軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第140話 地竜を探して

魔鉱鉄の装備類を吐き出し、ようやくマジックバッグに空きが出来たので僕は、

「では、一狩り行きますか!」

と元気に旅の準備を整えている。

秘密裏にモリブ騎士団長に罰を与える事になった為に、未だに国中で、

『姫にフラれた可哀想な奴』

という微妙に居づらい空気が漂うコーチャー王国から僕は、皆を連れて一旦出る事にしたのである。

しかし、カサール建設の預かりとなり師匠のゼルエルガさんと壁作りをしているカイン様と毎日楽しそうなロイド君はコーチャーに残しているのでルーベルさんもコーチャーに居れば良いのに、

「いえ、ジョン殿が動かれる際には同行して王都への報告しなければなりません。 それに現在はコーチャーにはカルセルと連絡出来る通信魔道具が有りますのでカルセル経由で王都とも通話出来ますし、近々陛下からの指示で数名の者がコーチャーに参ります」

などと、それっぽい事を言ってはいたが、ルーベルさんの口から、

「それと、国王陛下より【姫にフラれた勇者ジョン殿】についての追加報告を優先する様にとの指示もありましたので…」

と、どうやらニルバ王国の王都にある城の中では、ルーベルさんからの報告により甥っ子であるロイド君に憧れの姫を取られたと評判の僕の反応を楽しんでいた国王陛下という意地悪な人間がニルバ王国サイドには居るらしく、僕は思わず、

「なんだよ、皆して!」

と幌馬車の中で拗ねるのだった。

まぁ、ルーベルさんは情報収集のプロであり、既に僕が巻き込まれ事故でこんな可哀想な事になっているのを知っており、

「国王陛下もジョン殿の事を気の毒には思って居られますよ。 ただ、公爵家の息子と新たに傘下に入った飛び地の国の姫との恋という物語には必要な要素だと仰っておられ…」

などと、全くフォローになっていない追加情報で僕にトドメを刺しに来ているので、僕は幌馬車の他のメンバーに、

「酷いと思わないか皆ぁ! 人の不幸を楽しむような国なんて、もしもニルバ王国のアチコチにまで変な噂が広がったら僕は国を出て行こうと思うんだけど?」

というと、アル君は、

「カサールにはテイカー師匠が居るので商会の事は安心ですし、自分は何処にでもついて行きますよ」

と言ってくれ、リーグさん達も

「えっ、一緒に行くのは当然ですが、カサールに居る皆もついて行きたいと思うので、先に移り住む土地をこのまま探しますか?」

などとノリノリで他国に移り住む案を出してくれているのであるが、ルーベルさんだけ大慌てで、

「ちょっ、本当にそれだけは…」

と、僕たちを引き留めるのに必死である。

まぁ、監視役として見聞きした事を全て念話ギフトにて報告はしたものの、ルーベルさんとしても僕の件で楽しんでいる王都の方々に少し呆れてもいたらしく、彼は、

「では、定時連絡の時に本国にはジョン殿がこのままでは他国に出て行かれると報告致しますので、一旦他国への引っ越しを無しにして頂けるのであれば、その時に何かしらジョン殿のためになる褒美を宰相閣下から引き出してみせます!」

などと、こちら側に寝返ってくれた。

『えっ、良いの! でも大丈夫なのかな?』

とルーベルさんの立場とかを心配してしまうが、彼としては、

【あくまでもボトム公爵家の人間】

というスタンスであり、王城にて燻っていたロイド君さえ何か刺激を受けてくれればと引き受けた監視役である為に、外に出て他人とふれあい、そして成長して今では若干ロイド君の好みを疑うが、本人が好きだという女性まで現れたので、

『目的は果たせたし、監視役としての義理も十分やった』

という判断であり、

「私は国ではなくボトム公爵家側の人間ですので、ロイド様の成長を手伝っていただいた恩を家人として返すだけです」

と言いながら今までになく悪い笑顔を見せてくれて居るのであるが、多分これがルーベルさんの素であり、僕は、

『怖っ、ルーベルさんはあまり怒らせないでおこう』

と野生の勘が働くのであった。

という事で我々がやって来たのはビスティア地方を南北に通る街道から東に向かう細い道を辿り、広大な森に小さな集落が集まって形成されている自治区のような場所である。

地図上ではコーチャー王国の隣に位置こそするが、メインの街道から少し離れた場所でありギルドや商会も無く、コーチャーからの行商か、集落からコーチャーへの買い出しで何とかなっている場所である。

