軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見違えたように 57

城大工のグスタフが来て三ヶ月。皆の協力もあり、村は本当に見違えるように変わっていった。平屋ではあるが、綺麗で機能的な家が建ち並んでいる。前は築350年のログハウスみたいだったが、今は新築の木造建築である。なんと、玄関と部屋一つという間取りだったのが、玄関と台所、寝室が二つという具合にバージョンアップした。

単純に広くなった上に、これまでは存在しなかった台所という概念だ。英語で言うとキッチンである。ふふふ。

「ちょうど水路を作ってくれたのは有難かったのう。これで各家に水道を置けるぞい」

そう言って、グスタフが出来上がった家を眺めながら呟く。それに、思わず待ったをかけた。

「いやいや、それこそ上水道なんて僕たちだけじゃ作れなかったからね。それに、下水道もそうだけどさ」

グスタフの言葉に苦笑しながらそう答える。

なにせ、今では村の周囲を幅の広い塀が囲っており、その上を川の水が流れているのだ。皆で作った水路には水車が設置され、そこでくみ上げた水が塀の上を流れているのである。その上には屋根が取り付けられていて、異物があまり入らないようになっていた。

少し違うが、古代ローマ帝国で使われていた上水道のような仕組みだ。塀の上から流れる水は各家庭に流れ、すぐに水を使うことができるようになった。それだけでなく、家の外には壁で囲んだトイレが設置されており、地下にも水が流れて下水道として機能していた。

もう、信じられないような進化である。生活のレヴォリューションが起きたと言っても過言ではあるまい。

防衛に関しても同様だ。塀の高さは二メートル程度だが、厚みがあるので安心感も凄い。そして、南北に両開きの扉を設置している。今は木製だが、いずれは鋼鉄の扉にしたいところだ。

「後は、家が全て完成したら物見櫓を作るくらいじゃのう。そうしたら、わしらの仕事も終わりじゃ」

そう言って笑うグスタフに、両手を合わせて拝むようなポーズをとる。

「本当にありがとう! こんなに早く村が良くなっていくとは思わなかったよ! 城大工ってすごいんだね!」

深く頭を下げてからそう言って笑うと、グスタフは愉快そうに笑った。

「ほっほっほ! それは勿論じゃが、これほど早く工事が進んでおるのは、この村の皆の協力があってこそじゃよ。なにせ、誰も彼も職業適性を使いこなしておる! 本当に信じられないくらいじゃ! これだけの実力を持つのは、我がテオドーラ王国でも騎士団長や魔術師長くらいじゃろう。それに、何よりもラーシュ、お主じゃ」

「ん? 僕?」

聞き返すと、グスタフは呆れたような顔で村を囲う塀を指差した。

「あの塀を作った石や岩を運んだのも、地下に下水道を通したのも、お主のゴーレムとやらの力が大きいんじゃぞ? あんなもの、見たこともなかったわい。恐らく、各国の要人がそれを知れば、研究の為に連れていかれる可能性もあるじゃろう。できるだけ隠すようにした方が良いと思うぞい」

「ええ!? せっかく暗殺者がいなくなったと思ったら、今度は誘拐魔が来るの!? 勘弁してよー!」

グスタフの恐ろしい言葉を聞き、思わず頭を抱えて叫ぶ。いくら美少年だからって、皆ラーシュ君を狙い過ぎ。銅貨一枚くれたら握手くらいならしてあげるから、お行儀よく順番に並んでもらいたいものである。

「ど、どうかされましたか?」

僕の嘆きを聞きつけて、イリーニャが慌てた様子で走ってきた。耳が揺れていて今日も可愛い。

「僕、誘拐されるかもしれない」

走ってくるイリーニャに、言われた言葉をそのまま伝えてみる。すると、イリーニャの顔面は血の気が引いて白くなった。

「ゆ、誘拐……!? 伯爵家の御子息という理由でしょうか!?」

驚愕するイリーニャ。

「いや、美少年という理由で」

「な、なんてこと……ラーシュ様が美しいから……!?」

素直に驚いてくれるイリーニャ。わなわなと尻尾が震えて可愛い。

「あまりからかうのも良くないと思うんじゃが」

イリーニャのリアクションを確認していると、グスタフに窘められてしまった。確かに、イリーニャは本気で心配している。少し可哀想かもしれない。

「うん、冗談」

「あ、冗談でしたか……」

ホッとした様子で微笑むイリーニャ。それに頷き、正確な内容を伝える。

「そうそう。僕が珍しいスキルを使うから、それが多くの人にバレたら、もしかしたら誘拐されるかもって話」

「ゆ、誘拐されるんじゃないですか!?」

あれ? ちゃんと伝えたのに、何故かイリーニャの顔がまた白くなった。

「まぁ、バレなければ大丈夫だよ。多分」

そう告げると、イリーニャは周囲を素早く見回した。

「……ひ、人の記憶を消すスキルはないのでしょうか」

小さな声でイリーニャがそんなことを口にする。それに苦笑して首を左右に振った。

「ないね」

「……こ、困りました」

記憶を消すスキルがないことを知り、イリーニャは挙動不審な様子で周りの様子を窺うのだった。