軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24話 勇者の計算外その3

アイナークを出た僕らはとある噂を耳にする。

『王都の近くにダンジョンが出現した』

どうやらそこは未踏破らしく、高難易度な為にまともな探索すら進んでいないという。

しかも落ちているアイテムもレアものが多いらしい。

僕らはすぐに挑戦することにした。

「ずいぶんと深い森の中にあるんだね」

「入り口の周囲だけやけに綺麗なのが気になるわ」

「どうでもいいだろ! 早く中に入ろうぜ!」

「ネイ、冷静にね。高難易度ということは敵もレベルが高いのですから」

深い森の中にぽっかりと空いた空間。

その中心にダンジョンへの入り口があった。

視界に入るのは野営をする冒険者達だ。

鑑定スキルで見てみるがどいつもこいつも雑魚レベル。

思わず吹き出しそうになった。

必死に挑戦しているところ悪いが、ここは僕らが踏破させてもらうよ。

ルンタッタでは挑戦することもできなかったんだ。ここで鬱憤を晴らさせてもらう。それに僕が高難易度ダンジョンを踏破してみせれば、さぞ世間は驚くに違いない。

その上で聖剣を手に入れ僕の名を万民に知らしめてやろう。

あとは魔王との戦いに向けてレアアイテムを手に入れておかないとな。

今はまだその時じゃないが、いずれ僕は本格的な魔王討伐の旅に出ることとなる。

その際に不備がないよう今から準備はしておかないと。

「行くぞ!」

「「「了解」」」

「ひぃいいいい! なんだあれは!?」

「待って置いてかないでセイン!」

「リサ、早く走れって! 捕まったら死ぬぞ!」

「でもソアラを背負ってるし!」

青い肉体のオークが荒々しい息を吐いて追いかけてきていた。

その数、十。

通常のオークなら僕らの敵じゃない。

二十匹いようが三十匹いようが一瞬で蹴散らす自信がある。

だが、あのオークは危険だ。

なんとレベルは50。

通常のオークがレベル5~20なので桁違いだ。

鑑定スキルで調べたから間違いない。

しかも未だ二階層、最序盤でこの調子なら中層から下層は地獄だ。

ここはヤバい。高難易度なんてレベルじゃない。

最高難易度のダンジョンだ。

「おい、セイン! リサ達を置いてくなよ!」

「黙れ! 足の遅いお前らが悪いんだろうが!」

先頭を走るのは僕。そのすぐ後方をネイが追いかけており、さらにその後ろで気絶したソアラを背負ったリサが逃げている。

くそっ、計算外もいいところだ。

あっさり踏破してレアアイテムを手に入れる予定だったのに。

せめてあの豚共を倒して経験値を手に入れたいが、あのオーク異様なまでに知恵が回る。

一気に片を付けようとすると、警戒して距離を取るんだ。

おまけに敏捷性も高く魔法まで使う。

土魔法の岩を頭部に受けたソアラは気絶して使い物にならなくなった。

「スリープアロー!」

リサが後方に向けて睡眠魔法を使う。

だが、魔法はオークに当たっても弾けて消えた。

「うそ! 耐性まで高いの!?」

「そんなものより壁を作れ! 障害物を作って足止めするんだよ!」

「分かったわセイン」

リサが土の壁を通路に出現させる。

ばがんっ!

オークは体当たりで壁を粉砕、少しだけ距離は開いたが未だに猛然と追っていた。

「マジで役に立たないなお前!」

「ごめんなさい」

よし、もうすぐ階段だ。

一階層に行けば奴らも諦めるだろう。

見えた!

