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作品タイトル不明

81 王家の財産

「陛下」

宰相は前置きもなく、王にまとめた報告書の一部を提出した。

王の執務室の机に置かれた報告書は薄い。

「コレは、ほんの一部てす。

けれど、至急に目を通していただきたい」

王も王太子バーミリオンが婚約解消となり、宰相に心労をかけていることは分かっている。

そこに、代官の横領と偽造紙幣製造だ。

何故に自分の代で次々と不始末が起こると嘆いても処理は進まない。自分では指示を出すことがてきても解決にはならない。

各部署の貴族との折衝が必要であり、高位貴族の協力なくしては成り立たない。

その宰相が至急ということは、重大な事があるのだろう。と報告書を手に取る。

「王妃に嫌疑をかけると言うのか!」

王は報告書を半分も読まないうちに、声を荒げた。

「イースデン公爵家への慰謝料の支払い期限が近づいてます。それがもし、偽造紙幣だった場合、内乱が起こると考えてください」

宰相は 怯(ひる) むことなく言葉を続ける。

「王妃陛下の母国の商人がダルトン子爵邸に出入りしており、王妃陛下へ謁見も頻繁に行われております」

「だからと言って王妃が関係してるというのは早計であろう」

「疑惑があるというので、確定しているとは言っておりません。

偽造紙幣は、かなり以前より製造されていたようですが、大量に流通していればすでに問題になっているはずです。水に濡れるとインクが 滲(にじ) むのですから。雨とか水を 溢(こぼ) すとか、生活上で紙幣が濡れる事はよくあります。

他国に持ち出されていても同じ問題がでるでしょう。

ならばどこにあるのか?

長期保管されるところの紙幣と、すり替えられているとしたら?

宰相室でも港から国外に持ち出されたと考えていましたが、他国であっても水で滲む我が国の紙幣が大量にあったら噂話でも耳に入るはずだ。

それがないというのは、どこかで保管されているのでは、と考えられるのです」

「水を持って付いてこい」

王は侍従に指示すると、王家の金庫室に向かう。その後を宰相も付いて行く。

金庫室の扉は王が所持する鍵とダイヤルキーで開ける事になる。

金庫室の中には、王家所有の宝飾、金塊、現金があった。

王は現金束を一つとり、侍従に持って来させた水の入ったデキャンタから一滴水を垂らす。

何も変化がない。水の染みが出来ただけだ。

「宰相、いらぬ心配だったな」

王が勝ち誇ったように宰相に向き直るが、宰相は首を横に振るだけだ。

「陛下、一番上の紙幣は本物を使って偽造がバレるのを防いでいるのかもしれません。3枚目の紙幣に同じことをしてください」

王は束の中ほどの紙幣を抜き出して、水を垂らした。

ジワリと、紙幣に青色が広がる。

青色の印刷部分が 滲(にじ) んだのだ。

やはり。

宰相は自分達の考えが当たった、と口元を引き締めた。

流通しない大量の紙幣があるところは限られている。その一つが王家の私有財産である。

そして代官が横領した着服金の一部は、偽造紙幣の製造費用として流用したのかもしれない。

「ばかな!」

王は他の札束を持って、同じように水を垂らしてみる。

手にした全部の札束が、1枚目以外はインクが滲む偽造紙幣である。

王妃ならば、宝飾の出し入れで金庫室に出入りをする。

何度も出入りをすれば、大量の札束をすり替えることも可能だ。

「ありえない!!」

王は叫んで膝をついた。

「陛下、イースデン公爵家への慰謝料はどうされるおつもりですか?」

宰相は、座り込んだ王を見下す形で確認する。