軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結局は薬草採取係   25

色々と頭の中で構想を練っていたのに、僕の意見は子供の言ということで笑い話となってしまった。

「村の為に武器が必要なのに」

ラーシュ君はプンプンである。怒髪天を突いている。そんな僕に、イリーニャは苦笑しながらも頷いてくれた。

「いずれ、皆さんもラーシュ様の話を聞いてくれますよ」

「そうかなぁ」

そう答えて首を傾げていると、森の奥を進むミケルとロルフが振り返った。

「おーい」

「早くしろよー」

二人の言葉に、イリーニャが代わりに答える。

「あ、はーい」

その返事を聞き、ミケルとロルフは身軽な動きで木々に上ったり、大きな岩に飛び乗ったりしている。猿みたいだ。

そんなことを思いながら、こちらは必死になって森の中を進む。ラーシュ君は年齢の割には眉目秀麗で手足も長いほうだと思っている。モデル体型だ。しかし、それでも子供サイズなので障害物の多い森の中を進むのは大変である。

何故、こんな苦労をしているのか。それは簡単な話で、薬草探しの続きである。メーラル草は発見できたが、あれは擦り傷や切り傷を治すためのものである。重傷だったり病気、毒を快復させる代物ではない。

ということで、村一番の薬草博士と思われているラーシュ君は貴重な薬草の捜索に駆り出されていた。こんな子供を働かせるとはなんというブラックな村だろうか。ブラックヴィレッジ。そしてブラック村長のアーベル。許すまじ。

だが、これで見事、貴重な薬草をゲットした暁には、ブラックヴィレッジの次期村長候補の座は約束されたも同然である。うむ。皆、税として狩りで得た肉を献上するが良い。

「……それにしても、森の中ってなんでこんなに歩きにくいのかな。責任者はどこにいるんだ」

一人で文句を言いつつ、先を歩くイリーニャの背中を追う。ぴこぴこと揺れる尻尾を見ると触りたくなるが、それはセクシャルハラスメントである。天才ラーシュ君は子供の時に尻尾を掴み、イリーニャから咎めるような視線を受けたことを忘れていない。

そんな独り言を呟きながら森の中を進んでいると、イリーニャが心配して速度を落とし、隣に並んで歩きだした。心配をかけないように笑って手を挙げたその時、かなり先のほうで声がした。

「おーい! こんなところにナイア草があったぞ!」

「本当か!」

ミケルとロルフの声だ。その声に、思わずイリーニャと顔を見合わせた。ナイア草は貴重な薬草だ。目標にしていた貴重な薬草の一つである。とりあえず、一つは見つけることができたとホッと胸を撫で下ろし、イリーニャに声をかけた。

「良かったね。僕たちも薬草を取りに行こうか」

「は、はい!」

イリーニャは返事をしてすぐに歩き出そうとしたが、すぐに僕のことを思い出して手を差し出す。

「ラーシュ様。私の手をどうぞ」

その手を取りながら礼を言い、森の奥へ向かって急ぐ。薄暗かった視界が徐々に開けていき、明るい陽の光が増えていった。ナイア草の群生場所で間違いなさそうだ。そう思い、自然と口の端が上がる。

その時、声のした方向で大きな音が鳴り響いた。まるで交通事故のような激しい音と振動。そして、わずかに残っていた鳥が逃げ出す羽ばたきの音。

明らかな異常事態だ。

「さ、先に行きます!」

イリーニャはそう口にして、森の奥へ走り出した。大きな岩を飛び越え、光の中へ飛び込むように森の奥へと消えていった。

「は、早く大人になりたい……!」

小さな自分の体に不満を口にしながら必死に森の中を走る。視界が一気に開け、あまりの眩しさに目を細める。ようやく光になれた頃、音の発生源がなんであるか気が付いた。

赤茶けた岩を幾層にも重ねたような鱗と大きな口から覗く巨大な牙。体高は四メートル、全長は十メートル以上あるだろう。背中には翼は無いが、それが紛れもなく世界最強の種族、竜種であることは一目で分かった。

ドラゴンだ。それも、僕たちの馬車を襲った幼竜とは違い、明らかに成体だ。もしかしたら親かもしれない。

「ミケルさん! ロルフさん!」

イリーニャが二人の名を叫ぶ。

「来るな!」

「逃げろ、イリーニャ!」

ミケルとロルフはそう叫ぶと同時に左右に跳んだ。そこへ、地竜の太い腕が振り下ろされる。見た目にそぐわぬ速度だ。そして、重量にものを言わせた威力は想像以上である。

「ど、どうしよう……! ミケルとロルフが死んじゃう……!」

泣きそうな声でイリーニャが叫んだ。その間にも、ミケルとロルフに向かってドラゴンの腕や尾による攻撃が続いている。

「……まだ、試す時間が無かったから不安だったけど、仕方がないか」

どうせ明日なき我が身だ。全力でやってやる。

そう思って、僕は立ち尽くすイリーニャの横を通り過ぎて前へ出た。