軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第145話 森の民の一大事

勇気の首飾りが最期の一押しとなったようでトラウマを克服したのかガルバさんは現在絶好調で、

「リーグ殿の魔物の心の声が聞こえるというのは便利だな」

などと人の心が読めるが魔物の心は全く読めないガルバさんはリーグさんのテイマーギフトにより意志疎通が出来ないまでも声という形で魔物の位置が把握できる能力についての会話をしながらでもカサール周辺ではあまり見ない種類の魔物達をバッタバッタと殴り飛ばして倒している。

『まぁ、たまに勢い余って体内の魔石が砕けるほどのパンチを食らわすけど…』

とは思うが、これ以上ガルバさんに近づくと、そんな僕の心の声が聞こえてしまう。

しかし、こちらもガルバさんとの距離感(物理)が分かってきた為に、いまは問題なく一緒に狩りを行えている。

このヤトル山脈の森は冬だというのに魔物がまだ多く見られ、ガルバさんも、

「どうやら今年は地竜の縄張り争いも激しくないのか、魔物も落ち着いてるな」

というぐらい順調に森での狩りを行えている。

地竜の越冬地にて縄張り争いが多い年は、越冬地を追われた負け地竜が思わぬ場所に実現して、森の魔物の生息地が変わったり、下手をするとスタンピードへと発展するので、

『まぁ、仲良く過ごしているなら良いんだけど』

と感じる地竜君をお土産に1頭ばかり狩ろうとしている自分が少し悪者にも感じてしまう。

だけど、既にジェロニモ号をフルパワーで半日ほど運用できるほどの魔石を手に入れる事が出来ており、

『いつまでも森の中で暮らしている訳にもいかないしなぁ~』

という事で、

「そろそろ地竜を一頭ほど倒して帰ろうか?」

などと皆で話していた夜の事、寝泊まりさせてもらっている集落の集会場である洞窟には多くの怪我人が運び込まれて来たのである。

中には数日前に狩り場近くで出会ったダダンというサイ顔の男性が片腕を失った状態で、

「オレは後で構わないから集落の奴らを…」

などと言っている。

この緊急事態に僕たちも手分けして続々と運び込まれる人の中でも重傷そうな方から応急処置ではあるが、ダンジョンや錬金ギルドにて入手していたポーションをマジックバッグから全て吐き出し、飲んでもらった。

だけど、町中で冒険者と喧嘩して肋骨を折られた痛い経験からかなりの量のポーションを常備していた僕たちだというのに、どう考えても応急処置は出来ても完璧に回復するほどのポーションは持っていない。

「オレは要らない…」

などと、冷や汗を流しながら我慢してポーションを拒否するサイ顔の男性に、

「お願いポーションを飲んでよお兄ちゃん、ほら、もう血が…」

と、固く縛った傷口からまだ滴る鮮血だけでも止める為に懇願しているガルバさんの家で暮らしている女性が一人いるのだが、ダダンさんとやらは、

「オレがもっと強ければ!」

と痛みと悔しさで顔を歪ませているのである。

しかし、次の瞬間にガルバさんの第三夫人であるシシルさんがダダンさんの頭を「スパコーン!」とシバいて、

「黙ってポーションを飲みな、これ以上床を血で汚されたらかなわないからね。 それに、森の民の男が負けたままで終わる気かい?!」

と言いながらダダンさんの口にポーション瓶を突っ込んでいたのであった。

何とか僕たちも参加した応急処置も終わり落ち着いて話が出来る様になった彼らからガルバさんが話を聞くと、どうやら、ヤトル山脈の際に位置する彼らの集落が地竜の集団に襲われたそうだ。

集落を守る丸太の柵はなぎ倒され、家畜は食い散らかされて全滅、住民も出入口を地竜に固められ地竜の足元を縫うように逃げ出さなければならず囮となった者の半数は命を奪われ、後の半数は怪我をしながらもなんとか子供だけは無傷で守りきりこの集落まで逃げて来たのだという。

失った右手からの出血も止まったダダンさんはガルバさん率いるこの集落の狩人達に、

「一頭ずば抜けてデカい奴が居た…」

と奴の姿を思いだし、青ざめる顔で僕たちに伝えると、その場の狩人達の顔が強張り、

「上位種か!?」

と口々に呟き、ザワザワしていたのである。

ガルバさんの話では、地竜と呼ばれているティラノサウルスもどきのような魔物の中で、成長に伴い様々な特性を持つ個体があり、希に知能が高く周辺の同族を従えるという上位個体が現れて大きな被害を集落に出すのだそうで、ガルバさんは、

