軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44話 戦士、エルフの里へ行く4

「ここでもかよ」

そう言いたくなるのは当然だ。

扉を開けた先には魔法陣があったのだから。

しかも今も生きているらしく以前見た物と同様に光っている。

またどこかに飛ばされるのだろう。

前回はノーザスタルの森の遺跡だったが、今回は土の中かもしれない。もしかしたら水の中かも。

安全が一切約束されていないのが神代の魔法陣だ。

だが、好奇心が強く刺激されているのも事実。

遺跡から遺跡へ飛ぶのは確定と考えて良いだろう。

問題はそれがどこの遺跡なのかだ。

踏むべきか踏まないべきか、本音は踏みたいんだよなぁ。

もし危ないところだったら……?

うーむ、止めておくべきか。

リスクを考えると我慢するのが賢いよな。

「ご主人様のしたいようにしてください。私はどこまでも付いて行きます」

「そうそう、フラウ達の心配なんてしなくていいのよ。その為に鍛えたんだから。それにこの向こうにお宝ありそうじゃない。むふふ」

「きゅ!」

二人の言葉が勇気づけてくれる。

そうだったな、びびってちゃ冒険者なんて務まらない。

漫遊旅団は旅を楽しむパーティーだ。

リスクなんか力でどうにかしてやるよ。

「近いうちに転移するぞ!」

「はいっ!」「おー!」「きゅう!」

方針が決まったところで部屋の中を再確認する。

どうやらこれ以上部屋はないようだ。

と言うわけで俺達は揃って地上へ向かった。

がたっ、どすん。

目の前でエルフの長が椅子から転げ落ちた。

「っつ!!」

彼は後頭部を押さえゴロゴロ転がる。

打ち所が悪かったのだろう、気の毒に思えた。

それとなくカエデに視線を向ける。

彼女は黙ったまま頷き、長に癒やしの波動を使った。

「とんでもないことをしてくれたもんだ。誰も開けたことのない塔を開いてしまうなんて。しかもあったのが水と大量のスクロールだ。はぁぁ」

後頭部をさすりながら長は空笑いする。

それから大きなため息を吐いた。

三割、が効いているのだろう。

水はともかくスクロールは貴重だ。

一度きりしか使えないことを考えればやはり三割は痛い。

彼の頭の中では『どうやって諦めさせようか』と方法を思案しているはずだ。

「兄上、彼の報酬は正当なものです。小細工などせず、きちんと言ったことは守るべきだと進言いたします」

「……なんでこうバカ正直に育ったかなぁ」

「兄上!」

「約束は守るさ」

諦めたのか長は、もうやめろとばかりに手をひらひらさせる。

それから姿勢を正し俺に手を差し出した。

「改めて感謝を述べる。トール殿の成したことは里の歴史的変革となるだろう。豊富な水は人を豊かにし、スクロールは防衛を強化させる。礼にはならないかもしれないが、ぜひこの里でのんびりとしていってくれ」

「こちらこそ感謝する」

長と堅い握手を交わす。

これでもう石を投げられることもないはずだ。

エルフの作る料理や酒、今から非常に楽しみだ。

話が一区切りしたところで、カエデが一枚のスクロールをテーブルに置いた。

「実は保管されていたスクロールの中で、特殊なスクロールを見つけました。中身は身体強化スキルなのですが……」

「普通のと何が違うんだ」

説明をするカエデはやけに歯切れが悪い。

一般的なスクロールは薄い黄色だが、目の前にある物は綺麗な白だった。

色からして違うことは分かるが、どこが違うのかをはっきり教えてもらいたい。

「これはスキルを習得させるスクロールです」

一瞬、何を伝えられたのか分からなかった。

スキルを習得できるスクロールだって?

そんなものこの世にあるのか??

