軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暗殺者 48

男たちが剣を取り出したのを見て、ドラス達も即座に剣を抜く。

なんだ。商人ではなかったというのは理解できるが、ならばこの男たちは何故この村に来たのか。すぐに思いつくのは魔獣討伐に長けた強い獣人達を奴隷にしようという輩だ。しかし、それなら人数が少なすぎるし、リスクが高過ぎる。

はっきり言って、ドラス達でも十人や二十人程度ではアーベル達に勝つことはできないだろう。それくらいの実力に育っていると断言できる。

それでは、彼らの目的はなんなのか。

固唾を呑んで男たちの動向を窺っていると、五本の剣がこちらに向いた。そして、先ほどから喋っていたローブの男は剣ではなく、金属製の杖を手にしていた。

「 石の双壁(ダブルロックウォール) !」

いつの間に詠唱をしていたのか。男は素早く魔術を発動させる。現れたのは巨大な二対の壁だ。一目で分かるほど厚く、高さも十メートル以上あるだろう。その壁が男達を挟むように前後に現れ、建物に挟まれた細い道のような状況になった。その道の先には、僕とイリーニャだけが取り残されている。

「狙いは僕!?」

驚き、一歩後退る。僕のその言葉を合図にしたかのように、剣を手にした男たちがこちらに向かって殺到した。五本の剣がぎらりと狂暴な光を発し、背筋が寒くなる。

「ラーシュ様! お下がりください!」

動揺している間に、イリーニャが僕の前に飛び出した。詠唱はギリギリだ。だが、少し離れて様子を窺っていたから、何とか間に合うはず……!

「…… 風の守り(ウィンドシールド) !」

イリーニャの身に剣先が迫る瞬間、何とか魔術は発動した。風の守り。物理攻撃にかなり強い防御系の魔術だ。安心しつつ、僕は急いで魔導技師のスキルを行使しようと動いた。

だが、目の前で鮮血が舞い、思考が停止してしまう。

イリーニャの体を二本の剣が貫いたのだ。血が頬を濡らし、イリーニャの横を通り過ぎてこちらに迫る残りの三本の刃に気が付いた。

何故、イリーニャが刺されている。あの武器は何なんだ。

そう思ったが、すぐに答えが分かった。僕に迫った三本の剣は、見えない何かによって弾かれたのだ。

風の守り。対象者の周囲を覆う風の壁だ。それが、イリーニャではなく僕を対象に発動していた。

「……っ! イリーニャの馬鹿!」

思わず、心にもないことを叫んでいた。家を追い出された僕に付いてきて、他に頼れる存在を見つけたイリーニャにとって、僕との主従関係など存在しない。いや、たとえ主従関係であったとしても、自分の身の安全を優先してほしいと思っていた。

だから、この状況を作ってしまった自分に対して何よりも腹が立った。

「 魔導操兵(マシンゴーレム) !」

怒りの感情をそのままに、スキルを発動する。巨大な魔導操兵が出現すると、ローブの男たちは明らかに動揺した。

「な、なんだ、こいつは……!?」

「これは、まさか魔術か!?」

驚愕する男達の後ろで、刺さっていた剣を抜かれてイリーニャが崩れ落ちる。それを見て、怒りに我を忘れそうになった。

「操兵!」

指示も作戦も何もない。ただ、魔導操兵をがむしゃらに動かした。見上げるような人型のゴーレムが、両腕を振り回しながら男たちの下へ迫る。咄嗟に剣で防ごうとする者もいたが、そんなものは圧倒的な質量を前にすれば無に等しい。剣ごと弾き飛ばされ、魔術で作り出された石の壁に衝突した。

僕自身には風の守りによる防御がなされており、男たちは攻撃できないと踏んで後方へ跳躍した。

「逃げるな!」

怒りから理不尽な命令をしつつ、魔導操兵を走らせる。腕を振りながら走る魔導操兵は、分厚い石の壁すら腕の一振りで粉砕しつつ前進している。それは大型魔獣の突進並みの迫力を相手に与えるだろう。

「た、退避! 一度態勢を立て直す!」

ローブの男が杖を片手にそう叫び、別の魔術の詠唱を始めた。足止めの魔術か。魔導操兵は純粋な戦闘力は高いが、動きが遅い分魔術などの攻撃を回避することができない。簡単には壊れないが、それでも足止めならば簡単にされてしまう。

このままでは、あいつらを逃がしてしまう。イリーニャに怪我を負わせ、命を奪おうとした奴らを……。

奥歯が音を立てるほど歯を食い縛り、倒れたイリーニャの傍に膝を突いて姿勢を低くした。魔導操兵を操りながら、イリーニャの体を抱き起す。血が止まらない。既に、地面は赤く染まっていた。

頭の中が上手くまとまらない。どうにかしないといけないと思い、イリーニャの体にできた傷口を両手で必死に押さえる。

だが、そんなことで血は止まるわけがなかった。

「誰か! 助けてくれ!」

顔を上げて叫ぶ。聖職者の職業適性を持つ者は少なく、重傷を治せる者は更に貴重だ。そんな残酷な事実が頭から離れない。

何もできない自分に死にたくなる。

絶望感に打ちひしがれそうになったその時、僕とイリーニャの元に走ってくる人影があった。