軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第101話 ゴーレムファイト

カサールの町と王都の2ヶ所にて現在作られている新型ゴーレムの性能試験と、ゴーレム乗りの始祖というべきカサール子爵様が自ら鍛え上げたパイロット達の訓練成果を見せる為に、カサールと王都双方のゴーレム職人と乗り手の意地とプライドをかけたゴーレムファイトが今まさに始まろうとしている。

王都の壁の上部と一体化している見晴らしの良い高台の公園は見物会場となっており、そこから見える壁外の空き地にて新たにニルバ王国軍の武器として王家に今後の生産などの権利を献上したバーストショット、バーストライフル、バーストランチャーの3つの武器の試し撃ちから始まり、魔力供給魔道具のデモンストレーションに続き、王都のゴーレム部隊による武器を扱える様になった改修型ゴーレムによる基本の型披露や試し切りで、会場は盛り上りを見せており、そして今、拡声魔道具にて、

「それでは皆様、これよりニルバ王国にて作られた最新鋭の搭乗型ゴーレムによります模擬戦を行います」

というアナウンスにより観客達の期待は最高潮に達していた。

「これは凄いな…」

と、若干圧倒されている僕は現在、観客席の少し離れた席から注がれる兄弟子達の怨念の籠った視線に晒されており、

『いや、直接ライト兄さんにライバル心を燃やしてよ…同じカサール組として間接的に僕にまで色々と負けた悔しさを向けないで欲しいよ…』

と、変なプレッシャーを感じている。

兄弟子さん達の目が、

『さぁ、我らが作った最高傑作よ、リア充のライトの作ったカサール型を倒せ!』

と血走っているのであるが、僕としては、

『機体の性能よりも最後は乗り手の気合いと根性だ!』

という考えのカサール子爵様が鍛えたパイロットの騎士の方々の成長を信じているので、機体ではなくパイロットとしての彼らにエールを送る為に関係者席に並んでいるのである。

それに、露骨に兄弟子さん達に敵意を向けられているカサール型のゴーレムが哀れになり、心の中で、

『黒地に金なんて、ヤンキーのジャージみたいな配色のゴーレムに負けるな…』

と、この王都までの長旅を共にしたカサール型のゴーレムに念を送ると、その思いに応えるかの様に起動したカサール型が試合会場となる王都の壁の外の空き地に歩み出る。

拡声魔道具にて会場に響くアナウンス担当者の美声が、

「それでは、観客に被害が出る可能性がある遠距離武器の使用と、コックピットのみを狙う過度な攻撃は禁止とし、どちらかの敗北宣言、またはジャッジが勝負ありと判断された場合は試合終了となりますが、その他は実戦形式であり近接武器の使用は可能です…」

などという説明の後に、観客席の中央に居られる国王陛下の、

「始めっ!」

の合図で金属の巨人の格闘が開始されたのであった。

カサール型に乗るのはライト兄さんの護衛もしていた騎士チームのリーダーさんであり、一番カサール子爵様と気の合っていたゴリゴリ体育会系の男性で『剣術』ギフトの保持者さんである。

そして、ニューバルザック型に乗るのはゴーレム部隊の若手のエリートで『冷静沈着』ギフトというどんな状況でも100%のパフォーマンスが出せるという男性であり、いわば、

『絶対失敗しない系エリート』

なのだ。

つまり、ゴーレム部隊の中ではカサールの町に派遣された騎士達は若手パイロットの二軍扱いであり、格上グループのエースと戦う事になる為に観客の誰しもが、

『王都のエースが乗る新型バルザックが勝つな…』

と思っているであろう雰囲気を僕も肌で感じる。

しかし、観客の予想に反して初手は大型の斧を振り回すニューバルザックよりカサール型の方が身軽に動き剣での一撃を肩口に入れたのであるが、やはり黒地に金のカラーコーティングには硬化の機能があり、あまりダメージが入っていない様に見え、審判達も、

「有効打にはならない」

との判定である。

僕としては、カサール型の開発にはデザインにしか関わってないが、コンセプトとしてスピードを重視してパワーは若干控えめなのは知っている。

だからヒット&アウェイが理想的な戦法だと思うが、僕の知らないあのコーティングがどうやら曲者で、

『硬化コーティングか、こんなの思いつかなかったよ。 敵は硬いし、一撃は重い斧だし、こんなのカサール型勝ち目はあるのか?』

と心配になる。

勝ち筋があるとすれば今回は追加でコアへの魔力供給をしない為に長期戦にもつれこませて魔力切れを狙えばという手もある。

しかし、それを冷静に判断できるエリートパイロットの乗るニュー・バルザックは極力動き回らずに魔力を温存しつつカサール型のスピード重視の攻撃を装甲の固さで軽くあしらっており、このままでは先に魔力切れになるのは動き回っているカサール型の可能性が高い、

