軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

122話 邪竜退治に出発する戦士1

翌日、カエデは復活した。

「おかげさまでこの通り、元気になりました」

「病み上がりだ。まだ休んでおけよ」

「そんな、もう動けますから――ひゃう!?」

ベッドから起き上がろうとしたところで、フラウがカエデの頭にチョップを入れた。

「主様がいいって言ってんだから、今日はしっかり休みなさい。また倒れられたら困るんだから。いいわね」

「はい……」

「きゅう!」

「パン太さんも、フラウさんと同じ意見ですか」

カエデは渋々ベッドで横になる。

「そう言えば、昨夜のことは覚えているか」

「えっと、記憶が曖昧で……私、なにかしましたか?」

「いや、聞いてみただけだ」

覚えていないならそれでいい。

とにかく今日はしっかり休ませて様子を見ておくべきだな。

俺と違って彼女は良くも悪くもデリケートだ。

ただの風邪から大きな病気に繋がらないとも限らない。

「ごしゅじんさま~」

うるうると目を潤ませて俺を見ている。

俺はこれから出かけるわけだが、ここに残されるのは寂しいらしい。

「フラウとパン太がいる。俺もすぐに帰ってくるさ」

「本当にすぐに、戻ってきてくださいね」

「できるだけ早くな」

「5分くらいでしょうか」

「それはいくらなんでも早すぎる」

ヤバルから預かった手紙を宮殿に届けないとな。

「ジェシカ、二人を頼んだ」

「いってらっしゃいだ」

女王はヤバルからの手紙に目を通したあと、俺に目を向ける。

「漫遊旅団、聞いたことがないパーティーですね」

「聖地に入る許可をもらいたい」

「ふふ、ふふふ、たかだかヒューマン風情が我らの聖なる土地に?」

渡したヤバルの手紙をびりびりに破り捨ててしまった。

「元宮廷錬金術師ヤバルが、どのような考えで貴方をよこしたのかは存じませんが、下等種族を聖地に入らせるなど、あってはいけないこと。理解に苦しみます」

元宮廷錬金術師だって?

宮廷錬金術師といえば、宮廷魔法使いと並ぶエリートのはず。

あのじいさん、そんな高い地位にいたのか。

「すでに邪竜討伐は勇者ジグが成し遂げる予定です。下賤なヒューマンの出る幕ではありません。この者を外へ」

彼女の一声で、俺は謁見の間から追い出された。

「話もまともにできず追い出された?」

「あんたの書いた手紙も破かれたよ」

「まったく、女王になって高慢な性格がさらに悪化したか。面倒を見ていた頃は、あんなにも素直で可愛い子供だったのだが」

ヤバルは研究室の中を後ろ手で、考え事をしながらうろうろする。

「元宮廷錬金術師、でいいんだよな?」

「うん? そうだな、かつてはそのような職にもついていた。だからこそ王室にもの申すこともできたのだが。それももう通用せぬか」

どうすんだよこれ。

聖地とやらに入れないのでは、精霊王にも会うことができない。

いっそのこと自分達だけで天獣を探すか。

いや……さすがにそれは無謀すぎるな。

ここは未知の渦巻く広大な大陸だ。

「むぅ、お前が貴族ならば聖地にも簡単には入れたのだがな」

「貴族でなくて悪かったな。あ、待てよ、そう言えばアレをもらったな」

俺は懐からネックレスを取り出す。

ヤバルに見せれば「ぬはっ!? そ、それは!」などと大げさなリアクションをした。

「ビルフレル家の証ではないか! なぜそれをお前が!」

「成り行きというか、色々あってもらったんだ」

「借りたのではなく!?」

「たぶん、もらった。問題があるなら返すけどさ」

もらったよな?

返せとか言ってなかったと思うけど。

ヤバルは驚きの表情から、にやりとした笑みに変える。

「トール、お前はこれの価値をよく理解していないようだな。これはビルフレル家当主 代(・) 理(・) の証、お前が言ったことはビルフレル家の総意となるのだぞ」

「はぁぁ!?」

「やはり知らなかったか。でなくてはもっと慎重に言葉を選んでいたはずだ。しかしこれで聖地への立ち入りはクリアされたことになる」

ひぇぇ、なんてものを俺に渡したんだ。

これは絶対に返そう。それがいい。

ヤバルは「念には念を入れるべきか」と呟いた。

「仕方がない。もう使わなくなった名だが、クオンの息子の為だ。今から手紙を書く、お前はそこら辺で少し待っていろ」

彼は椅子に腰を下ろし、ペンを手にとった。

その間、俺は研究室の中をじっくりと眺めることにする。

うげ、目玉が沢山瓶に詰め込まれてる。

こっちはみっしり虫が。

なんだこれ、手の平サイズのゴーレムか?

「マスターツー、無闇に触らぬようお願いいたします」

「悪い。ところでお前には名前はないのか。メイドって呼ぶのもあれだし」

「マスター(笑)には『エルツー』と呼ばれております。マスターツーとお揃いですね」

「エルツー、もしかしてLL-0223ってやつからきているのか」

「イエス。ネーミングセンスは壊滅的なあの方ですが、これに関してはぎりぎり及第点なので採用しております」

及第点って……すげぇ良い名前だと思うのだが。

おっと、こんなことをしている場合じゃない、カエデの元へ早く帰らないと。

まだ書き終わらないのか。

「できたぞ。公爵家三男として、したためた手紙だ。絶大な効力を発揮するとはならんかもしれんが、そのネックレスの所有者がトールであることを示すには使えるはず」

「盗んだわけじゃないぞ」

「念の為と言っただろう。ただでさえこの国はヒューマンに懐疑的だ」

そう言うことなら快く受け取っておくか。

「なんとも不思議な男だ。邪竜退治を簡単に成し遂げてしまうような、そんな気持ちにさせられる」

「必ず倒すとは言ってないんだが、まぁいいか」

精霊王に会うには邪竜が邪魔だ。

結果的に倒すことになるのだろう。

ちょっぴり期待もしてはいるが。

本気を出せる相手だと嬉しいのだが。

「じいさん、ありがとな」

「礼なら母親に言え。恩を返しただけだ」

「そうだな。エルツーもまたな」

「無事をお祈りしております。マスターツー」

うし、精霊王とやらに会いに行くか。