軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

村で買い物したい 41

早速村に行ってみようと思ったが、どうやらアーベル達は村にまでは行きたくないらしい。イリーニャはそこまで気にしていなかったが、獣人の村では人間の集落に近づくのは危険だと思っているようだ。

まぁ、騎士団の目が届かないところでは公然と獣人が奴隷として売買されることもある為、アーベル達の感情も理解はできる。

「それじゃ、リネアさん達と一緒に僕が買い物してこようかな。一応、イリーニャも残っててね」

「それは危ないかもしれません! 私は隠れながら付いていきます」

と、いうことでリネア達一行に僕とイリーニャが付いて行く形となった。イリーニャには頭が見えないようにフード付きのローブを着せておく。尻尾は細いので簡単に隠せた。良かった。

村に移動すると、高さ二メートル、幅四メートルほどの両開きの門があった。きちんと鉄製の門だ。意外としっかりした村じゃないか。そんなことを思いながら門の前に行くと、門は片側が開いており、そこに槍を持った兵士が立っている。

「ん? 行商人……じゃないな。どこから来たんだ?」

兵士はローブを着た一団を見て怪訝な顔をした。そりゃ怪しいよね。どう切り抜けるのかと思って隣を見ると、ドラスが前に出て胸を叩いた。

「うむ! 良くぞ聞いてくれた! 我らは新しく傭兵団を起ち上げたのだ! その名もドラス傭兵団。この村では需要はあるか?」

ドラスが力強い笑みを浮かべてそう尋ねると、兵士は納得したように頷く。

「おお、すごいな。起ち上げたばかりで全身甲冑とは……この村では魔獣の被害が多いんだ。需要はあると思うぞ。人数は、八人か?」

「うむ」

「村の中で悪さはするなよ? ちゃんと定期的に騎士団の巡回もあるからな?」

「分かっておるわ」

ドラスがそう言って笑うと、兵士はあっさりと横に退いて道を開けた。え? こんなセキュリティーで大丈夫?

不安になるレベルである。まぁ、盗賊や山賊みたいな輩が堂々と尋ねてくることはないだろうし、ぶっちゃけリスクを背負って襲撃するほどの価値がないだろう。

そんな寂しいことを考えつつ、村の中の風景に目を向ける。建物は外の石壁とは違い、木造のものばかりである。それほど大きな村ではないが、意外と活気があった。宿屋や商店らしき店もあり、自警団もあるようだ。

もしかしたら、この村の代官になっていたかもしれないと思うと感慨深い。

「……初めて来たの?」

周りをきょろきょろ見回しながら歩いていると、リネアからそんな質問をされた。

「うん」

素直に返事をしつつ、魔獣の素材を売れそうな商店に向かって歩く。わらわらと全員で店の中に突入すると、意外と狭くてぎゅうぎゅうになってしまった。というか、店の中が壁側にちょこちょこと品物を置いているだけで、カウンターとおじさんだけが存在感を放っている。

なんだ、この店。いや、辺境の村はこれが普通なのか。

そんなことを思いながらカウンターにしがみ付く。しがみ付くというか、押し付けられる。

「ちょっと、何人か出てくれる?」

「りょ、了解」

流石に狭い。そう思っての発言だったが、素直に騎士三名が外へ出た。残ったのは僕とイリーニャ。そしてリネアとドラス、従者の女性の五名だ。

これでも狭いくらいだから、店の入り口からカウンターまで二メートル四方くらいしかないだろう。エレベーターか、この店は。

「知らない顔だな」

ちょっと失礼なことを考えていると、店主のおじさんが不思議そうな表情で僕たちの顔を見まわした。

「我らはドラス傭兵団である! 魔獣の素材を持ってきたのだが、買い取ってもらえないか」

「へぇ、それは良いな。何を持ってきた?」

店主は物凄く話の早い男だった。早速魔獣の素材をどかどかとカウンターに置いていく。

「 赤猪(レッドボア) 、 大牙猿(サーベルエイプ) の毛皮と牙、後は、 黒狼(ナイルウルフ) か」

順番に確認していき、店主は何度も頷いていた。大牙猿とかは中々の強敵なので、希少ではないだろうか。

そう思ってウキウキしていると、店主はカウンターの下から貨幣を取り出した。現れたのは銀貨と銅貨である。

「銀貨十五枚。銅貨四十枚」

「ちょ、ちょっと待たれよ。これだけの素材なら金貨三枚はいくのではないか?」

貨幣の価値を大雑把に考えると、金貨一枚で百万円相当。銀貨一枚で十万円、大銅貨一枚で一万、銅貨で千円、鉄貨で百円といった感じである。つまり、ざっくりだが百五十四万円ほどの稼ぎとなった。

三、四日間では凄い稼ぎだと思ったが、魔獣狩りは常に死の危険と隣合わせである。更に、山とか森の中でもない限り、それほど狩りをする機会に恵まれるわけではない。そう思うと、高過ぎるということはないだろう。

売る場所が他にないから、これは足元を見られているのかな。

そう思って店主の顔を見ていると、店主は首を左右に振って答えた。

「いや、大牙猿の素材は抜きでの金額だ。正直、金貨の手持ちがないんだよ」

「む、そういうことか」

店主の言葉に、ドラスがホッとしたように返事をする。どうやらこの店は健全な経営をしているようだ。疑ってごめんな、商店のオジ。