「よし、イケ!」

「一撃で粉砕しろ!」

などと、兄弟子達の勝利を確信したようにニヤケる顔を見て、

『クソ…全員お腹でも壊しちゃえ』

と、イケないお願いをしてみるが、その願いが叶って兄弟子達がトイレに駆け込んだとて試合での不利は変わらない。

そして、やはりエリートがエリートたる理由があるらしく、カサール型のスピードに徐々に対応しはじめ、カサール型の剣より重たそうなニュー・バルザックの斧での攻撃がカスるようになってきて、カサール型は益々追い詰められてきている。

カサール型のピンチに、僕ですら、

『もうダメか?!』

と、思ったその時である。

相手の放った斧の一撃がカサール型の剣を扱う右手にヒットし、本体のゴーレムコアの指揮下にある右手ゴーレムが深刻なダメージを受けて剣が持てなくてしまう。

そして、ほぼ地元産のニュー・バルザックを応援している会場では、物凄い歓声が巻き起こり、

「やれぇぇ!」

などと、カサール型の完全敗北を期待する声が飛び交う。

掴むなどの動作が出来なくなり剣も持てないカサール型は、パイロットの剣術ギフトによる間合いなどのアドバンテージがなくなってしまった為に、敗北が一層濃厚に見え、審判からの、

「まだ戦いますか?」

という問いは、ある意味カサール型のパイロットに、

『これ以上、愛機を破壊されずとも決着がついた事にしませんか?』

という優しさにも感じてしまう。

だが、盗賊討伐の時の失敗からゴーレムのコックピットの基本機能に加えた拡声魔道具から、カサール型のパイロットである騎士さんの、

「問題ない、まだやれます」

という闘志に満ちた声の後に、カサール型はニュー・バルザックに突進し、ニュー・バルザックの大型の斧を満足に動かない右手を犠牲にして受け止めながら体当たりを成功させ、大型武器の間合いを無視出来るゼロ距離で、カサール型に搭載された拡声魔道具から響く、

「やっぱり最後は拳だぁ!」

という魂の叫びと共にカサール型は馬乗りの姿勢から残された左手でニュー・バルザックの顔面目掛けてゴーレムパンチを繰り出す。

ゴーレムの拳のみで盗賊達を倒したカサール号の正当後継機であるカサール型の左手の拳にはカサール子爵様からの要望で僕の鎧と同じく『兎に角頑丈』という魔合金のパーツが採用されており、その兎に角頑丈な拳は硬化コーティングを施したニューバルザックの顔面を変形させるほどの一撃を放ち、そして、魔力切れを起こしたカサール型は満足そうにニューバルザックに馬乗り状態のまま停止し、試合に敗北したのであった。

まだ動けるニュー・バルザックを確認したアナウンス担当者から、

「勝者、ニュー・バルザック!」

との勝ち名乗りと同時に、沈黙したカサール型のコックピットから、

『いやぁ、負けてしまいました…』

みたいな笑顔で降りてきたパイロットに会場は勝者を称える様な歓声で彼を称賛し、負けた騎士さんも満足そうに手を振り退場したのである。

そして、勿論勝者であるエリートパイロットにはカサール型のパイロットの倍近い歓声で観客達は彼を称賛したのであるが、何故か勝利した筈のエリートの彼は悔しさを噛み殺す様な表情のまま陛下に向かい一礼した後に早足で会場から消えた。

『試合に勝って勝負に負けた…』

という言葉がしっくり来る結果に兄弟子達も喜んで良いのか微妙な感じであり、僕の隣で試合を見ていたエルバート師匠がゆっくりと腰を上げてオルフェン兄さんの所へ向かい、

「まぁ、武器が使えるからと武器メインにしたのがマイナスだったと解っただけでも収穫じゃったかのぅ、では、あとは任せたよ」

と労いの言葉をかけた後に、僕に、

「ではジョンよ、カサールに帰るとするかのう」

と言ったあと、

「ついでに、グロースの町でギャンの店で扱える良さそうなゴミでも集めてからな…」

と笑い、僕は、

「はい、師匠! 前より色々直せますから大量に仕入れて帰りましょう」

と、王都での予定を無事に終了したのであった。