軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦士と南方大陸2

大鎌から血を滴らせる『 第六聖雄騎士団(ゼックスナイツ) 』のスパイク・スターズ。

斬られた団員は傷は浅くすんだのか腕を押さえていた。

「雑魚のくせにやるねぇ。あそこから逃げるなんてさ」

「貴様っ!」

「仲間を傷つけた。ぶち殺す」

キアリスとベナレが武器を抜くが、俺は手で動くなと静止させる。

スパイクの背後には部下だろう騎士が付き従っていた。

しかも全員が腰にある剣ではなく杖を握っている。剣と魔法の両方を使用する万能騎士のようだ。

加えて出入り口は一つ。下手に動けば攻撃魔法の雨が降り注ぐ。

「用件は何だ。遺物か?」

「それしかないだろぉ。あー、あんた漫遊なんたらだっけ? 最近めちゃくそ調子こいてるらしいじゃないか。ここらで一つ失敗経験積んどけ」

それが合図だったのだろう。一斉に魔法が放たれた。

もちろん当たってやるつもりはない。

刻印からクラたんを呼び出し全員を守る壁を作る。

「ちっ、止めろ。やっぱひとすじなわではいかねぇか。褒めてやるよ漫遊」

「どうして俺達を狙う。遺跡なら他にいくらでもあるだろう」

「おいおい生ぬるいこと言ってんじゃねぇよ。ここは南方の新大陸だぜ。ルールなんてものはねぇ。裁く者もいねぇ。あるのは勝者と敗者だけだ。そして、ここでの勝者は遺物をどれだけ集められたかだ」

だから横取りしてもいいって考えか。確かに遺物を集めるだけならその方が効率は良い。魔物による被害を最小限に抑えらる上に成果もでかい。けど、それは冒険者の考えかたではない。

「スパイクと言ったか。お前にはロマンがない」

「・・・・・・ろまん?」

「冒険者は冒険があるからこそ冒険者なんだ。心ときめく景色を見たことはあるか? わくわくするような出会いはあったか? リスクしかない戦いをしたことはあるか?」

「説教かよおっさん。うざすぎるから死んでくれよ」

大鎌が俺の首めがけて一閃される。

はっきり言っておきたい。俺はな――。

「まだ三十代だ!」

拳で大鎌を砕く。余波でスパイクも吹き飛ばされた。

彼は遺跡の壁面を突き破って外へと投げ出される。

あ・・・・・・やり過ぎた。死んでないよな?

「ひぃいいいいっ、あのスパイク様を一撃で!?」

「噂通りの化け物だっ! 退避、退避!!」

騎士達は我先にと逃げ出す。どのような噂が流れているのかは不明だが、古の魔王の一人にされている以上碌な噂でないことだけは確かだ。

「クリスナダムの勇者を一撃とは。相変わらず力だけは本物だな」

「団長がいれば団は安泰。うんうん」

二人ともぼーっとするな。遺物を集めて撤収だ。

堅牢な石の要塞が我らの南方拠点だ。

物理的に堅いだけでなく、魔法使いによって対攻撃魔法用防御結界と魔物避けの結界が張られている。

要塞の足下には住居や畑があって家畜などもいたりする。

住居に住むのは余所から避難してきた者達だ。一攫千金を目当てにやってきたはいいものチームが壊滅し行き場を失った者達である。

ほぼ全ての船は異大陸側へ帰還している為に帰る手段はない。たとえあってもそれはいかなる条件であろうと部外者の乗船を拒否している船である。強いて言うならクリスナダムの船だ。

とまぁ次の船が来るまでの間、ここで保護しているのである。

ただ、すっかり暮らしになじんだ者もいて、なし崩し的に仮の団員になった者も何人かいたりする。そういう者達には最低限身を守れるようレベル上げを手伝ったりしてやったりしている。

「おい、ネイ様が来られたぞ」

「見えてるよ」

砦の最上階から見下ろしていると、ネイを先頭にぞろぞろと本隊が門をくぐって入場していた。いよいよ南方大陸の調査が本当の意味で始まる。

「トール! 会いたかったぞ!」

「久しぶり。元気にしてたみたいだな」

ネイとハグをする。

それからマリアンヌにアリューシャ、そしてカエデだ。

「一日千秋の想いでこの日を待っておりました。お会いしたかったです」

「心配かけた」

カエデを抱き寄せて久しぶりの温かさを感じる。

ふと目線を下げるとクララ、ノックス、カイトと目が合った。

「少し見ないうちに大きくなったな。ほら」

「お父様っ」

三人はわっと俺の腰の辺りへ抱きついた。

子供達を連れてきて貰ったのは他でもない、早い内から南方大陸に慣らせる為だ。この先子供達がどのような選択をするのかはまだ分からないが、せめて冒険者として大成できるだけの道筋だけは作っておきたい。

