロイド君と正規ゴーレムパイロットさんの乗る最新型が討ち取り、あとは蜘蛛の子を散らす様に逃げ回る子分達をロイド君の、

「あとは無理に倒さなくて大丈夫なので安全第一でお願いします!」

という指示の元でコーチャー騎士団や魔鉱鉄の武器を持った森の民の狩人達が軽く間引いて、作戦は終了したのであった。

そこで僕は、

『あれ、僕が一番危ない場所で戦ったのでは?』

という事実に気がついたのだ。

遠隔操作により安全な位置からゴーレムを戦わせていたクリスト様と、武器を持ち相手との間合いをとりながら戦った最新型に乗るロイド君達に比べ、僕は拳が当たる至近距離でガジガジと齧られ、尻尾でシバき回されながらも泥臭く食らいつき、ボロボロになって戦ったのである。

微妙に損した気分にはなったが、ガルバさん達も仲間の敵討ちが出来て、コーチャー王国も隣の森の民との絆が深まり、ニルバ王国としても存在感を示せたので、

『まぁ、ヨシとするか…』

となった僕はとりあえず、

「ロイド君、マジックバッグ持ちさんやアイテムボックス持ちの方を集めて皆で獲物の解体を始めない?」

と提案し、錬金素材になる地竜の血や心臓といった希少な物を時間停止状態で持ち帰ったり、食べられた可能性のある方の遺品捜索などの地竜の解体作業を1日がかりで行い、一旦壁で囲った集落まで戻り、その日は休む事にしたのであった。

大がかりな討伐作戦の成功により、参加していた皆さんは勝利の余韻で興奮するかと思われたが数日前からバタバタと、ろくに休めて居なかったのもあり殆どのメンバーが泥にまみれたまま寝返りもうたずに翌朝まで眠り、目覚めた後に落ち着いて辺りの仲間を見て、

「腹も減ったが先に水浴びでもするか…」

となった。

なのでテントの中に風呂桶を出してダグさんに水を溜めてもらい、残ったジェロニモ号の魔石などを使い魔石式湯沸かし棒にて風呂を用意して、

「はい、女性はこちらで入浴を…」

と、ゼルエルガさんやコーチャー騎士団の女性や森の民の狩人の女性陣に解放し、男性陣はクリスト様にお願いして川の隣にショベルゴーレムで浅い穴を掘り、隣の川の水を引き込んで池を作った後に、今回殆ど出番の無かった王都から派遣された火魔法師の青年に、

「兄さん、一発ぶちかましていただけますか?」

とお願いすると、彼は僕の意図を理解したらしく、

「ようやく見せ場か…」

と魔力供給魔道具を使い、ちょっとやり過ぎなぐらいその池に火魔法を叩き込み、池の水を沸かしてくれたのである。

若干女性陣の風呂より水の透明度やらなんやらが劣るとはいえ、そんな事を言っていられない程に、戦いや解体で汚れた男達を丸洗いするにはこんな池をあと2つばかり必要とした。

その後、ウチ商会の石鹸でさっぱりした戦士達がやっと森の民のメイン集落へと帰って、皆に作戦の成功の報告と、森の民の、

【仲間を殺した魔物の肉は出来るだけ多くの仲間に配り、その肉を食べ返す事により仲間を追悼する】

という風習に従い地竜のボスの肉を振る舞い、生き残った全員で作戦の成功と犠牲になった集落の方々の追悼を行ったのであった。

さて、腹も膨らみホッコリしたのであるが、そこからがまたややこしくなって来たのである。

それは、ガルバさん達森の民の方々がゴーレムの強さに感銘を受けて、

「あれって、俺たちにも売ってくれないか?」

と相談して来たのである。

我が家で好き放題改造したりしているが、基本的にはニルバ王国の秘密兵器であり、ルーベルさんが念話により王家サイドと相談した結果、やはり、

【ニルバ王国の貴族か、傘下の国の王家にしか売ることは…】

という回答が帰って来ると、森の民の方々は、

「えっ、隣のコーチャー王国がニルバ王国の傘下に入ってるのなら俺たちは王様とかないからさぁ、コーチャー王国の仲間に入るからコーチャーの国王様から何とか話をつけてくれないか?」

とモリブ騎士団長に相談しているほどであり、モリブ騎士団長も、

「いや、実はコーチャー王国としてジョン殿の操るジェロニモと同じタイプのゴーレムをニルバ王家に頼んでいたのだが、傘下に入ったばかりで実績もなくまだ売れぬと…代わりに魔物避けの壁の建設の支援を受けていて…」

と、コーチャー王家にもまだ販売してもらっていない事を話すと、それを聞いていたロイド君が、

「では、狩りすぎた地竜の一部をコーチャー王国の傘下に入った森の民の方々からニルバ王家に忠誠を誓うプレゼントとすれば、これでコーチャー王国はニルバ王国の傘下として国土を広げたという実績になりますので、あとの交渉は私に任せてくれませんか? パンチャーゴーレムであればコーチャー王国と森の民の方々の分の数体であれば何とか出来るかも…」

と提案したのであった。

すると、姫様とまだ婚約すらしていないのにも関わらず、ロイド君はコーチャー騎士団だけではなく森の民の方々からも、

「流石は、ロイド様」

「ロイド様頼むぜ!」

などと、彼らからの信頼を勝ち取っていたのである。