軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦士と子供達の小さな冒険1

季節は巡りオーディン島に何度目かの春がやってきた。

最初に生まれたクララは子供らしく庭を元気に駆け回っている。

長女の後を追いかけるのは弟のノックスとカイトだ。

ノックスはマリアンヌの子供である。カイトはアリューシャの息子だ。

クララはとても物わかりの良い子で長女としての自覚が芽生えるのもとても早かった。頭も非常に良く教えたことは漏らさず記憶した。おまけに母親譲りの優れた魔法の才を有していることから俺を含めた周囲は将来を期待していた。

そんな彼女を姉に持つ二人の弟はクララに憧れを抱いていた。

姉のやることを常に真似、困ったら真っ先に姉へ相談しに行くほどである。

クララも二人の弟をかわいがり仲の良い三人姉弟ができあがっていた。

この頃、俺や妻達は新たに生まれた子供達への世話に追われていた。

フラウが二人の女の子を。ネイは双子の女の子を。ルーナは男の子と女の子を。ピオーネも女の子を。モニカは二人の男の子を産んだ。一緒には暮らしていないがソアラも男の子と女の子を産んでいる。

我が家は九人の赤ん坊によって騒がしい日々を送っていた。

「――ようやく眠った」

「やっと一息付けるわね。旦那様もご苦労様」

「カイトはすぐ眠ってくれたのに」

俺とフラウとアリューシャは軽い疲労からため息を吐く。

すやすやと眠る子供達。散々大人を振り回しておいて何もなかったかのような幸せそうな表情だ。

上の三人がどれだけ大人しかったのか嫌ってくらい思い知らされる。まぁ遺物のベビーベッドがあったからってのもあるが。さすがに九人全員を一つのベッドに入れるわけにもいかないのでこうして入れなかった子達を寝かしつけている。

他の妻達は近くのテーブルでお茶を淹れて俺達を待っていた。

席に着くと「お疲れ様でした」とカエデがテーカップを差し出す。

「たまにはカイトと遊んでやってくれないか」

母親が板に付いてきたアリューシャが少し不機嫌そうに言う。

すかさずマリアンヌとカエデも「寂しがっていましたよ」と彼女に同調した。

ここのところ仕事と赤ん坊の世話に追われきちんとかまってやれていない気がする。

「そうだな。あの子達と少し話をするよ」

「せっかくですし遠出などされてみては? 慣れない育児にお疲れでしょうから是非この機会に思い出作りもかねて息抜きをしてください」

「名案ですわ。わたくしもカエデさんの意見に賛成です」

珍しくカエデとマリアンヌの押しが強い。圧というべきか。

だが、確かにどこかへ行く案はいいかもしれない。子供が子供である時期は短い。クララ達が甘えてくれる時間はそれほど長くはないのだ。つまらない幼少期を過ごしたなどと言われないように父親として頑張らないと。

「皆は来ないのか?」

「ルーナ達は世話があるからねー。それにトール君と違ってあの子達とはそれなりに関わってるから」

うっ、耳が痛いな。これが日頃の積み重ねって奴か。

さて、どこに行くべきなのだろう。そもそもあの子達は何が好きなのか。

「島の西側にまだ未調査の遺跡があったはずデース。そこでお宝を見つけるってのはどうデースか。あの年頃は冒険に飢えてるデースよ」

「なるほど。父親のかっこいい姿を見せられるかもしれないな」

位置的にも砂浜に近いし飽きたら海水浴もできるじゃないか。悪くない。

ただ、俺一人で面倒を見るのは不安だ。団にいる暇な奴を同行させて護衛にするか。

俺は早速準備にとりかかった。

「お父様、はやくはやくー」

「みてみて。カブトムシ見つけた」

「二人ともあまりはしゃがないの。ね、お父様!」

「ああ」

先を行くのはノックスとカイトだ。

ノックスは俺によく似た容姿をしていて生まれたときからハイヒューマンである。カイトはどちらかと言えば母親似でハイエルフらしく非常に恵まれた美形であった。

二人の性格は一見すると真反対。ノックスは細かいことを気にせずやることなすことが豪快だ。一方のカイトは周囲をよく観察し損にならないよう常に器用に立ち回る。相性の悪そうな二人だがこれが意外に合うらしく互いに強い信頼をもっているようであった。