「そうそう、ご要望通り例の三匹も連れてきましたわ」

「ありがとう――って増えてる?」

外には大きくなった三頭のベヒーモスがいた。

その足下には三頭の幼体ベヒーモスがいて元気に走り回っている。

実はしばらくエルフの里で預かって貰っていたのだが、大型化しすぎて扱いに困っていると苦情が寄せられていた。そこで俺はこの機に三頭をこちらへ移すことにしたのだ。元々ベヒーモスの生息地は外海の向こうと考えられていた。南方大陸が本来の居場所である可能性は非常に高い。

でも・・・・・・うん、本当に大きくなったな。

ベヒ一郎、次郎も三郎も立ち上がると二十メートルを超える。ああ見えて小食なのだがそれでもエルフの森で暮らすには大きすぎただろう。

「迎えに行ったら兄上にめちゃくちゃキレられたんだぞ。二度とベヒーモスを連れてくるなとまで言われた。兄上は怒ると何年も口をきいてくれないのだ。トール殿もきちんと謝罪をしろ」

「これが終わったら謝りに行くよ」

よほどまくし立てられたのかアリューシャがご立腹だ。

ちなみに他の妻達は赤ん坊の世話があるのでこちらには来ていない。パン太とネーゼばあちゃんもいるし大丈夫だと思うが。

「それでは私達はお食事の準備をいたしますね」

カエデ達は厨房へと向かってしまった。

残ったネイと子供達は椅子に座り、俺も結果を伝えるべく席に着く。

キアリスはネイの背後の壁際に立ちいかにも『私はネイ様の部下だ』と言わんばかりである。さらに目でアピールまでしてきた。

分かった分かった。好きにしろ。

「見ての通り拠点は建設済みだ。それから周辺の地形と重要ポイントを記載した地図も作成している。で、暇になったから三つの遺跡を探索した」

「遺物はあったのか?」

「開拓と遠征で失った分を埋めて余りあるくらいにはな。手に入れた素材も合わせるとそうとうでかい儲けだ。これが予想額だ」

キアリスが作成した収入に関する報告書だ。

遺物の売値はその時の相場によって上下する。今は恐らく最も価値がある時期。

俺も売値を見て目玉が飛び出るかと思うほど驚いた。まさしくここは宝の山だ。遠くないうちにさらに大量の冒険者が押し寄せるのは想像に難くない。そして、俺達の島が航路に組み込まれ流通の要となるだろう。

実を言えば島の開拓も南方大陸の調査も俺の案ではない。

助言を受けて思案し決断した結果だ。

「的中したようですね」

「ひぃ、ソアラ!? なぜここに!?」

「ふふふ、お久しぶりです」

入室したのは法衣を纏ったソアラであった。

遅れて入室するのは王室らしい立派な服を身につけた男の子と女の子だ。

ソアラは足音を鳴らしながら俺の横に来ると、微笑みながら我が子を見下ろす。

「お父様にご挨拶なさい」

「お久しぶりです。お父上」

「おししゃしぶりでしゅ」

息子と娘は恭しく片膝を突いて頭を垂れる。

息子の名はレオス。娘はミシリア。

レオスはノックスとカイトとほぼ同じ時期に生まれた。妹のミシリアは最近まで赤ん坊だった気がするが、もうしゃべれるようになったのか。

「そんなことしなくていい。さ、立ち上がって抱かせてくれ」

「王室として重要な教育です。貴方も王配としてもう少し態度というものをですね――」

「ミシリア大きくなったなぁ! ほら、肩車だぞ!」

我が子との触れあいに堅苦しい決まりなんて必要ない。

肩車にミシリアはきゃっきゃとはしゃぐ。

「レオスもおいで。父上だぞ」

「・・・・・・遠慮させていただきます」

レオスは丁寧に拒否をして退室してしまった。

嫌われているのだろうか。少し前まであんなに父上大好きと言ってくれていたのに。

「邪魔になっては申し訳ないので私達は外で遊んできますね」

「あ、うん」

クララが弟たちを連れて外に出る。

気を遣わせてしまったかな。

「で、何しに来たんだ」

「投資しただけの価値があったか確認しに来るのは当たり前ですよね? ん?」

子供達に父親を会わせる為に来たわけではないと。

まぁソアラの先見と資金援助があったからこそここまでやってこられたわけだが。

ネイが報告書をソアラに差し出す。

「この調子なら早くに元はとれそうですね」

「あんたの金の匂いを嗅ぎつける嗅覚には毎度驚かされる」

「信仰心の賜物と言ってください。神は私に儲けよとお命じになられているのです」

「こんなのが幼なじみなんて、はぁぁ」

言うなネイ。

今に始まったことじゃないだろ。