軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

皇子皇女に栄光を!

「おお、見ろ……」

「第一皇子殿下と第四皇子殿下が、向き合っておられるぞ……!」

惑星レク首都の高級ホテルに存在するパーティー会場……。

貴き人間たちの特権として、一般庶民に先立って第四皇子イラコ殿下を迎えるべく馳せ参じた貴族たちは、突如として発生したイベントに息を呑んだ。

第一皇子――ベルトルト・ジーゲル。

第四皇子――イラコ・ジーゲル。

異なる母を持つ二人の皇子が、今、まさに向かい合い視線を交わしているのである。

それにしても、こうして間近で向き合うと、到底血の繋がりがあるとは思えない兄弟であった。

公表されているベルトルト皇子の身長は、190cm。

片やイラコ皇子の身長は175cm程度であるため、身にまとった筋肉量の差と10歳もの年齢差もあって、大人と子供が向き合っているように見えるのだ。

そのためもあってか、個性的に縮れた黒髪の第四皇子が、いささか緊張して息を呑んだようである。

だが、その程度で済んだのは、さすがスクリュースピンペガサス狼牙キックのイラコ皇子と言えるだろう。

……現在、11人の皇子皇女が戦場での手柄によって皇位継承権を争っているのは、暗黙の了解。

そして、イラコ皇子こそは給糧艦アマテラスによる前線士気の底上げと、本人のスクリュースピンペガサス狼牙キックによって、最も次期皇帝位に近い男。

対して、ベルトルト皇子は長兄という立場にありながら、いまだ父皇帝から出撃を命じられず中央に留まっている身なのである。

ある意味、ジンバニア王立連合を始め、戦端を交えている敵国家よりも敵対的な関係にある二人なのだ。

にもかかわらず、長兄の方から、庶子たる弟を迎えるパーティーに出席する。

果たして、その狙いとは……。

「おお!」

「こ、これは……!」

そして、参席した貴族たちは、驚きで目を見開くこととなった。

なんと、第一皇子が太くたくましい両腕で弟を抱き寄せ、その額にキスをしたのである。

これなるは、疑う余地もない親愛の抱擁であり、接吻。

「なんと微笑ましい……!」

「長兄が、無事に戦地から帰還した腹違いの弟を抱き締め、キスするとは……!」

「げに美しきは兄弟愛よ……!」

「帝国の未来を感じる光景ですな……!」

この光景を見た貴族たちが、口々にそんなことを言い合う。

そう、二人は腹違いであり、また、皇帝位を争う立場ではあるが――兄弟。

心の底にあるのは互いへの尊敬と信頼であり、今の光景こそはその表れであるのだ。

そして、友愛に溢れた兄弟のスキンシップへ、新たに加わる者があった。

他でもない……皇族の末子にして第四皇女たるエステ・ジーゲル殿下である。

父親に連れられてきた令嬢たちから、お茶会やパーティーの誘いを受けては「行けたら行く」と前向きな返事をし、「是非お兄様にご紹介を」と頼まれれば「気が向いたらする」と力強い返答をしていた第四皇女殿下が、ご令嬢たちの輪から抜け出て来たのだ。

「それにしても、まだ12歳でありながら、なんと可憐な……」

「まるで、惑星レクに舞い降りた妖精のようですな」

「お母上であるフィリア様の血を、よく受け継いでおられる」

「同性から見ても、うっとりしてしまいますわ……」

貴族の当主たちやご令嬢たちが語るように、エステ・ジーゲル皇女の可憐なことと言ったら、すでに傾国の二文字を付け足したくなるほどである。

前線からの帰還という都合もあり、兄君であるイラコ皇子は士官服姿で、従えている日系少女の副官もまた、女子広報士官服姿。

対して、エステ皇女は同席している姉姫ともども、ドレスアップした姿を披露していたのであった。

全体的な色合いは白であるが、ところどころに差し色として、氷のような水色が使われている。

結果、ツインテールにされた銀髪の輝きと相まって、異世界から迷い込んだ氷の妖精がごとき印象を見る者に与えるのだ。

また、ドレス全体のデザインはひどくシンプルなものであるが、それがかえって、素材の良さを引き立てていると言えた。

「おお、見ろ……!」

「第三皇女ディート殿下も……!」

女子たちの輪を抜け出し、兄君らの下へ歩み寄ったのは、末の姫のみではない。

令嬢たちからお茶会やパーティーの誘いを受けては「行けたら行くわ!」と前向きな返事をし、「是非イラコ殿下にご紹介を」と頼まれれば「気が向いたらね!」と力強い返答をしていた第三皇女殿下もまた、ご令嬢たちの輪から抜け出て来たのだ。