真っ先に階段を駆け上がり、続いて三人も駆け上がる。

「ブギィイイイイッ!!」

オーク共は階段の前で立ち止まり、怒りの鳴き声を上げていた。

獣ごときが僕を倒せると思うなよ。

今回は諦めてやるが、聖剣を手に入れたらすぐにぶっ殺してやる。

「もっと上手く魔法を使えよ! 足手まといが!」

「ごめんなさい。許して」

頬を押さえて倒れ込むリサ。

僕は怒りのあまり剣に手を伸ばそうとした。

「ソアラが、ソアラが気絶さえしなかったらこんなことには」

「申し訳ございません。私の失態ですね」

「なぁ、もういいだろ。仲間割れしたって意味ないじゃん」

「……そうだな」

ネイの言葉に頭が少し冷えた。

ここには人の目がある。殺してしまっては外聞が非常に悪くなってしまう。

僕も少しは冷静にならなくてはな、勇者とはスマートな人物でなければいけない。

しかし、このパーティーはまとまりがなくなってきたな。

トールがいた時は、どんなに理不尽な状況でも笑っていた気がする。

そんなことを考えてハッとする。

僕は今、何を考えた!?

まさかこの僕があの男を頼りにしていたと!?

冗談じゃない。勇者とただのお荷物では格が違うんだ。

くそっ、イライラが止まらない。

「いやー、今回も良い物手に入れたな!」

「やっぱここはいいよ。経験値も美味いしアイテムも貴重だし、ほんといいダンジョンが近場にできて最高だな」

「コツさえ分かれば二階層までは余裕っすね」

ダンジョンから出てきた三人組は、リュックを膨らませていた。

レベルは揃って三十台。どうやってあのオークを退けたのか不思議だった。

「セイン、あの人達にコツを教えてもらいましょ」

「あ? 僕に頭を下げろって言うのか」

「でもこのままだと何も得られないままよ」

「…………」

不愉快極まりない。

勇者である僕が格下に教えを請うなんて。

「わりぃ、ちょっとお花を摘みに行ってくるわ」

「なんだそれ」

「しらねぇのか。女はそう言って用を足しに行くんだぜ」

「おめぇの場合、花ってがらじゃねぇだろ。ちょうどいいや、俺も行きたいところだったんだよ」

三人組は茂みの方へと歩いて行く。

なんだ、そんなことする必要ないじゃないか。

あいつらの持っている物を奪えばいい。

僕は世界を救うんだ。多少の犠牲は必要経費みたいなものだろ。

「少し待ってろ」

「分かった。その間、アタシらは休むから」

三人を残し茂みへと入る。

「ひぁああああああああっ!!」

「まてこら! 逃げんな!」

僕は茂みから飛び出し全力疾走する。

男共は下半身丸出しで、茶色い物を投げつけた。

べちゃ。背中に塊が当たる。

臭い臭い臭い臭い!

最悪だ! 普通、連れ添って行くのは小便だろう!

襲いに行ったら、三人揃ってお尻丸出しで用を足していた。

「セイン!?」

「うわっ、ウンコまみれだ」

「ひぃ」

三人が露骨に嫌な顔をする。

雌豚のくせになんなんだその態度は。

「逃げるぞ!」

足を止めずリュックを掴む。

三人も僕を追いかけて走り出した。

「逃すかこの野郎!」

「クソみたいな奴にはクソをぶつけてやる!」

「ニンニクを食った俺達の一撃を食らいやがれ」

まだ追いかけてきている。

しつこい奴らだ。

なんて屈辱的。勇者であるこの僕がウンコまみれだなんて。

今すぐ奴らを殺したいが、足を止めれば集中砲火にあうだろう。

それだけはダメだ。耐えがたい。

悔しいがここは逃げに徹するが正解だ。

次第に奴らとの距離が開き姿は見えなくなった。

適当な場所で身を潜め呼吸を整える。

「セイン、すて、すてきなにおいね」

「ごめん。今は近づくの無理」

「向こうに川がありますので……水浴びなどどうでしょうか」

僕からやけに距離を取る女共。

くそっ、しくじった代償がこれか。

もう蝿が寄ってきている!

失せろ! 邪魔だ!

怒りに拳を震わせつつ大人しく川へと向かった。