軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19話 家事妖精を作ってみた

「【作成】――シルキー」

足元の影から、小柄なメイド少女が現れる。

家事妖精としておなじみのシルキーだ。

なかなか気難しい魔物で、家主が気に入らないと暴れたりもするお茶目さんではあるが、家事の腕前なら魔物界でも随一だろう。

「シルキー、朝食を作れ」

「……」

シルキーは、こくりと一つ頷くと。

さわさわと衣擦れの音を立てて、台所へと向かっていった。

「あ、主様……」

プリモが涙目でぷるぷると震えだす。

「ひ、ひどいです……わたし以外にメイドを作るなんて。わたしには飽きてしまったんですか……?」

「いや、お前をメイドだと思ったことは一度もない」

「がーん!?」

「そもそも、なんでお前、メイド服着てるんだ?」

「いえ……需要あるかなー、と」

「なるほど。その認識は正しい」

そんな中身のない会話を交わしていると、すぐにシルキーが戻ってきた。料理の載った皿を【ポルターガイスト】スキルを使って手際よく並べていく。

献立は、パンとオムレツとサラダか。

いきなり文明人らしい朝食になったな。

「ふむ……」

一口、食べてみる。

「うまい」

普通にうまい。

メニュー自体はシンプルだが、口に入れてみると、思ったよりも高クオリティで驚く。思わず服がはだけるようなレベルではないが……なかなかいいじゃないか。朝食はこういうのでいいんだよ、こういうので。

「合格だ。今日からお前が、我が家の食事係だ」

「…………」

ぺこりとお辞儀するシルキー。

「むぅぅ……」

「ふんぐ、ぬぬぬ……!」

プリモとユフィールが歯噛みしながら、シルキーをびしっと指をさした。

「「――これで勝ったと思うなよ!」」

さて、朝食も無事にとり終え、暖炉の前でくつろいでいると。

「……む」

突然、ユフィールがぴくっと顔を上げた。

「失礼いたします、我が君。本日はこのまま巡回へと向かいます」

「なにかあったのか?」

「……妖精国の方面から異変が。森の悲鳴が聞こえてきました」

ユフィールが、ふと、考え込むような顔をする。

「ここのところ、森の蛇たちの様子もおかしい……なにやら不穏なものを感じま……」

「ああ、それはニーズヘッグの仕業だな」

「……へ?」

妖精国+蛇といったら、“竜王ニーズヘッグ”の襲撃イベントしか考えられない。

たしか、そのイベントでは……。

「封印から解けたニーズヘッグが、妖精国に攻め入って、世界樹を破壊しようと目論んでるんだ。目的は『人類への復讐』とか『世界樹の力を吸収して神になる』とか、そんなくだらないものだったな」

「な、なるほど……さすがは、我が君。すでに異変の元凶まで突き止めていらっしゃいましたか。それも、そこまで詳細に……」

「くくく……俺がここ最近、ただ遊んでいただけだと思ったか?」

「……っ! すでに水面下で動いていらっしゃったのですね。やはり、我が君のなさることには、全て深い意味が……」

ユフィールがきらきらした眼差しを向けてくる。

まあ、本当はただ遊んでるだけだったが……。

とりあえず、尊敬の眼差しを向けられるのは気分がいいので、誤解はとかないでおく。

「しかし……世界樹の破壊が目的ですか。やっかいですね」

「ああ。世界樹がやられたら、俺たちも死にかねないしな」

妖精国の中心にそびえ立つ世界樹。

その世界樹が枯れたとき――この星の生物は滅ぶ。

それは誇張でもなんでもない。世界樹は、世界の瘴気を吸い取り、生命エネルギーのもとである魔素を世界に放出しているのだ。魔素がなければ生物は生きられない。だからこそ、ゲームの中の“魔帝メナス”も、どれだけ暴走しても世界樹にだけは手を出さなかった。

とはいえ、ニーズヘッグが出てくるのはゲームでは終盤だったし、すぐになにかあるとは思えないが……。

「一応、ニーズヘッグの動きを監視しておけ。なにかあると面倒だからな」

「はっ」

ユフィールが短く敬礼して、しゅるりと姿を消した。

さっそく監視に向かったらしい。

「さて、俺もそろそろ仕事に行くか」

時計(クロックスネーク)を見ると、いつの間にか、けっこういい時間になっていた。

そろそろ町へ向かうとしよう。今日も朝からミコりんとの冒険者研修がある。

いつもの冒険者用の服に着替えて、弁当や水筒をマントの影に宿らせたシャドウハンドにわたす。他に必要なものは、常にシャドウハンドに収納させているので、これで準備は万端だ。

「主様、忘れ物はありませんか?」

「くくく……安心しろ。ハンカチもちゃんと持った」

「あっ、襟が曲がってますよ。寝癖もついてます」

「…………」

プリモがせっせと俺の身だしなみを整える。

「はい、OKですよー」

「そうか。では、行ってくる。留守は任せたぞ」

「らじゃーです」

びしっ、と敬礼するプリモ。

俺は彼女に背を向けて、グラシャラボラスに乗り込もうとし――。

――えへへー。楽しかったですねー、怪盗。

ふと、昨日の彼女の様子を思い出した。

そういえば……プリモにもずっと仕事ばかりさせていたな。

何気なく振り返ると、こちらに手を振っているプリモと目が合った。その顔には、どこか寂しそうな影が宿っている気がして……。

「……むぅ」

わしゃわしゃと後頭部をかく。

「……一緒に来るか?」

「はい!」