軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第117話 我が家が一番

ノリスさんとマイラさんのお孫ちゃんでアライグマ風のモフモフベイビーであるカリナちゃんとも何とか仲良くなり僕が抱っこしても泣かなくなってくれた。

『ふぅ~、スタンピードよりこれが一番手強かったぜぇ』

と、ジェロニモ号で無双したスタンピードよりも時間と労力を費やしたがそれに見合う満足感を僕は噛み締めている。

そして、未来の米の契約農家候補も見つかりこの東の集落で米が安定して収穫出来るまでは、カレーのレシピや米の炊き方のコツを教えてあげた先日集落に後片付け要員として来ていたシスターが実家に手紙を出してくれたらしく、実家のある村から米作りのプロを1人東の集落に派遣してくれる事になった。

しかもシスターの生まれた村からも直接ウチの商会に米を売ってくれるそうで、

『ヤッター、米が手に入る! カレーにチャーハンとかカサールでもリィースの消費が増えるだろうから仕入れ先が複数あるに越したことはないな』

ということで、今後のお付き合いの為にウチの商会の名前で米作りの指導員や米作りにチャレンジしてくれる農家さんへのお金を里長さんに託して集落の事業としてお給料を出す事にしたのである。

となると、この東の集落は実質我が家の商会の傘下みたいなもので、今回の様にスタンピードやクーデターで国が傾いていただいては大変迷惑な話となる為に、国王陛下には、

「スタンピードやら地竜のお礼は僕ではなくて東の集落に返して下さい。 でも東の集落だけ贔屓したら他の国民に嫌われますので満遍なくヨロシク」

と、この国に残って貴族になりイノシシ魔物であるボア顔のパパから生まれたイボイノシシ魔物であるンギリにそっくりな第一王女のエカテリーヌさんとの婚約のお話を丁寧にお断りした僕は、このコーチャーの国から、

「では、何かありましたらニルバ王国の西にありますカサールの町のジョン商会に…」

とだけ伝えて逃げ帰ってきたのである。

正直なところクーデターでコーチャー王国を乗っ取ろうとしたゴリラ顔の貴族が特別あからさまだっただけで、獣人族の中には一定数ヒト族嫌いが居るのも確かだし、僕1人が獣人族と仲良くなった所でそれは変わらない。

しかし、僕というきっかけで獣人族とヒト族の交流が少しでも盛んになれば、もしかすると未来はちょっと良くなるかも知れない。

そう、だから僕がクーデター失敗から逮捕されて地位を失ったゴリラ顔の貴族のオッサン替わりに貴族になったり、そのゴリラ顔のオッサンの息子と婚約していた娘さんのエカテリーヌさんの傷心を慰めてあげて僕が次期コーチャー国王になったとしても、

『それは権力でヒト族に反感を持つ人を黙らせるだけの結果になるから、それではダメなんだ!』

と、すっごく自分に言い聞かせ、すがり付くコーチャー国王とエカテリーヌさんを振りほどき猛ダッシュで逃げるように帰ってきたのが、春先の事であった。

『本当に危なかった』

と何度も思い出していた僕を乗せた馬車は、途中、雪で数日足止めを食らいながらも到着したカサールの我が家で、

「我が家が一番落ち着くなぁ~」

などと定番なセリフを口走りながらメリーさんの煎れてくれたお茶をすすっているのである。

だが、何故かは知らないが我が家には、アンドリューさん達五人の冒険者が現在も居て、

「主殿!」

などと、僕を「ジョンの旦那」という呼び方をやめて正式な商会の護衛冒険者になってしまっている。

「東の集落から分けてもらった地竜の素材で作った装備をプレゼントしたらAランク冒険者パーティーを目指してカルセルに帰るのかと思ってましたが?」

という僕にアンドリューさんは、

「まだ恩が返しきれてません」

とか言っているが、実の所は、

「あんなに旨いご飯にありつける場所は、他には無いモン!」

という、ヨシュアさんのセリフに、ゲインさんも、

「ウム、確かに」

と頷き賛同しており、トリシャさんは美味しいご飯ではなく美味しいご飯を作るダグさんが目当ての様で、

『ある意味、胃袋を掴まれたってヤツかな?』

と僕的にも納得したのであるが、約一名ミュミュさんだけは、

「あんなのを見せられて、惚れない女は居ないですから」

と僕にすがり付くので、一瞬、

『モテ期到来!?』

と、エカテリーヌさんに続き

『いやぁ、どう言ってあげるべきか?』

などと自惚れていた自分を今は挽き肉にしてやりたい気分である。

そう、彼女は僕ではなくて、ジェロニモ号の勇姿に惚れ込みパイロットとしてゴーレムに乗りたいらしく、今は仲間の皆と国の定める試験をパスする為にカサール子爵様の所でゴーレムのパイロット訓練生に混じって頑張っているのである。

