軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第110話 逢いたかったよ

カルセルにて冒険者ギルドマスターの部屋に通された僕は、

『相変わらず見た目だけは可愛いな。 これで現役時代はゴリゴリの前衛だったらしいから驚きだよ』

と、キャラクターの様な見た目と違い中の人の魂はゴリゴリ武闘派というギャップがあるモフモフ兎獣人のギルドマスターのピンチョスさんに、

「我が家の奴隷枠の冒険者の皆を解放したいんです」

とお願いすると、ピンチョスさんは、糸目のままポカンと口を開け可愛らしい前歯をチラリと見せながら、

「えっ!」

と固まった後に、

「皆、装備も何も無い状態からのスタートだったから、装備を買うまで返済をあまり出来なくって、ようやくまともにジョン君に返済を出来る様になったところだよ?」

と驚くので、僕が、

「えぇ、それが、あの日に我が家の一員になったご夫婦にお孫さんが生まれまして、めでたいから奴隷から解放して、スッキリした気分で孫に会ってもらいたくなりまして」

というと、ピンチョスさんも、

「それはめでたいけど…なんで?」

と、今一つ話の流れがピンと来てない様子に、僕は、

「ほら、一組だけ解放するなんて角が立つし、それに、アッチを解放してコッチは解放しないとか差別したくないから、それなら全員解放してあげたいなと思いまして」

などと、全員奴隷から解放した後にこれからビスティア地方へと向かう事などを伝えると、ピンチョスさんは、

「まぁ、ジョン君の奴隷だからボクチン的には止める権利は無いんだけどねぇ」

と理解を示してくれたのだが、ピンチョスさんは、

「でも、本人達がどう言うかなぁ?」

と言ってマスコットキャラの様な丸っこいフォルムのピンチョスさんが、ス~ッと息を吸い込むと次の瞬間に、

「どうせ聞き耳ギフトで聞いてるよねぇ、パーティー全員で部屋に入って来て良いよぉ~」

と、『よい子のみんな、こんにちわ~』ぐらいの声量でドアの方に声をかけると、先ほどカウンター前に居た冒険者三名と先ほどは居なかった二人の計五名の冒険者が、

「へへっ、バレてましたか、流石はギルマス」

などと気まずい笑顔で入ってきたのであった。

この五人はAランクで剣士の男性をリーダとして、男性三名、女性二名で構成された借金奴隷としての僕への借金を返済する為に組まれたBランク冒険者パーティーであり、ピンチョスさんが、

「まぁ、あとは本人達と相談してよ」

と、やる気なく僕に丸投げしたのであった。

どうせ聞いていたとはいえ、もう一度正式に解放の意思を伝え、僕としては、

『じゃあ、借金は完済扱いにしますので、これにて、おつかれっ解散!』

という気分であったが、リーダのアンドリューさんが、

「恩を返しきらずに『はい、解放します』って言われたら借金を返しきるまで禁酒している俺のこの誓いはどうしたら?」

と言い出す。

それを聞かれた僕は、

『知らんがな』

と思いつつも、

「おめでとう、もう飲めますね」

と彼の飲酒解禁を祝福したのであるが、アンドリューさんは微妙な顔をしながら、

「いや、こんな気持ちのままじゃ、たとえ最高の酒を呑んだとしてもモヤモヤしちまって不味くなっちまう」

と解放を拒否してしまうし、色男の弓の使い手の男性冒険者のヨシュアさんは、

「そうですぜ旦那ぁ、すでにかなりの自由を与えてもらってますし、やっと武器や装備を整えてこれからって時に」

と言い出し、ムキムキの斧の使い手男性冒険者のゲインさんも、

「我輩も皆と同様にご主人様に感謝しているのにそれに見合った働きも見せれずに野に放たれるなど」

と少し拗ねている。

獣人族とのハーフっぽい女性冒険者のトリシャさんは、

「え~、サポート役に必要だからマジックバックを買ってしまったからなぁ、繰り上げ返済するお金なんてないし、先に返済に回しておけば良かったんだけど、これも売れば幾らかには成るかな?」

などと、装備を売り払いなんとか正規の額の借金の返済を画策したり、最後の1人である小柄な女性冒険者であるミュミュさんなんかは、

「あまり魅力はないでしょうが、体で払う覚悟は出来てます」

と、体育会系のノリで、

『自分、行けます!』

みたいに体を差し出すという怖い提案をしてきてしまい、思わず僕は、

「バルディオさん、助けてよぉ!」

と、奴隷商人のテントでは彼らの先輩奴隷だったバルディオさんに泣きついてみたのであった。

それを見ていたピンチョスさんは、

「そりゃ、ジョン君に恩義を感じているのにそれを返すチャンスもなく、せめてお金という形でって素手で倒せる魔物からはじめてようやく元と同じレベルの装備を買ってジョン君に返済する為にガッツリ依頼を受けだした時だもんね」

