軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61話 戦士と勇者の再会

翌日の早朝、牢から出された俺達は朝日を見ながら背伸びをする。

「やっぱり石の寝床は体に良くないな」

「私はご主人様と一緒ならどこでも嬉しいです」

カエデの笑顔にこちらの表情も緩む。

できれば今夜はベッドで眠らせてやりたいが、そうはならないかもしれないな。

なにせここにはアイツが来ている。

恐らく俺にとって今日は、この先の運命が決まる日だ。

勇者を殺せば大きな罪となる。

相応の罰が与えられるのは当然だ。

どうなるかは分からない。

だが、たとえ情状酌量の余地があっても軽くはならないだろう。

最悪処刑されるかもしれない。

もしそうなった時は……カエデ達を解放しよう。

今なら多くの物を残せる。

どこへ行こうとそれなりに幸せな生活をおくれるはずだ。

「行こう。最前線へ」

「はい」「うん」「きゅい」

城塞都市ラワナからそう遠くない場所には、巨大な外壁がそびえ立っている。

これは魔族側とヒューマン側を隔てる壁だ。

そして、その先に最前線である戦場があった。

遙か地平線の先に、暗黒領域への入り口に城塞が立ち塞がる。

知名度があったことも幸いして、俺達はあっさりと壁を通過。

ヒューマンの軍がいる野営地へと訪れる。

無数のテント群へと入ると、槍を持って駆けて行く兵士達を見かけた。

空気はぴりつき緊張が横たわっている。

正直あまり長居したいとは思えない雰囲気だ。

どんっ。遠くで爆音が響く。

砦を落とす為に多くの魔法使いがかり出されているようだ。

「状況は?」

「芳しくありません。六将軍のデナスが猛威を振るい、城塞の入り口を突破できないようです」

「勇者はどうしている!? その為に来たのだろうが!」

「デナス相手に連敗中です。現在も戦っているかと」

「くそっ、これではいたずらに犠牲を増やすだけだ! もっと力を持った者はいないのか!」

フルアーマーにマントをつけた男性が怒鳴っている。

察するに戦況はあまり良くないらしい。

彼は俺達を見てムッとした顔をした。

「何者だ。ここは軍以外の者は来られないはずだぞ」

「漫遊旅団という冒険者パーティーだ。勇者を探しに来た」

「……漫遊旅団?」

男性は俺の元へ駆け寄り右手を掴んだ。

「いいところに来てくれた! 貴殿らのような高名な英雄を待っていたのだ! いやぁ、これで戦況は大きく変わるぞ!」

「あの、勇者をだな」

「勇者殿をお捜しならあの魔族の砦に行けばよい! ついでに攻め落としてくれても構わんぞ! だははははっ!」

なんなんだこの人、やけに調子が良いな。

だが、セイン達の居場所が分かったのならどうだっていい。

砦は……邪魔になるので言う通り落とすつもりだ。

これから俺は元親友と相対する。

いかなる邪魔も入れさせるつもりはない。

男性に一礼して砦へと向かう。

巨大な城塞へ取りつこうと兵士達が群がっている。

がこん。しゅ。

無数の投石機が岩を投げるが、壁は高く分厚く跳ね返されてしまう。

がんっ、ばらばら。

大量のゴーレムが前に進むも、城塞から放たれる矢や魔法によって半ばで砕け散っていた。

これが本当の戦場かと緊張を抱く。

冒険者は所詮アマチュアだ。

兵士や傭兵のように常に対人戦用に鍛えているわけではない。

「ご主人様、あそこにいます」

「……あれか」

城塞の閉ざされた入り口。

そこで激しい戦闘を繰り返す集団がいた。

俺は背中の大剣を抜く。

「パン太、戻れ。ロー助、出ろ」

「きゅう」「しゃ!」

刻印にパン太を戻し、ロー助を出す。

さらに使役メガブーストを発動。

めきめきめき。

ロー助の体が三倍ほどに膨れ上がり、体中から鋭く大きな刃を無数に出現させた。

