軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

196話 戦士と消えた仲間

旅立ちの早朝。

見送るのはタマモとヤツフサだ。

「子供ができたらちゃんと挨拶に来るんだよ」

「大婆様!」

「あたしももう長くないんだ。けほっ、けほっ、おっと持病の咳がでちまったね」

「ほう、そりゃあ大変だ。わしのエリクサーをやろう」

ばあさんは露骨に嫌そうな顔をする。

病気ならエリクサーをもらえばいいと思うが問題があるのだろうか。

ちなみにだが、 島(あっち) に繋がる転移魔法陣にはすでに魔力を注ぎ込んでいる。

これでいつでも気軽に向こうに戻れるわけだ。

旅を続けたいので当分使う予定はないが。

「帰りには会いに戻る。パン太をよろしくな」

「あんたもしっかりカエデを愛でるんだよ」

「おう」

「大婆様!?」

俺達は二人に手を振って旅立つ。

「白パンがいない」

「大福をやるから元気出せって」

パン太ロスで落ち込むフラウを俺とカエデで励ます。

定位置とばかりにパン太に座っていただけに、今のフラウは居場所が定まらずしきりにふわふわしていた。

それにしては大福は受け取るんだな。

浮かない顔のまましっかり菓子を食べている。

白狐の里を出てしばらく経つが、未だ山々の連なる山道を進んでいた。

現在は高い位置を歩いていて、見下ろす雲海が壮観である。

「そろそろ休憩されては」

「だな、景色も良いしお昼にするか」

見晴らしの良い場所を見つけ、タマモのばあさんからもらった包みを開けた。

重箱と言うそうだが、艶のある箱が積み重ねられていて、中には色彩豊かな料理の数々がみっちり収められていた。

「見慣れない料理だが、豪華だな」

「お祝い事にしか食べられない料理ばかりです。ご主人様、大婆様が作るちらし寿司はとても美味しいのですよ」

「寿司ってなんだ? すっぱい臭いがするけど、腐ってはないんだよな?」

カエデが皿にとりわけ、フラウにも渡す。

受け取ったフラウはもぐもぐしながら目が潤みだした。

「白パンがいないの。辛いの。フラウ、どうしたらいいのかしら」

「そんなこと言ったって、いないものはどうしようもないだろ。戻ってもパン太は強化卵の中なんだ」

「でも、落ち着かないのよ」

常に近くにいただけに切っても切り離せない存在になっていたらしい。

パン太がいない間をどう保たせるか。

代わりのようなものがあれば一番いいのだが。

リュックを漁るカエデが、白い塊を取り出した。

「パン太さんのぬいぐるみです。どうですか」

「……もふもふしてる」

ぬいぐるみはパン太とほぼ同程度のサイズだった。

「いつの間にあんなのを作ったんだ」

「一族でぬいぐるみ作りを得意とされている方がいらっしゃいまして、その方に教わって作成してみました。単純な形ですしそれほど時間はかかりませんでしたよ」

フラウはぬいぐるみに乗って身を沈める。

しばらく沈黙していたが、がばっと起きて笑顔となった。

「これいいわね、いいベッドだわ! むしろ白パンより寝心地がよさそう!」

「気に入っていただけると作った甲斐があります」

「白パンなんて戻ってこなくていいのよ。ズッ友だと思ってたのに、あっさりフラウを裏切ったんだから」

「そんなことを言ってはいけませんよ。フラウさんだってパン太さんの悩みには一緒に頭を悩ませていたでしょ。怒るよりもお祝いしてあげないと可哀想です」

「だって、だって~」

まだ納得できないのか、ぬいぐるみの上でみょんみょんと跳ねる。

その間に俺は美味そうな料理を堪能していた。

「あるじさま~」

「どうせしばらく会えないんだ。だったら会えないなりに楽しむ方が面白いと思うけどな。悔しがるくらい満喫してさ、思い出話を聞かせてやるんだ」

「――!!」

フラウは目を見開いて、すぐにニヤァとする。

やっといつもの元気さが戻ったようだ。

「ふふん、最高に楽しい旅にしてやるわ。白パンが泣いて悔しがるような」

「ちらし寿司です。どうぞ」

カエデから皿を受け取り寿司とやらを口に入れる。