『良かったぁ、へんな事を言っちゃう前で…』

と、危うく恋の致死性の落とし穴に飛び込み、とんだ勘違い野郎が爆誕する所であった。

真実を知った僕としては、

『まぁ、いざという時の戦力にはなるし、イデアさんがお嫁に行ったから商会の馬車の護衛が欲しかったところだったから良いけど』

と、彼らの雇用についてはテイカーさんに丸投げしておいた。

それからの居間にて各種業務報告をテイカーさんから聞いた後に、彼が集めてくれた資料等に目を通した僕は、

「よし、バッチリ覚えた!」

と、分厚い資料をパタリと閉じてから、成人して我が家の商会の商人としての人生を歩みだした我が家の子供チームのリーダー的存在であったアル君に、

「バルディオさんに護衛としてついてもらうから、オリーブオイル農家を幾つか仕入れ先として見つけてくれるかい?」

と仕事を任せ、つぎは居間の端っこで夏に始まる学校を最速にて進学&卒業を狙い猛勉強している我が家の子供チームと、文字カルタにてまずはニルバ王国文字から奥様チームと遊びながらお勉強を始めている幼い三人に負けない様に、僕も自分の研究を開始する事にした。

『さて、どこから始めるかな?』

と考え、先ずはエルバート師匠の工房にて錬金術の薬品調合の基礎を習いに向かう。

これは別に本格的に錬金術師になる為の修行ではなく、僕が新たにカサールの新町の皆の生活の為に始める石鹸工場にて、創薬の技術と前世の知識を使って高品質で今までに無い商品を安価で提供するべく、他の錬金術師に外部委託して出費しなくても香りや有用成分の抽出などを行う為の修行である。

その後、僕の留守中にテイカーさんが集めてくれた素材と資料でコツコツと試作品を作り、石鹸産業で商会の収入を安定させて新町の皆さんに職員としてお金を分配できるようにしたい。

しかし、師匠から創薬の手解きをしてもらった翌朝の事、研究に入る予定をキャンセルさせられた僕はテイカーさんと共にカサール子爵様のお屋敷に呼び出され、面倒臭い事にリモートにて国王陛下や宰相様から質問責めにされたのであった。

内容としては、

『お前は外国で何をしてきた?』

という内容であり、僕は正直に、

「えっ、ウチの商会の畑担当の夫婦に孫が生まれまして、顔を見るのとお祝いがてらコーチャーっていうビスティア地方の国に行きましたが?」

と、答えたのであるが、通信魔道具の向こうの宰相様から、

「いや、赤子の顔を見るついでに型落ちしたパンチャーゴーレムで地竜種の魔物が起こしたスタンピードまで止めたらしいではないか?! おかげでゴーレム部隊の隊員達がコーチャー王国から届いた感謝の手紙の内容を知って、自分達の最新型でドラゴン討伐に行きたいなどと言い出しておる」

などと、呆れた様に文句を言われてしまい、

「いや、そんな事を言われましても…」

と、僕は抗議してみたのであるが、ニルバ王国の秘密兵器とも言えるゴーレムにてスタンピードを止めて、クーデターまで今はニルバ王家の武器となった試作品のバーストランチャーで鎮圧した為に、僕個人の仕業というには無理があるそうで、国王陛下からも、

「どうしてくれるのだ。 コーチャー国王は正式にニルバ王国の傘下に入りたいと使者が参っている。 あれか、余を帝国の初代皇帝にでもするつもりか?」

と言われてしまい、僕は、

「良いじゃないですか、ほら、武力でなくて感謝されて国が大きくなるのなら平和的で」

と言って、

「それに、皇帝陛下なんてカッコいいと思いますよ」

などと適当な言い訳を並べてはみたものの、問題はそんな簡単なものではなく、その後、僕は国の中心メンバーからもカサール子爵様からもミッチリとしぼられてしまい、宰相様から、

「カサール子爵家に人間を数名送る。 これは王家にそなたの行動を報告する為であり、彼らが到着するまで一切カサール領から出るでない!」

と僕は監視対象に決定した上に謹慎処分まで食らってしまい、これを拒否すれば、

「責任を取ってコーチャーにニルバ王国貴族として友好の為に派遣しても良いのだぞ!」

と脅された僕は、

「それだけはご勘弁ください!」

と、頭を下げたのであるが、同席していたクリスト様とゼルエルガさんに、

「普通は貴族に成りたがるんだけど?」

「ジョン殿は変わってますね」

などと呆れられてしまったのであった。