軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

121 地下牢のバーミリオン

国境の砦には地下牢があり、捕虜や敵兵の収容として作られたものだ。

そこにバーミリオンはいた。

敵の一兵として収容されているのだ。

デセウス王国が仕掛けた戦争とはいえ、予想に反して勝利は遠い。

最新の大砲を用意しても、風の向き、重心の移動、最大距離を飛ばすには訓練が必要なのだ。

従来より飛距離が伸びた大砲であっても、アトラス王国の砲台は古くとも、砦の上にあるため飛距離が伸びるのだ。

デセウス王国の砲台をアトラス王国の砦に届く距離に移動させると、砦の上の砲台の射程範囲内に入ってしまう。

それをカバーする技術がデセウス王国の軍人は習得できていない。

アトラス王国もデセウス王国が武器補強されているため、かつてない苦戦のはずだ。

クーデターで国内の建て直し中に狙われ、応戦で手いっぱいに違いない。

どちらも戦争を終えたいと思っているはず。

そう思っていた。

「どうして、こうなるのか」

呟くバーミリオンは牢の壁にもたれて、天上を見上げていた。

ゾーテックをはじめ、バーミリオンに同行していた騎士達も 囚(とさ) われたはずだが、近くにはいないようだ。暗く湿った牢で、辺りに人の気配はない。

王太子として、常に人に囲まれていた。

アトラス王国から逃亡する時は、ゾーテックが一緒であった。

一人になると思い浮かぶのは、ナーディアである。

幼い頃からの記憶が 蘇(よみがえ) る。

笑いあった日、手を繫いだ日、キラキラと輝く思い出だ。

だが、今は他の男と婚約している。

婚約解消してすぐにだ、まるで用意してあったかのように。

「いや、違う。イースデン公爵令嬢の婚約が無くなれば、すぐに立候補する男はたくさんいるだろう。

決裂した王家に再度取り込まれないように、公爵が早急に決めたに違いない。

そこにナーディアの意志はないはずだ」

まるで、ナーディアがアルチュールとの婚約を嫌い、バーミリオンに心残りがあるように思ってしまう。

ルシンダの事も一瞬頭によぎったが、すでに王宮を出ているだろう、と考えるのを放置した。

頭を振って、バーミリオンは考える。

今は国賊として牢に入れられている。自分なら、情報を引き出すために拷問をするだろう。

自分は、デセウス王国にも、アトラス王国にも属さない状態なのだ。

デセウス王国も、利用できなければ切るだろう。

壁に頭を寄せて目を閉じる。

ゾーテックはどうしているのだろう。自分に付いて来てくれたのだ。

彼の信頼を取り戻したい。