最初は酸っぱさが口に広がったが、遅れて甘味がやってきて思ったよりも美味しかった。焼いた卵や茹でた海老なんかもあって風味もかなり良い。

「そういやフラウもレベルが上がったんだよな」

「そうなのよ! カエデと同じ6万台よ!」

イオス戦の後のレベルはこうなっている。

俺 3万。

カエデ 6万3326。

フラウ 6万3121。

あっという間に抜かれてしまった。

経験値貯蓄が壊れるまで足を引っ張らないように頑張らないと。

ま、3万でも十二分強いのだがな。

山を下り人の往来が多い道へと入る。

もう間もなく鉱山で有名なウルスピナ領イエローホークスへと入る。

その先にはラクスホルク国首都があるそうだ。

「なんだあれ」

道の先から四つ足の大きな物体が近づいていた。

体高はおよそ五メートル、長方形の箱の前後に人がくっついたような、不思議なデザインの何かがやってきていた。

箱には山のように石が収められ、ソレの歩みは亀のように遅い。

後方を覗けば同じような物体がいくつもあり、列を成して進んでいた。

「どうやらゴーレムのようですね。鉱石運搬型だそうです」

「錬金術師の作る現代ゴーレムなのか。それにしても奇抜なデザインだ」

「異大陸には変なものが多いのね」

ゴーレムの歴史は古い。

かつての錬金術師達はオリジナルゴーレムに畏怖し真似ようと試行錯誤を繰り返した。

だが、知れば知るほど理解できないものであることを理解し、結果判明したのはどうやっても現代の技術力では再現不可能だということだった。

そこで彼らは方向性を変え、独自のゴーレムを作ることでオリジナルゴーレムを越えることへシフトしていった。

こちらの錬金術師も同様の道を辿ったのかは不明ではあるが、近からず遠からずだと感じてはいる。

「運搬に特化したゴーレムだと思うが……」

「近くで見ると圧倒されますね」

太く長い足が交互に前に出る。

顔もあって、前方の人型の腹部に一つ目がぎょろぎょろ動いていた。

俺達は無事に街の中へと入る。

「主様、あの地面にあるのは何?」

フラウが街に入って早々にレールを見つける。

レールの上には石を積み込んだトロッコが置かれていた。

「トロッコだよ。あれで掘り出した鉱石を運ぶんだ」

「へー、乗ったら楽しそうね」

「ひとまず宿に行きますか? 街を回るのはその後でも」

「ああ、その前に」

導きの針のスクロールを取り出し行方不明の仲間を探す。

ピコン。初めて反応があった。

針がぐるんと回転して、仲間のいる方角へと先を指し示す。

「見ろ、この街に誰かいるみたいだぞ!」

「やりましたね! 早く会いに行きましょう!」

「無事だといいけど」

俺はスクロールをもって無我夢中で走る。

路地裏を通り過ぎようとして、慌てて引き返して入り、針の動きを確認しつつ仲間の元へと足を速める。

「まだなのか!」

「ご主人様、人にぶつからないように気をつけてください」

「フラウが真上から探すわ!」

上空に飛翔したフラウが真下に向けてキョロキョロする。

俺も引き続き針の先を追うが、なぜか一向に距離が縮まった感じがしない。

もしかしてこいつ、逃げてるのか?

「それっぽいのを見つけたわ!」

「案内してくれ」

「オーケーよ」

フラウに付いて行き、仲間を追いかける。

やっぱりどうも逃げているようだ。

俺達と気が付いていないのか、逃げなければならない理由があるのか。

「待て! 止まれ!」

「――!?」

ボロ布を羽織った人物が橋の上で立ち止まる。

シルエットからでは誰かは分からない。

え、おい!?

飛び込もうとしてないか!?

そいつは迷うことなく川へと飛び込む。

俺は手を伸ばして足を掴もうとしたが、手は空を掻いてしまう。

川の中を覗くが濁っていて流れが速くすでに姿はなかった。

「カエデ、鑑定は!?」

「申し訳ありません。まさか飛び込むとは考えもせず、間に合いませんでした」

「なんで逃げるのよ。ばっちりこっちの顔を見てたじゃない」

誰なんだ。

どうして俺達から逃げる。

やっと、やっと見つけたと思ったのに。