長女のクララだが、彼らを見守りつつ俺の横から離れようとしない。

母親譲りの白い狐耳と尻尾に美しい白い長髪。やや気の強そうな目元はエイバン家の長女としての自覚がある故だろう。親馬鹿かもしれないが三人とも可愛くてしかたがない。

ちなみに現在、俺達は島の西側を目指して森を歩いている。

同行者はタキギ、キアリス、ベナレの三人である。

「なんでオイラが」

「愚痴を言うな。これも仕事の内だ」

「タキギはいつも暇そう。ちょうどいいのでは?」

「あのな、これでも忙しい身じゃんよ」

護衛役の三人は後方で雑談中である。

暇そうだったから捕まえたタキギはともかく、キアリスとベナレに関してはこれを機にもう少し近づきたいなんて狙いがあった。ベナレなんかは挨拶程度で会話らしい会話もない間柄である。団の長としてこのままなのはまずいだろう。

手に何かが触れる。隣を見るとクララが慌てて手を引っ込めていた。

「俺と・・・・・・手をつなぎたいのか?」

「うん」

顔を伏せたままクララは恐る恐る手を差し出す。

俺はその小さな手を掴んだ。

ほんの一瞬、彼女のほころんだ顔が見えた気がした。

「あー、ノックス坊ちゃん。木に登らないでじゃんよ」

「カイト坊ちゃんもどうかご冷静に」

目を離している間にノックスとカイトがそれぞれ樹に登っていた。

その下ではタキギとキアリスが慌てている。

ベナレは・・・・・・なぜか同じく樹に登っていた。

「クワガタ発見。二人より大物」

「くそっ、負けた」

「ベナレお姉ちゃんすごい」

どうやらどちらが先に大きなクワガタを捕まえるかで競争していたらしい。

淡々としている印象の彼女だが、意外に中身は子供っぽいようだ。二人とも喜んでいるようなのでこの人選は正解だったのかも。

「ねぇノックス。向こうにオークがいるよ」

「よっしゃあ。やるぜ」

あ、おい。

樹の上にいた子供達が枝から枝へ飛び移りながら姿を消す。

タキギとキアリスはその後を慌てて追いかけた。

俺も行かないと。あの子達はまだ魔物と戦えるほど強くない。オークなんかとやり合えば殺されてしまう。だが、クララは問題ないとばかりに微笑んだ。

「大丈夫だよお父様。この島であの二人に勝てる魔物はいないから」

「それはどういう意味・・・・・・」

地面が僅かに揺れる。

向かった先では大人でも苦戦するような大きさのオークが倒れていた。ノックスとカイトはハイタッチを行い喜び合っている。

現実が飲み込めない俺を含めた大人連中は呆然としていた。

武器もなく子供だけでどうやって?

答えはクララが持っていた。

「魔法を改良して武器として使えるようにしたの。物に魔力を浸透させるのはジョブでしかできないけど、魔力自体を武器として扱う分には何の制約もなかったから。固形化のこつさえ会得できれば、ほら」

小さな手のひらに氷のナイフが出現する。

言うのは簡単だが形にするは並外れた努力と才能が必要だ。だいたい魔法を物理的な武器にするなんて発想自体がすでに普通ではない。

「お父様ほどじゃないけど、俺達もそこそこやれるんだぜ。な、カイト」

「ほとんどクララお姉ちゃんのおかげだけど」

ノックスは炎の剣を右手に創り出す。

カイトは風の弓を左手に創り出した。

まだ完璧ではないようで武器の一部が不安定に揺らめいていた。

どうやら彼らは最初から俺を驚かせるつもりだったらしい。

三人は目を輝かせながら『褒めて褒めて』とアピールする。

うん。お父さんめちゃくちゃ驚いたよ・・・・・・子供すげぇ。