「鑑定では『一度だけ対象者にスキルを与えることができる』とありました。残念ながらレアスキルのスクロールはありませんでしたが、それでも価値は計り知れないと思います」

「つまりスクロール自体にも種類があると?」

「そうなります」

歴史的発見に場は静まりかえった。

そして、そのまま報告会は終了となる。

「はいよ、これがエルフ名物モッコイ芋の香草包みだよ」

置かれた器には、葉っぱで包んだ丸い物が山積みとなっていた。

どうやって食べるのだろう。

葉っぱごとだろうか。

そこで対面にいるアリューシャが芋を手に取ってそのまま囓る。

やはり葉っぱは剥がす必要はないようだ。

「あむっ、ほくほくしておいひいわね」

「ほんのり甘くてそれでいて塩気があって、ねっとりしています」

「ほんとだ、これは美味いな」

大部屋で行われる大宴会では、大勢の男女が飲み食いしていた。

建前では俺達の歓迎会だが、実際のところは塔で見つかったお宝を喜ぶお祭りである。

だが、お宝のおかげで俺達にいちゃもんをつけてくる奴らはいない。

中には好意的に声をかけてくる者もいて、そこそこ里の者とは親しくできていた。

「きゅ! きゅう!」

「お前も欲しいのか」

周りをしきりにパン太が飛ぶ。

ロー助と違ってこいつは食事をするのだ。

しかも好奇心旺盛に何でも食べる。

差し出した芋を、目の下に出現した穴がぱくりと飲み込む。

パン太は半眼でもぐもぐしてから、ぱっちり目を開いて嬉しそうにくるくる回る。

気に入ったようだ。

「ぶはぁ!」

エルフ自家製の酒を飲むと気分が良い。

度数は高めだがそれがいい。

仕事をした後の酒はやっぱり最高だ。

「ふっ、外の世界はさぞ楽しいのだろうな」

「なんだ、森から出たことないのか」

「わたしは里を守る役目をになっている。なによりエルフは森で生まれ森で死んで行く運命。そもそも出る必要がない」

「へー」

森の守り人と呼ばれるくらいだ。

自然と共に生きて行くことを選んだ種族。

それでも外の世界は気になっているんだな。

「でも伝説ではよくエルフが登場するよな。あれはなんでなんだ」

「魔王はエルフの精霊魔法を警戒しているのだ。故に幾度となく各地の里が狙われてきた歴史がある。ヒューマンと手を組むのは癪だが、エルフの未来を思えば仕方のないことなのだろう」

「ああ、あれは反則だよな。詠唱とか不要だし」

「精霊を叩き飛ばした奴に言われたくない」

ちなみに俺がぶっ飛ばした精霊だが、ちゃんと帰ってきたらしい。

ただ、あれから一度も俺の前には出てこないが。

「外の世界が気になるなら俺達の仲間になるか?」

「誘ってくれるのは嬉しいが遠慮させてもらう。わたしはこの里が大好きなんだ。離れるつもりはない」

アリューシャはぐびっと酒を飲む。

少し残念だった。エルフの仲間は頼りにできそうだったのだが。

でも無理強いは良くないよな。

「その代わり、この里にいる限り世話はしてやる。狩りに行きたいならいくらでも付き合ってやろう」

「じゃあこの近くで面白いものが見られる場所ってないか。塔はもう見たから、今度は別のものを見てみたいんだ」

「珍しいもの……心当たりがあるな」

彼女が言うには、里の近くで観光に向いた場所があるそうなのだ。

しかもそこはヒューマンの知らないエルフだけの穴場。

俄然興味が湧いた。

「そこは危険な場所でもある。わたしが無理だと判断すれば、大人しくしたがってもらうぞ。いいな」

「俺達の強さは知ってるだろ。心配性だな」

「それがわたしだ」

アリューシャは微笑みを浮かべ、肩に掛かっていた三つ編みを片手で後ろへと払う。

今だけ見れば実にカッコイイ女性だ。

脳裏に精霊を失って震えていたエルフがよぎる。

いや、忘れよう。

それが彼女の尊厳を守ることになる。

「トール殿、頭の中でわたしを馬鹿にしてないか?」

「マサカ、アハハハ」

アリューシャはうっすらと目に涙を溜めた。