「なんと鮮烈な美しさ……!」

「とても20歳とは思えませぬ……!」

「わたくし、実は皇族でディート様が一番の推しですわ……ぽっ」

まだまだ衰えきっていない年代の貴族たちや、なぜか頬を染め上げている令嬢が語る通り、第三皇女の装いは、可憐さを押し出した妹君のそれとは全く異なるものだ。

ディート皇女がワインレッドを好むのは有名な話だが、最高級のシルク生地はまさにその赤一色で染め上げられている。

それが、大胆に背中を開け、かつ、太ももから先も惜しみなくスリットから露出させる形で、仕立て上げられているのであった。

色気の素晴らしさは語るまでもないが、それ以上に、スゴ味すら漂う美しさが強調された装い……。

ツーサイドアップにされた髪をなびかせる様は、まさに皇女の中の皇女。

およそ、年頃の女性に求められる美の要素というものが、全て最高の水準で備わった姿なのである。

「第一皇子殿下と第四皇子殿下……。

第三皇女殿下と第四皇女殿下が一堂に会されるとはな……!」

「おお……四人で抱擁を交わしておられる!」

「いや、エステ殿下のみは、イラコ殿下へしがみついておられるか」

「そのような姿もまた、愛らしきことよ」

なんという、きらびやかな光景であろうか……。

エステ皇女のみは、イラコ皇子の腰へ手を回してしがみつくのみであるが……。

残る三人の皇子と皇女は、互いに軽く……それでいて、確かな絆が感じられる抱擁をしてみせたのである。

「銀河帝国……バンザーイ!」

誰かが、そう叫ぶ。

すると、人々の感情というダムに亀裂が生まれ、そこから怒涛の勢いでそれが溢れ出した。

愛国心という……誇り高き感情が!

「銀河帝国に……栄光あれ!」

「第一皇子殿下に幸いあれ!

第四皇子殿下に栄光あれ!」

「麗しき二人の皇女に祝福を!」

それぞれが、それぞれなりの言葉で帝国と皇室の未来を祝し……。

やがてそれらは爆発し、混ぜ合わさって、もはや一つ一つの言葉など判別できなくなる。

同様に、この場へ集った帝国貴族たちの意思も、今や一つ。

この四人で、誰が皇帝の位を継ぐのかはいまだ分からぬ。

軍内に強い派閥を築いているベルトルト皇子は、出撃の任こそ賜っていないものの、いまだ有力候補。

この惑星レクを熱狂させた一般市民の人気を考えれば、イラコ皇子が一歩リードしていることは疑う余地もなし。

そして、その随伴を任務として授かったことが先刻公的に発表されたディート皇女や、元から行動を共にしているエステ皇女が脱落しているのかといえば、そんなことはなし。

むしろ、これほど注目されているイラコ皇子と任務を共にするからこそ、武功を積み上げられるというものだ。

かようにして未来は見えぬが、確かなものはすでに見えていた。

それは、兄妹間の……絆。

例え誰が次代の皇帝になろうと、少なくとも、ここにいる四人の皇子皇女は一致団結し、それを支えることだろう。

感情の薄いエステ皇女を除き、爽やかな笑みを参加者に向ける皇子皇女たちの姿を見て、貴族たちはそう確信したのである。

--

人類の最も偉大な発明の一つとして、酒が挙げられた。

一体、何故か……?

それは、今のようにベルトルトやディートと熱く抱擁を交わしたあと、互いにアルコールスプレーで消毒をできるからである。

「「「ふん」」」

パーティー終了後、控え室に入った俺たち 皇子皇女(きょうだい) は、エステを除き、たっぷりとアルコールの効能と威力を楽しんだのであった。

……おえー。