住むにはかなり不便であるが、魔物の生息地としては最高の場所らしく、猛者達が魔物を狩って暮らす狩人の土地なのだそうだ。

コーチャーの冒険者ギルドにて地竜の情報を集めるとギルド職員さんから

「地竜なんて、何もワザワザ探しに行かなくても隣のヤトル山脈に行けば何時でも居ますよ。 まぁ、縄張り争いで気が立っている場合は近づくのはオススメしませんがね」

と教えてもらったのである。

地竜は前回コーチャーの東集落に来たスタンピードを起こした張本人にでもあるためにギルドでは、

「この時期は越冬の為に地竜は群れている可能性が高いですので、山脈の梺の集落で協力を頼んで下手に追い回したり追い回わされてスタンピードに発展しない様にだけはしてくださいね」

と釘を刺されてしまい、職員さんのアドバイス通りに、コーチャー王国の数少ない名物の一つである葡萄酒を1樽持って森の民と呼ばれているヤトル山脈の梺で暮らす方々の集落に来たのであるが、僕たちが協力を仰ぐ為に族長さんに話を通そうと、第一村人となるムキムキのウサギ顔の男性に、

「あのぉ、族長さんってどちらに居られますか?」

と聞くと、

「はぁ? なんで教えてやらなきゃならない!」

と突き放されてしまう。

これはコーチャー王国で聞いた通りの反応なので、僕たちは別に驚きはしないが、

『こんな感じだから隣のコーチャー王国からも気持ちの上で距離を置かれるんだよ!』

と呆れてしまう。

彼らは純粋に力こそ全てという方々であり、強い人には従うが、そうでない場合は見返りが無いと質問にすら答えないという徹底した実力主義かつ損得で動くという思想の方々である。

ヤルト山脈周辺の事なら隅から隅まで知り尽くしているが、それを聞き出すのに一番強い族長を探し出して、族長から、

「よし、協力してやる」

というお墨付きが出るまでは、質問一つするのにもこうやって、

「あっ、そうそう! コレ新鮮な野菜ですので、是非どうぞ」

などと、手土産として森では手に入れにくい根菜や焼き菓子に酒などをチビチビと差し出すしかないのだ。

『まぁ、財力という力に屈していると言えば完全な力のみの社会なのかな?』

などと感じるのだが、ニンジンを受け取ったムキムキウサギさんは、ニコニコで、

「ここには居ないよ、二つほど向こうの集落が中心地だからそこを目指しな」

とだけ言うとそれ以上は、

『どっちの方角の集落を二つか』

などという情報を何一つ出さずに、もらったニンジンの中から1本を取り出してカリッと噛りながら自分が狩ったらしいイノシシ魔物の皮の加工をはじめてしまう。

『これ以上知りたかったらもっと寄越せという事か?』

と更に呆れる僕は、耳だけこちらに向け、

『さぁ、追加の質問をしてこい!』

という雰囲気が見え隠れしながら作業をしているムキムキウサギさんを哀れむように眺めながら、

「ありがとうございました」

とだけ伝えると、向こうで、

「えっ!?」

と驚くムキムキウサギさんを普通に無視してリーグさんに、

「悪いけどガーに偵察を頼むよ」

とお願いする。

すると、リーグさんの従魔であるカラス魔物のガーがムキムキウサギさんを馬鹿にするように彼の頭上をぐるりと回ったのちに空へと高く舞い上がったのであった。

『ムキムキウサギさんよ。 がめつく手土産を狙ったのだろうが、二つ先にある大きな集落という有力情報を馬鹿正直に渡したのが敗因だな…かと言って、もっと巧妙な駆け引きなんてされたら疲れちゃうし、脳筋な方で良かったと考えるべきかな?』

などと、まだ始まったばかりなのに既にこの地域の方々とのお付き合いに少し嫌気が差してしまう僕であった。