と呆れながら、僕に、

「でも、ジョン君は奴隷を全て解放すると決めたんだよね?」

と念押しで聞くピンチョスさんに僕はコクコクと頷くしかできず、次にピンチョスさんは、五人の冒険者達に、

「で、五人はどうしてもクソみたいな奴隷商人から解放してくれたジョン君に恩を返したいと?」

と確認をすると五人もまたコクリと頷くのを見たピンチョスさんは、

「まぁ、ボクチンとしては奴隷に堕ちたとはいえ冒険者の皆が立派に冒険者として復帰できるまで見届けられたから満足だし」

と言ったかと思うと、五人の冒険者達に、

「なら、奴隷から解放してもらったあとは皆は自由の身になるんだから自由がウリな冒険者としてジョン君についていきなよ」

などと、こちらに丸投げし、更に、

「あの後、色々と仕入れた情報ではカサールの町でジョン君は中々の有名人…というか王国内でもかなりの有名人だから一緒に居れば恩を返すチャンスなんてゴロゴロしてるんじゃないかな?」

などと言い出し、結局カルセルからビスティアに向かう我が家の幌馬車の後ろに冒険者パーティーが遠征の為に購入した中古の荷馬車が続き2台でビスティア地方にあるコーチャーという国を目指しているのであった。

『五人ほど旅の仲間が増えたけど、バルディオさんの後輩的なポジションだったからバルディオさんに丸投げで大丈夫だよね?』

などと、馬車の荷台から後ろを走る荷馬車の五人を眺めながら、僕は、

『この旅で恩を返しきれたと感じてくれたら良いんだけど…』

と、ぼんやりと考えていたのである。

そして、その夜のこと、ニルバ王国の国境からビスティア地方へと入り町も集落も何もない街道脇にて野宿をする際に、旅慣れた冒険者五人のおかげで野宿の準備もはかどり、

『これは助かる! この分で行くと彼らからの恩返しとしては旅が終わる頃には十分だと言って普通の冒険者に戻ってもらえそうだな』

と、僕は1人で満足していたのである。

それから今晩の食事としてカルセルにて未知の食材やスパイスを購入した我が家の料理人兼、水魔法の使い手であるダグさんが、新たな食材に興奮気味に僕の記憶を頼りに再現した我が家の秘密のレシピをベースに、少し違うスパイスを混ぜた新作カレーを作ってくれ、そして、

「これ、前に坊っちゃんの言っていた『コメ』とかいう穀物じゃないかと思うんですが、ビスティア地方の一部で作られている【リィース】って名前だとマイラさんから教えてもらいましたが、調理が何だか難しいらしいのですぐには使えませんでした」

と言いながら、ダグさんとしては今回は仕方なく時間停止機能つきマジックバックからパンを取り出してカレーをパンで食べようとするのを僕は、

「ダグさん、それに皆、僕に一時間程時間を下さい!」

と、冒険者チームなどは未知なるカレーの香りにメロメロなのも無視して、僕は皆に綺麗な土下座をかまして晩御飯を待ってもらい、

「主殿?」

とか、

「旦那様!?」

と皆が狼狽えているのもほぼ聞こえず、幌馬車の旅用の荷物の中からフタつきの鍋を取り出して、ダグさんに、

「そのリィースとかいうのをマジックバックから取り出して見せて!」

とせがみ、目の前に出された麻袋の中身を見た僕は、

「神様、ありがとぉぉぅ!」

と暗くなった空に雄叫びを上げてから、周りの仲間からの冷ややかな視線も気にせずに、

「逢いたかったよ」

と優しく袋に満たされた少し長めの米に囁いた後に、鍋に前世の記憶を頼りに5合程取り出して、

「ダグさん水を!」

と、魔力供給魔道具により熟練度を上げたらしい彼の水生成魔法により、ワシャワシャと米を研ぎ、白く濁った研ぎ汁を捨てること数回、

『この世界の精米技術だからな、余計にしっかり研いでおくか!』

などと久しぶりの米の感触を堪能した後に、

「水加減も微妙だけど多分このぐらい!」

と、米の上に手を置いて手のひらが浸かる程の水を満たしたら、

「フフフン♫」

と鼻唄交じりに初めチョロチョロして行くと、僕の隣ではダグさんが興奮しながらメモを取っているし、それを見ているノリスさんは、

「旦那様、たしかその穀物ははもっと大量のお湯でグラグラと茹でるヤツでして」

などと心配し、マイラさんも、

「リィースは作っている地方でほとんど食べきりますし、豊作の年でも秋にしか出回らないので私もそんなに使った事はありませんが、旦那様がリィースを探しておられたなんて知りませんで、大変申し訳ありません。 私の知っている調理方法も茹でてからザルにあけるか、冬場のスープのかさ増しにしかならない穀物ですので」

と申し訳なさそうにしていたのであるが、僕は、

「良いの、良いの。 ほら、こうして出会えたんだからね」

とフツフツと鍋から吹きこぼれる仄かに甘く香る白い泡を眺めたまま答え、

「中パッパかな?」

と呟いていると、

「坊っちゃん吹きこぼれてますから」

と鍋のフタを取ろうとするダグさんを、

「ダメっ!」

と叱りつけ、彼に米炊きのイロハを教えるべく、

「今回は見ておいて!」

と言って誰にも鍋を触らせずに米を炊き上げたのであった。