軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アーベルの意向 59

「ちょ、ちょっと待って。それは困る。この村はアーベル達が頑張って存続させてきた村なんだ。だから、村長はアーベルで、僕は外交官みたいな立場の方が正しい形だと思う」

そう言ってリネアの依頼を断ろうとしたが、そこに後ろで聞いていたアーベルが意見した。

「いや、問題ないぞ」

「えぇ!? なんでやねん!」

あっさりと村長の座を譲ろうとするアーベルに、思わず全力で突っ込んでしまった。なにがあって一番の新入りを村長にしようとするのか。

そう思っての突っ込みだったが、アーベルはむしろ当たり前といった様子でミケルとロルフにも同意を求めた。

「ラーシュが村長になることに不満はあるか」

「いや、別に」

「村が住みやすくなるから良いと思う」

更に軽いノリでミケルとロルフは僕の村長就任を認める発言をする。清き一票をありがとう。真村長のラーシュである。皆、今後はラーシュ君に税金を払うように。

間の抜けたことを考えつつ、にんまりと笑みを浮かべるリネアの顔を見る。ほらね、といった表情である。

「いやいやいや、とりあえず、一旦は村の皆に話してからじゃないと答えられないよ! むしろ、村長はアーベルさんで外交担当に僕がいる方が一番しっくりくると思うから!」

「どうぞ? 結果は見えてるけど」

「うわ、何かむかつく!」

リネアが声を出して笑う中、アーベル達を連れて村の中心へと戻る。

「集合!」

村の住民を大急ぎで集めてみた。来客がわらわらと来ていることもあり、運良く村の住民達もほぼ村の中にいた。できたら全員を集めてやりたいが、緊急事態である。

「なんだ、なんだ?」

「また何か作るのか?」

「ぼく、楽しみ」

家が出来たり水道が敷設されたりした為、住民は新しく何か作ると思って集まったようだ。

「違います! さぁ、アーベル村長! 議題を!」

「議題……まぁ、良いだろう。それでは、皆に問いたいことがある」

アーベルが大きな声で住民に呼びかけると、皆がピシッと口を噤んでアーベルの言葉を待った。見なさい、リネア。この軍隊のような統制力。これこそ我が村の村長、アーベルの統治力である。ざまあみろ。

腕を組んで小さく頷きながらアーベルの背中を見ていると、アーベルは皆に対して口を開いた。

「今後、この村はラーシュが村長として発展していくことになる。そのことに異論がある者はいるか?」

「なんで決定事項みたいになってるの!?」

アーベルの質問の仕方に違和感を覚えて咄嗟に抗議してしまった。だが、僕の言葉は誰にも拾われずに風に流されて消えてしまう。

「ラーシュが村長?」

「へぇ」

「良いんじゃないか? 村は一気に住みやすくなってきたし」

案外肯定的な意見が聞こえてくる中、反対意見も幾つか出てくる。

「大丈夫か……?」

「ラーシュは良い奴だが、人間だぞ? それこそ、村から出ていくことだってあり得るかも……」

「今のままでも問題ないんじゃないか?」

そんな意見がちらほら出てきて、僕は大きく頷く。その通りだ。だって、今のままでも村はいくらでも改善できる。むしろ、変な責任を背負わされるより良いではないか。平社員万歳。

そんなことを思っていると、アーベルが真面目な顔で皆の顔を順番に見ながら口を開く。

「……ラーシュは人間だが、俺はもう村の仲間だと思っている。それに、ラーシュの知識はこの村の誰よりも優れている。我らだけだったら、この村はここまでの発展をすることは無かった。むしろ、森の中を死者を出しながら移動する暮らしを続けていたことだろう」

そう口にすると、誰もが口を閉じて話を聞き始めた。それを確認して、アーベルは話を続ける。

「誰もが知っていることだろうが、ラーシュは全ての職業適性について知識を持ち、村全体の戦い方を変えた。それに、この村の発展だ。今後は森の傍の村から行商人も来るという。そうなった時、我らだけなら騙されてしまうことだってあるだろう。しかし、ラーシュならば騙されず、村にとって良い取引をしてくれると思っている。それでも、ラーシュが村長になることに不安はあるか?」

アーベルがそう告げると、先ほど否定的な意見を出した者も黙り込んでしまった。

それを見て、ミケルとロルフが笑みを浮かべる。

「決まりだな」

「ああ」

二人がそう呟くと、アーベルは顔を上げた。

「決定だ。今日で村長は俺からラーシュになる! 異論がなければ手を打ち鳴らして答えよ!」

アーベルがそう告げた瞬間、百人の歓声と拍手が鳴り響いた。村の住民達が、僕の村長就任を認めてくれている。

そう思うと、不思議な気持ちになった。

村に来て一年も経たない者をそんなに信用するなよという気持ちと、初めて居場所が見つかったという気持ちだ。

「くそ! 村長になっても今以上には働かないからね!?」

照れ臭い気持ちを誤魔化して歓声にそう応えると、大きな笑い声が返ってきた。

まったく、お人好しばかりの村である。