軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦士達のニューマイホーム

島を支配する主を片付けつつ開拓は順調に進む。

街では日に日に建物が増え、船で運び込まれる物資も目に見えて増していた。

森が切り開かれるほどに人々は活気づきこれから育てるだろう作物について飽くことなく話し合っている。

「ウチだけじゃなく余所も島取りを始めているんだろ?」

「南方大陸には莫大な富が眠っているって言うし、どこの国も出遅れだけは避けたいんじゃないか。噂では相当手こずってるって聞くけど」

ネイを連れて港へと向かう。

この辺りの海域には人が住めそうな島が点在していて、国や組織が先に待つ莫大な利益を得るべく拠点作りに励んでいるそうだ。ただ、生息する魔物が強すぎて遅々として進んでいないとも聞く。俺達のように順調に進めているところは大金をつぎ込んで高レベル冒険者を大量投入しているそうだ。

港に到着すると目的の船を探す。

最新鋭の金属船から見覚えのある人物が降りてきて俺は手を振った。

「よく来てくれた。船旅はさぞ疲れただろう」

「むしろ久々の外で楽しかったです。それにしても素敵な島ですね。ここが私達の新しい家になるんですね。ほらクララ、お父様ですよ」

現れたカエデは赤ん坊を抱えていた。

俺は赤ん坊を受け取り顔をのぞき込む。

クララは大きな目で俺をじっと見つめきょとんした表情になった。たぶん俺が誰か認識できていないのだろう。一応、興味はあるのか泣くこともなくただ黙って観察を続けている。

横からネイがのぞき込む。

「これがクララちゃんかぁ。可愛いなぁ。なぁ、アタシにも抱かせてくれよ」

「嫌だよ。お前荒っぽいだろ」

「そんなことないって! 団員の赤ん坊も抱いたことあるんだぞ! カ、カエデ、アタシもいいよな!?」

「大丈夫ですよ。ネイさんが繊細で優しいのはよく分かってますから」

「ほらな! 早く抱かせろ!」

俺からクララを受け取ったネイは顔をほころばせる。

意外にも抱きかかえる手つきは慣れた感じでクララも泣き出す雰囲気はなかった。

「こらカエデ、降りるなら降りるって言ってよ! 探したでしょ!」

「ごめんなさい。トール様がいたのでつい先に」

フラウを先頭に続々と集団が下船する。

マリアンヌ、アリューシャ、ルーナ、モニカ、ピオーネ、それからネーゼだ。あとパン太も。

彼女達は陸に足を着けてすぐに大量の荷物を地面に下ろした。

「みんな元気そうで安心した。パン太もご苦労だったな」

「きゅう!」

護衛役のパン太が『褒めて褒めて』と身体をすり寄せる。

しばらくまともにかまってやれていなかっただけに、珍しくパン太が甘えん坊モードになっていた。

「マリアンヌ。今までの家はどうなった?」

「問題なく売り払えましたわ。領主様は非常に残念そうでしたけど」

クルックベルズの領主にはずいぶん世話になった。

島の開拓が落ち着いたら改めて挨拶に行くとしよう。

それはそうとマリアンヌとアリューシャの体調が気掛かりだ。二人ともレベルが高く丈夫だとはいえもしもがある。早く休ませてやるべきだろう。

「聞いていたより広そうじゃないか。自然豊かでエルフのわたしも落ち着けそうだ。軽い運動がてらここはひとつ狩りでも――」

「ねぇねぇトール君。もうルーナ達の家は建ててあるのー?」

「おい、ルーナ! まだ話している途中だぞ!?」

「狩りもいいけどまずは住居の確認が先だよねー。今夜からずっとここで暮らすんだよー? それともアリューシャは家がなくてもオッケーな人なのかなー? んー?」

「うっ」

ルーナに正論を叩きつけられアリューシャは黙り込む。

はしゃぐ気持ちは大いに理解できるが、ルーナの言うとおりまずは家を確認して貰いたい。部屋割りとか必要な家具とか考えなければならないことは山積みだ。

「あっちに馬車を待たせてある。全員付いてきてくれ」

俺は荷物を抱え妻達を誘導する。

バイコーンの引く馬車が山道を走る。

通常バイコーンは気性が激しく騎獣などに向かないが、この島のバイコーンは頭が良く気性もおとなしめだ。現在は島の移動手段として利用されている。

「ずいぶん上がるわね」

「気になってたんだけど、ボクらの家は誰が建ててるの?」

ピオーネの問は全員が知りたい質問であったようだ。

クララの寝顔を観察していた俺へ視線が一気に集まる。

「白狼と白狐だよ。資材の手配から建築まで全てやって貰っている」

「もしかしてこの島に大婆様が?」

「まだ開拓が始まっていない段階からヤツフサのじいさんと一緒にやってきて始めてるよ。永く生きてるだけあって知識も経験も豊富だし、現代では失われてしまった技術とかも持ってるから、これ以上にない依頼先かなって」

話をしているうちに屋敷が見えてきた。

大貴族の屋敷を思わせる金属製の立派な門を越え、馬車は石畳が敷かれた敷地へと入る。

妻達は一斉に窓際に寄って呆然とした。

王宮さながらの立派な庭園。花が咲き乱れ鮮やかだ。色の洪水。自然が創り出す華やかな光景は見る者を虜にする。

「すっご。これを一年もかからずに作ったの?」

「ルーナもこんなに立派な庭園を見たのは初めてだよ・・・・・・」

「天獣が持つ知識と技術ならこのような奇跡も可能なのですわね。驚愕いたしましたわ」

唯一ノーリアクションなのはネーゼばあちゃんだ。

「ふへ、ふへへ、このくらい古代の力を用いれば簡単です」

不気味な笑みを浮かべよく分からない自信を漏らしている。

この人、本当に外だと別人だよな・・・・・・。

立派な噴水がある玄関前で馬車は停車する。

俺達を迎えるのは石造りの風格がある建物だ。希望通り装飾は最小限に留め、派手すぎず大人しすぎない落ち着いた建物になっている。元王族や元貴族の妻を持つ夫として、生まれてくる子供達の父として、これからは多少なりとも外聞も気にしながら生きて行くことになるだろう。

「まるで貴族のお屋敷のようです。中に入っても?」

「どうぞ。使用人はまだいないけど生活する分には不足はないと思う」

ドアを開けて妻達を中へ招き入れる。

広いエントランスに新築らしく床と壁は真新しい。

生活臭などあるはずもなく新築らしい匂いに満ちていた。

「このガラス、実家で使用されているものより質が良いですわ」

「こっち来てー。ものすごい数の本があるよー」

どうやらルーナが例の場所を見つけたらしい。

その部屋は一万冊を超える本が収められたちょっとした書庫である。旅の間に手に入れたものや人から貰ったものなど、大部分はヤツフサとタマモが長い間集めた書籍なのでとんでもなく貴重なものも混じっていたりする。

「各地の料理について書かれた本がありますよ」

「育児について記載された書物もあるようだ。これはありがたい」

「静かだしお昼寝場所に最適ね」

おいフラウ。ここは勉強するところだぞ。

だが、その気持ちはとても理解できる。ここは眠りの魔法がかけられているのかってくらい眠気を誘う。勉強嫌いの俺には苦手な場所だ。

「そろそろ夕食の時間だけど、ボクらで何か作ろうか?」

「頼む。ここ最近、まともな料理を食ってなくてさ」

「なんだよその言い草。アタシが作ってやってただろ」

「焼いただけの肉だろ」

怒るネイに腹を殴られる。

内臓攻撃は止めろ。レベルが高くてもじんわり効く。