軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

晩餐会2 73

「な、こ、婚約だと……? まだ、リネアには早いと言っているではないか」

真剣な声でマルクスがそう口にする。それに、モニカは眉根を寄せて拗ねたような顔をしてみせた。

「そんなことはないと思うのだけれど……だって、レオンさんもデールさん、アイラちゃんも結婚していますし、クリスちゃんも婚約者がいるでしょう? 後は、リネアちゃんだけなのですよ?」

モニカがそう告げると、マルクスは眉間に深い皺を作ってテーブルの中央に置かれた席に座った。国王まで同席するとなり、アーベル達も表情が引き締まる。ちなみに、リネアは肩を怒らせて歩いてきて、隣に座った。

テーブルは大きい。しかし、まさか同じテーブルで食事をするとは思わなかった。

「……食事の用意を」

マルクスがそう告げると、執事が恭しく一礼し、メイドたちは次々に料理を運んできた。そして、それぞれのグラスに赤い液体が注がれていく。匂いで果実酒だと分かったが、僕も呑んで良いのだろうか。

そんなことを考えていると、マルクスは顔を上げて口を開いた。

「ふむ。我が来る前に自己紹介は済ませたようだな。それでは、食事としよう」

マルクスがそう言うと、厳かに食事が始まった。手の込んだ見事な料理の数々だ。美味しそうな肉や魚料理、柔らかそうなパン一つとっても明らかに高価な料理である。それを見て、ミケルとロルフが大喜びで食べ始めた。

勿論、僕も食べる。なにせ、これほどの料理は食べたことがないからだ。一口大に切った肉を口に運べば、パリパリに焼けた香ばしい皮と噛めば肉の脂溢れ、旨味が口の中に広がる。魚も身がほろほろと柔らかくて甘味のあるソースが良く絡み、驚くほど美味しい。

さぁ、お酒も飲んじゃうぞ。この世界では初めての果実酒だ。わーい。

そんなことを思っていたのだが、ここで雑談が始まってしまった。

「それで、リネアちゃんはラーシュ君のことをどう思っているのかしら」

「んぐっ!?」

モニカが一言告げると、リネアが咀嚼に失敗し、変な声を発する。そして、マルクスの目が鈍く光った。こちらを見ているマルクスの目を見ないようにしつつ、モニカとリネアの方に顔を向ける。

「ほら、ラーシュ君ってすごく希少なスキルを持っているのでしょう? 賢くて、可愛くて、凄いスキルも持っているなんて、とっても良い婚約相手じゃないかしら?」

モニカはウキウキした様子でそんなことを言うが、リネアはまだ自分の胸を叩きながら苦しんでいた。それに慌ててメイドたちが水を持って駆け寄る。

そんな混沌とした状態で、デールが真剣な目でこちらに顔を向けた。

「そうだ。そのスキルというのが気になっていた。あの魔の森を一部開拓したという村だ。その者達も含め、村人は随分と精鋭揃いだろう。だが、ドラゴンを退けたとなると話は別だ」

そう口にして、デールは自らの腕を顔の前に持ってくる。そこには、見事な手甲があった。少し青みがかった銀色の手甲だ。

「……これは、最高級のミスリル製の鎧だ。武器もそうだが、これだけの装備を持ってしても、ドラゴンを相手に勝つことは難しい。防衛も同様だ。千人以上の騎士団で戦い、そして、過半数は死ぬことになる」

デールがそう口にすると、レオンが成程と頷いた。

「そうだね。確かに、ドラゴンを相手にするなら千人どころか、五千人以上の騎士団を動員するのが当たり前だと思うよ。でも、報告によればラーシュ君達の住む村は、確か百人規模だったとか……それに、死亡者も出なかったと聞く」

二人の王子がそんな会話をするので、頬を引き攣らせつつ首を左右に振る。

「あ、あはは……まぁ、運が良かったんですよ。ドラゴンも驚いて退いてくれただけですからね」

笑いながらそう告げたが、反応は微妙だった。

「……運だけでドラゴンは撃退できないと思うよ?」

レオンがそう言って苦笑すると、デールが深く頷く。

「その通りだ。我が国の騎士団も魔の森近くでドラゴンと交戦した記録があるが、その全てが見るも無残なものだ。総勢一万の騎士団と魔術師団がドラゴン一体の為に戦い、三千の兵を失ってようやくドラゴンを討伐したと……五千以下の騎士団では防衛に専念するしかないが、半数以上死んで撃退できるかどうかだろう」

デールはそう言ってため息を吐くと、アーベル達を見た。アーベルやミケル達はさっさと食事を食べてしまったらしく、果実酒を呑んで目を細めていた。

その様子を見て、デールは苦笑しながら口を開く。

「……獣人は確かに身体能力が高い者が多いと聞くが、それだけでは説明がつかない。騎士でもないのだから、剣術が磨かれているわけでもないはずだ」

デールがそう言うと、ようやく復活したリネアが振り向いた。

「そんなことないですよ。だって、アーベルは三段斬りが使えるし、ミケルとロルフも同じくらい強いのよ。それに、イリーニャだって癒しの魔術から防御魔術まで使えるんだから」

リネアが自慢げにそう言うと、デールは腕を組んで唸る。

「なるほど……騎士団長級の人間が何人もいる、ということか」

デールのその言葉に、リネアは不敵な笑みを浮かべた。そして、首を左右に振る。

「甘いわね、デール兄様。何人どころじゃないわ。何十人もいるのよ」

と、リネアは語る。それにはデールどころか、レオンもマルクスも目を剥いた。

「なんだって?」

「……それは、驚くべき戦力だな」

二人にそう言われて、慌てて訂正しておく。

「い、いやいやいや! それは大袈裟です!」

そう言ってから、改めて村の情報を伝えることにした。国王に嘘を伝えられたと思われると大変だからね。特に、こんな重要なことは。