空中でうねる銀色の体は眩いほど光を反射する。

「軍に加勢しろ」

「しゃぁあ!」

ロー助は外壁の上にいる魔族の兵を、みるみる戦闘不能にして行く。

「カエデ、入り口周辺を掃除してくれ」

「はい」

扇を開いたカエデは、軽く舞い、突風を巻き起こす。

敵味方問わず、俺達から入り口までの障害物が綺麗に消えた。

「フラウ、あの門を破れるか」

「いけるわよ! ばっちり粉砕してくるから見てなさい!」

真上に飛翔したフラウは、そこから流星のごとく門へと突撃した。

ど、がんっ。

轟音が響き城塞の門が吹き飛んだ。

そこから兵士達が、門の前にいる勇者達を避けるようにして城塞の中へとなだれ込む。

俺はカエデと共にセインの元へと静かに向かった。

「どうした勇者、早く立ち上がれ。まだやれるだろう」

「うぐっ……なんなんだこいつ……」

セイン達はぼろぼろになって地面に片膝を突いていた。

対するは巨大な曲刀を握る巨躯の魔族の男。

頭部には太い二本の角があり、黒髪はオールバックにされている。

あれが話に聞く六将軍の一人デナスだろう。

赤紫色の大曲刀は、魔剣らしく禍々しく鼓動をしていた。

ちなみに前回倒したダームの所持していた斧だが、あれは戦闘後に光の粒子となって消えている。

恐らくあの曲刀も倒した後は消えるのだろう。

デナスの視線が、セインの後方にいる俺達へと向いた。

「この強者の気配、並々ならぬ実力に血肉沸き立つ。もういいお前達には興味が失せた。自分はあの男と刃を交えさせてもらう」

「おい! 戦っているのは僕だぞ!」

「雑魚に用はない。どうせやるならきちんと殺せる相手だ」

「何を言って――!?」

セインが振り返り、俺と目を合わせた。

「トール、なぜここに!?」

「久しぶりだなセイン」

押さえていた怒りが烈火のごとく噴き出す。

脳裏をよぎるのは、ネイとソアラの顔。

だが、感情に任せていきなり斬りかかることはしない。

ここまでに俺はずっと考え続けていた。

何が真実で何が嘘だったのか。

それを知る為にも俺は、元親友と言葉を交わす必要がある。

デナスがセインの横を通り抜け、俺の前へとやってきた。

身長は二メートルほど。

ダーム以上に威圧感があった。

「名は?」

「トールだ」

「自分はデナス」

「知っている」

次の瞬間、刃と刃が合わさった。

カエデには邪魔が入らないように周囲を警戒してもらっている。

いかなる相手だろうと、この時この場所には入らせはしない。

デナス、お前もだ。

剣を合わせる度に火花が散り、衝撃波が地面をなめる。

ダーム同様レベルは百を越えているらしい。

もしかすると二百近くあるのではないだろうか。

「勇者でもない者が単身でここまでやるとは。面白い」

「本気でやったらどうだ」

大きく振り抜きデナスを下がらせる。

まどろっこしいのは嫌いだ。

さっさと本気で来い。

「その台詞、吐いたこと後悔させてやろう」

ニヤリとしたデナスが大曲刀の力を引き出す。

剣から根っこのようなものが腕に潜り込み、肩から腕に掛けて甲殻や棘が出現する。

さらに胸の辺りまで根は伸び、右の胸に大きな口が出現した。

気配がぐんと大きくなり、空気がよどんだ気がした。

「これで自分のレベルは240となった。もう少し戦いを楽しみたかったのだがな」

「いや、それくらいでちょうどいい」

「……なんだと?」

竜騎士とグランドシーフを同時発動。

さらに肉体強化スキルを発動。

そして、聖剣の力を解放。

Lv301から四割増加してLv421に。

「――信じられん、これほどのヒューマンがいたとは。ぐぼっ」

ちんっ。大剣を背中の鞘に収める。

どさり、と後方でデナスが倒れた。

だが、すでに俺は奴を見ていない。

見ているのは、腰が抜けて座り込むセインである。

さぁ、話を聞かせてもらおうか。