「悔しいが敵討ちは後日だ…ダダンの居た集落の家畜を食って暫くは奴らも満足しているだろうから、この隙に他の集落から狩人を集めてくれ」

と指示を出し、そして僕たちに、

「皆さん、ポーションのこと心から感謝致します。 しかし、上位種が居る地竜の群れとの戦いは森の民としての宿命…それに皆さんを巻き込む訳にはいきません」

などと、遠回しに帰るように促すのである。

しかし、僕たちとしてもこれまでこの集落に寝泊まりしていた事もあり、すでに怪我人だらけの集会場を目の当たりにしており、ウチのメンバー達も、

『はい、そうですかって訳にはいかない』

という気持ちだったようで、ルーベルさんが、

「王都経由でコーチャーの城まで通信魔道具網にて救援要請が出せます」

と言ってくれたので、彼に、

「モリブ騎士団長さんに魔石での返済を何年か差し引くからポーションのお使いと、森の民の方々に貸し出したいから渡してた魔鉱鉄の武器のレンタルを頼めるか聞いて! あぁ、あとカサール建設のゼルエルガさんとカイン様の師弟コンビをこの集落の守りに派遣してくれないかクリスト様に聞いてみてくれますか?」

と頼み、ガルバさんには、

「コーチャー王国から助っ人が来るかどうかはまだ分からないけど、少なくとも僕たちは微力ながらお手伝いするつもりだから」

と告げたのであった。

ダグさんが炊き出し担当として避難してきた方々に集落の料理上手の方々と食事を用意し、リーグさんは辺りを警戒し、夜目が効かないガーはもしもの時の警報がわりに広場近くの屋根に待機し、バルディオさんはアル君とチームになり狩人達からもしもの時の為に魔石を買い集めてもらっていると、ルーベルさんから、

「返事がありました」

と、通信魔道具網でコーチャー王国からの返事がニルバ王国側に届いたらしく、クリスト様がゼルエルガさんと共に僕たちの助っ人に来てくれるそうで、

「弟であるカインが行くのなら…」

とロイド君もニルバ王国から派遣された騎士の方を連れて来ると言ってくれたそうで、ならばコーチャー王国としても姫の手前騎士団を出してロイド君を守る流れとなり、モリブ騎士団長さんとしては、

「返済が軽くなるなら!」

と、いつになくやる気を出して此方に向かう準備に入ったらしい。

明日の朝一番に出発して夕方までには到着する予定らしく、ルーベルさんは、

「追加で届けるポーションなどの代金はコーチャー王国へ送ったニルバの者に立て替えさせたから心配無用とボトム公爵様よりジョン殿に伝言がありました」

と教えてくれ、僕が、

「えっ、ロイド君パパが!?」

と急な公爵家の当主の助力に驚いているとルーベルさんは、

「公爵様はジョン殿にカイン様やロイド様の件で大変感謝しており、こんな時でもないと恩返しが出来ないのでと申されております」

と言ってくれたので僕は、

「感謝致しますとお伝え下さい」

とルーベルさんにロイド君達のパパへの伝言をお願いした。

そして僕は、

『魔石は使えないけど僕の魔力が続く限り皆さんの装備を修復なら出来るな!』

と、魔力切れで倒れるのを覚悟しながら日々の狩りで刃こぼれした集落の皆さんの武器や皮鎧等を手持ちの獲物の革などを素材として使い修復し続けたのであった。

そして、魔力切れでぶっ倒れた僕が目覚めた時には近隣の集落からの助っ人やコーチャーからの応援が到着しはじめており、

「コーチャーから来た治癒師です」

という女性の声がしたかと思うと、以前コーチャーの東の集落で出会ったシスターが集会場に入って来て、地竜の群れから集落の皆を逃がす為に戦った方々が傷を負っている姿を見て一瞬声を失った様子だったが、彼女はすぐに、

「ポーションを運び込んで下さい」

とコーチャーから一緒に来た騎士団の方々に指示を出し、

「ゼルエルガ先生に魔力供給魔道具の試験を受けて合格したというのに…春にカサールまで行っていたのでは間に合わないですね」

と悔しそうに呟くのを聞いた僕は、

「回復魔法のギフトをお持ちですか?」

と彼女に聞くと、シスターさんは、

「あっ、勇者ジョン様!」

などと、少し嫌な事を思い出しそうな呼び名で僕の事を凄く可哀想な子を見る目で見つめるので、

「今後、勇者様って呼んだら泣きますよ! って、それよりゼルエルガさんから魔力操作の試験を受けたんですね?」

と確認を取ると、彼女は、

「はい」

と答えてくれたのを聞き、

「アル君、買い集めた魔石を持って来てくれるかい?!」

と指示を出し、どうやらロイド君達も集落に到着しているだろうが、彼らへの挨拶を後回しにした僕は、アル君に魔石を用意してもらうと自分のマジックバッグから魔力供給魔道具を取り出して、

「僕の魔力供給魔道具はリペアの魔法用に光の魔力の回路が組まれているので治癒の魔法にも使えます」

と言って彼女にそれを装備してもらい、ランドセルのような魔石タンクにアル君から受け取った魔石を詰め込みながら、

「僕のサイズに合わせてるから少し窮屈だったらゴメンね…」

と、言っている本人が微妙にダメージを食らう【自分がチビで諸々キツキツな件】を彼女に謝罪してから、

「使い方は分かる?」

と聞くと、

「実際に使うのは初めてでして…」

と彼女が心配そうに答えるので、暫くは彼女に付き添って魔力供給魔道具の使い方をレクチャーしながら怪我人の治療の手伝いを行ったのであった。